米山和良,安樂和彦,石田拓也,尾上敏幸, 加世堂照男(鹿大水) |
大型水槽(600 m3)において魚の行動を超音波テレメトリーで計測する装置を構築した。本装置の性能テストの結果は,水平面の平均で確度 0.23 m,精度 0.02 m を示した。本装置で集魚灯灯火時・消灯時のマアジの行動を計測したところ,音響標識個体の遊泳速度と滞在場所が光の有無で変化した。ソナー映像に映るマアジ群と,音響標識個体の位置が同時刻で近くに位置したことから音響標識個体はマアジ群とともに遊泳していた可能性が高い。水槽内における魚類の行動観察手法として本装置の有効性が示された。
脇田和美(OPRF),山北剛久(JAMSTEC), 山田勝雅(水研セ西海水研), 八木信行,黒倉 壽(東大院農) |
複数機関の水環境データを活用して海域を類型化し,各海域の水環境特性と海域利用目的に適した水環境条件とを定量的に比較することにより,ノリ養殖海域としての東京湾の海域評価を行った。3 機関の水環境データを統合し,GIS を活用したクラスター分析を行った結果,東京湾は 6 つに類型化・可視化された。各海域の水環境特性をノリ養殖の最適・好適条件と比較した結果,東京湾のノリ漁場の 56% に相当する木更津・富津岬北・走水地区を含む内湾の 388 km2 に分布する海域が,6 つのうち最も良いノリ養殖環境を有すると評価された。
松裏知彦(水研セ水工研),貞安一廣(水研セ開発セ), 松倉隆一(水研セ日水研),高尾芳三(水研セ水工研) |
エチゼンクラゲ分布調査を効率化するため,音響データからクラゲエコーを自動検出する手法,及び傘径を推定する手法を開発した。調査熟練者によるエコー検出過程を解析し,自動検出アルゴリズムを決定した。次に,クラゲエコー検出のための特徴量を検討し,サイズと形状に依存する特徴量が有効なことを確かめた。水中ビデオ映像から体形を解析し,エコーサイズと傘径の関係式を作成した。自動検出による個体数密度分布は熟練者の結果と時空間的に良く一致した。音響推定された傘径と中層トロール標本の傘径の最頻値も良い一致を見た。
荒山和則,須能紀之,山崎幸夫(茨城水試内水支) |
久慈川河口周辺海域のアユ仔稚魚の成育場を解明するため,その分布を調べた。調査は水深 3-18 m 海域で船びき網(袋網目合 2 mm)を用いて行った。アユは主に 11-4 月に河口周辺や砂浜海岸沖の 10-12 m 以浅海域で採集され,砂浜海岸の砕波帯直近沖合から出現し始めた。アユは発育に伴い同海域の浅場から深場に分布を拡げ,早生まれ個体ほど早く分布を拡げる傾向を示した。成育場は海岸線と河口近くの 10 m 以浅に広がっていた。仔魚が成育場に加入する場として砂浜海岸砕波帯直近沖合が重要と考えられた。
南 阮植,菅野愛美,渡邉雅人,池田 実, 木島明博(東北大院農) |
キタムラサキウニの集団構造を明らかにするため,マイクロサテライト DNA マーカーおよび mtDNA シーケンス分析による集団遺伝学的解析を行った。その結果,本種の地域全体における遺伝的分化の程度は極めて低く(Grobal FST; msDNA=0.0018, mtDNA=0.029),明確な地理的分化を示さなかった。また mtDNA の Tajima's D は有意な負の値を示し,本種は数千年から 1 万年程度というごく近い過去にボトルネックによる集団の縮小とその後の急激な拡大を経験していることが示唆された。
碓井星二(東大院農),加納光樹(茨城大水圏セ), 佐野光彦(東大院農) |
2009 年と 2010 年の春から夏(4, 6, 8 月)に,茨城県北浦の 2 地点のヨシ帯とそれに隣接する護岸帯で魚類群集の構造を比較した。その結果,種数と総個体数はほとんどの月でヨシ帯の方が多かった。このことから,護岸化によるヨシ帯の消失は,魚類の種多様性や総個体数の減少をもたらし,群集構造を変化させることが明らかとなった。ただし,優占種を種ごとにみると,モツゴ,クルメサヨリ,ヌマチチブなどの 5 種はヨシ帯で,一方,シラウオは護岸帯で多く出現した。護岸化による影響は魚種により異なることもわかった。
武田忠明(道中央水試,北大水),櫻井 泉(東海大生物), 前川公彦(サロマ湖養殖漁協),埜澤尚範(北大院水) |
サロマ湖等で度々発生するホタテガイの大量へい死は,生息環境の変動ストレスが一因とされるが,十分に解明されていない。そこで貝の活力とエネルギー成分の関係を明らかにするため,貝に各種ストレスを負荷し,活力と閉殻筋 ATP およびアルギニンリン酸量を測定した。その結果,高水温と低塩分飼育では活力低下および ATP 量減少に先行してアルギニンリン酸量の有意な減少が認められた。無酸素および振動流下でも活力低下に伴いアルギニンリン酸量が有意に減少し,アルギニンリン酸量が貝へい死の有用な予測指標であることが分かった。
渥美貴史,青木秀夫,田中真二(三重水研), 古丸 明(三重大院生資) |
低塩分海水養生の効率化を目的に,塩分 25 psu 海水入り水槽(低塩分水槽)への収容日数が真珠のキズ・シミの有無,真珠の巻きに及ぼす影響を調査した。その結果,収容 8 日間の無キズ珠率が最も高く,収容 0 日間(海上養生)よりも 2 倍以上高かった。また,収容 8 日間までの場合,真珠直径に顕著な差は見られなかったが,収容 14 日間では 8 日間までの値よりも有意に小さかった。以上の結果から,真珠の巻きに影響が出ず,しかも無キズ珠率が最も高くなる低塩分海水養生期間は 8 日間であると判断された。
深田陽久(高知大農,JST-CREST), 松浦拓人,高橋紀行,益本俊郎(高知大農) |
本研究では,ユズ果皮を添加したブリ飼料(50 g ユズ果皮ペースト/1,450 g 飼料)よる成長への影響と血合筋の褐変・脂質過酸化抑制効果を確認した。ユズ果皮添加飼料を給餌されたブリ(ユズ区)の成長は,対照区と同等であった。ユズ区における血合筋の褐変と脂質過酸化は,対照区と比べそれぞれ,給餌 3 週と給餌 3 および 4 週で有意に抑えられていた。しかしながら,4 週にわたる給餌後の 5 日間の絶食によってそれらの効果は消失した。
櫻井 泉(東海大生物),中山威尉(釧路振興局), 秦 安史(道中央水試),前川公彦(サロマ湖養殖組合), 山田俊郎(西村組),田中良男(東京久栄), 桑原久実(水研セ水工研) |
北海道サロマ湖アサリ人工増殖場において,稚貝の成長・生残に適した成育場の選定手法を検討した。1, 2 および 4 工区を対象としたケージ試験と平面波浪場解析の結果,肥満度は 1 工区沖側が最も高く,波・流れによる稚貝の移動確率は 1-3 工区では沖側ほど低いことが示された。そこで,1 工区沖側を稚貝の成育適地と想定し,1 工区沖側と 4 工区岸側において稚貝の放流試験を行った結果,前者は後者に比べて放流 12 か月後の稚貝の殻長が 1.7 倍,生残率が 4.4 倍になることが示され,適地選定の妥当性が実証された。
高木香織,藤本 賢,渡邊朝生,帰山秀樹,重信裕弥, 三木志津帆,小埜恒夫,森永健司(水研セ中央水研), 中田 薫,森田貴己(水研セ本部) |
福島第一原子力発電事故後の 2011-2013 年に鹿島房総沖で漁獲された小型浮魚類 63 検体の放射性セシウム濃度を測定した。小型浮魚類の放射性セシウム濃度は 2011 年 7 月に 31 Bq/kg-wet の最大値を検出した後,減少傾向を示し,2012 年以降はごく低い濃度で推移し(0.58-0.63 Bq/kg-wet),漁場付近の海水の放射性セシウム濃度と時間差をもって同調して推移していた。
有路昌彦(近大農),上野陽一郎,山崎 淳(京都海セ) |
京都府の定置網漁業で重要なサワラの中心的市場が,岡山中央卸売市場である。そこで,京都府産サワラが岡山市場でどのように評価されているかを明らかにし,産地努力に反映させることは有益である。季節性や需給バランスという量的要素と品質やブランド等の質的要素によって価格が形成されていることから,この両方を同時に説明できるようにパネルデータを用い,2 つの要素を分離する分析を行った。結果,条件がほぼ同じ近隣県産と質的評価に平均価格にして 12% の差があり,この差は産地努力で改善される余地とみられる。