黒坂浩平,越智洋介(水研セ開発調査セ), 稲田博史,有元貴文,酒井久治(海洋大) |
アカイカ釣り漁業では,針掛かりした個体が触腕破断で脱落し易い。この脱落を防ぐため,アカイカの擬餌針捕捉行動と釣具ラインの上昇速度との関係を加速度ロガーで調べ,針掛かり状態と照合した。その結果,ML 35 cm 未満の小型サイズは,上昇速度が 1.75 m/s より速いと触腕のみで擬餌針を捕捉し,脱落率が高まった。操業試験より,大型サイズには釣具ラインの上昇速度を 2.0 m/s 程度に設定して CPUE を高め,小型サイズでは 1.5 m/s 前後に下げて触腕以外の他腕でも擬餌針を捕捉させ脱落を低減する方法を提案した。
一色竜也(神奈川水技セ) |
1982〜2009 年の神奈川県沿岸のマダイ遊漁釣獲量を推定し,漁獲量との比較を行った。遊漁釣獲量は 1986 年に 127.0 トンに達し,その後は 67.2〜114.9 トンで推移した。一方,漁獲量は 1962 年以前に 71〜93 トンであったが,70 年代以降減少に転じ,1980 年には 29 トンに縮小した。1981 年以降やや増加に転じ 30〜65 トンで推移したが,60 年代以前のレベルに回復することはなかった。本県では 1986 年以降,遊漁釣獲量は漁獲量を上回り,遊漁がマダイ資源利用の主流を占める構造に変化した。
中村武史(水大校),濱野 明(水大校), 安部幸樹(水研セ水工研),安間洋樹(北大), 宮下和士(北大フィールド科セ) |
計量魚探機によりマアジ幼魚の現存量を推定する上で最適な周波数を検討するため,尾叉長 7.5〜12.9 cm のマアジの音響散乱特性を理論と実測から検討した。鰾の計測に基づき推定した理論 TS は実測 TS に近い値を示した。一方,18〜200 kHz における最大 TS と平均 TS を尾叉長の二乗で理論的に規準化した規準化最大 TS は−66.2〜−68.4 dB,規準化平均 TS は−68.7〜−69.9 dB をそれぞれ示した。また,周波数間の TS 差は平均 0 度,標準偏差 15 度の姿勢角範囲内では比較的小さかった。
鳥羽光晴(千葉水総研セ),山川 紘(海洋大), 庄司紀彦,小林 豊(千葉水総研セ) |
東京湾盤洲の干潟から潮下帯に岸沖ラインを設定し,夏季の大潮時と小潮時の 06:00〜18:00 に 90 分間隔でアサリ幼生の鉛直分布を調査した。小型幼生(殻長<143 μm)は大潮時小潮時ともに表・中層に継続して分布したが,中型(144〜175 μm)および大型幼生(>176 μm)は大潮時には中・底層に,小潮時には表・中層に分布した。大潮時に干潟前置斜面の中・底層に分布した中・大型幼生は上げ潮時に干潟域に進入し,干満での分布変化を示した。中・大型幼生の分布と水温・塩分の分布には対応が見られなかった。
隼野寛史,宮腰靖之,真野修一(道さけます内水試), 田村亮一(道栽培水試),工藤秀明,帰山雅秀(北大院水) |
1936〜2007 年の網走湖産シラウオの漁獲量変動を調べた。シラウオは 1930 年代前半から網走湖に生息し,漁獲されるようになった。漁獲量は 1〜94 トンの間で変動した。その変動には 1 年間隔の周期性が認められ,生活史に起因すると考えられた。漁期はじめの資源量は CPUE と稚魚密度により,36,763×103〜487,590×103 個体と推定された。大規模な増水のあった年には降海が促され,不漁になる一方,翌年の親魚量は多くなった。親魚数と次世代資源の加入量には Ricker 型の再生関係が良く当てはまった。
高嶋孝寛,星野 昇(道中央水試), 板谷和彦,前田圭司(稚内水試), 宮下和士(北大フィールド科セ) |
ホッケ道北群の年齢査定方法の確立と,漁獲物の年齢-サイズ関係を明らかにすることを目的として,耳石観察方法の検討と年齢-サイズ関係モデルの推定を行った。耳石横断面の透明帯外縁を指標とすることで,確実な年齢査定が可能になった。年齢査定結果から年齢-体長関係を推定したところ,雌雄別の Logistic モデルが選択された。推定モデルの体長は,雌雄とも 2 歳前後まで加齢にともなって増加したが,それ以降では頭打ちになった。このことから,道北群の年齢推定には耳石による年齢査定が欠かせないと判断された。
清水大輔(水研セ東北水研), 藤浪祐一郎(水研セ東北水研宮古), 青野英明(水研セ東北水研) |
ホシガレイの新たな外部標識として,有眼側に生じる小型の再生鱗を指標とするパンチング標識の有効性を焼印標識との比較により検討した。平均全長 9.8 cm の稚魚にパンチングおよび焼印標識を装着し,治癒痕を観察した結果,3 ヵ月後には小型の再生鱗が発現し,標識後 2 年で視認性の低下はなかった。パンチング標識は装着時における有眼側の穿孔径がばらつかないため視認性が高く,標識に起因する死亡や成長の低下も見られないこと,作業効率が 504 尾/h/人と高いことから,放流効果調査に有効な標識と考えられた。
榎本純吾(Meiji Seika ファルマ(株)), 木村武志(熊本県水産研究センター), 野村昌功(熊本県庁), 樺山 淳(Meiji Seika ファルマ(株)), 舞田正志(海洋大) |
養殖現場における実際の使用方法を考慮し,フェバンテルの反復投薬による安全性および養殖場周辺に生息する生物に対する安全性を調べた。フェバンテルの臨床最高投与量(フェバンテルとして魚体重 1 kg あたり 25 mg)およびその倍量(魚体重 1 kg あたり 50 mg)を反復投与して,トラフグの外部および内部所見,血液学的検査を実施した結果,倍量投与群において,一過性の摂餌性の低下が観察された以外は有意な差は認められなかった。また,OECD のガイドラインに準拠して,珪藻類 Skeletonema costatum,甲殻類 Artemia salina,およびマダイ Pagrus major に対する毒性を調べたところ問題となるような毒性は認められなかった。
石田貴之,久保田光俊(日水中研),豊原治彦(京大院農) |
ミナミダラの強い坐り特性について生化学的に明らかにする目的で,スケトウダラと比較を行った。その結果,ミナミダラは坐り過程においてミオシン重合体の形成がより速やかな事が明らかとなった。ミオシン重合体形成の魚種間差がトランスグルタミナーゼ活性レベルの違いによるものか,或いは基質となるミオシンの感受性の違いによるものか調べた結果,ミナミダラのミオシンは特に強く重合を受けやすいことが示された。以上の事から,ミナミダラの強い坐り特性は,重合反応の基質であるミオシンの生化学的特性に起因することが示唆された。
梁 佳(長大院水環),肖 寧,谷 渉(長大院生産), 吉田朝美(長大院水環),新井博文(長大院生産), 竹下哲史,濱田友貴(長大院水環), 村田昌一(水研セ中央水研), 谷山茂人,橘 勝康(長大院水環) |
ブリ属 3 種の保存中における血合筋の肉色変化を比較検討した。各魚種を即殺後,23℃ と 4℃ で保存したところ,カンパチ,ヒラマサよりブリ血合筋の a*値は大きく減少し,肉眼的変化も早かった。各魚種の L*値と b*値には明瞭な変化の違いを認めなかった。ブリ血合筋ミオグロビンのメト化の進行と過酸化脂質の上昇は他 2 種より顕著であった。ブリのミオグロビン含量は他 2 種と比較して低く,ビタミン C は中位に,ビタミン E は少ない傾向にあった。ブリ血合筋の褐変進行が速いのは,ビタミン E 含量の多寡が影響する可能性が考えられた。
金子貴臣,廣田将仁,牧野光琢(水研セ中央水研) |
今後のマイワシ資源増大を想定し,漁業管理措置が地域経済に与える影響を定量的に評価する方法を開発した。さらに本稿では 1990 年代の釧路市での水揚減少を,管理措置導入による漁獲減と読み変え,実データを用いた評価を行った。その結果,1990 年からの 3 年間で約−110 億円の経済波及効果と 300 人以上の雇用減があったと推計された。なお,評価において最も留意すべき点は,価格の変動と,外来船の水揚である。これらに対応するため,必要となる現地聞き取り調査の内容と,求められるデータの精度についても整理した。
石原幸雄(鳥取水試,鳥大院連農), 中田千栄里(鳥大農),森本 稔(鳥大生機セ), 森 信寛,渡辺文雄(鳥大農,鳥大院連農) |
クロマグロ内臓の有効活用法を検討するためにクロマグロ内臓各部位における呈味性及び機能性遊離アミノ酸含量と無機質含量を分析した。その結果,クロマグロ内臓,特に肝臓は旨味や甘味を有する遊離アミノ酸を多く含み,且つ機能性アミノ酸のタウリンが多量に含有されていた。また,各内臓とも有害な金属元素(Cd と Hg)は 100 g あたりそれぞれ 1.15 mg,0.5 mg 含有されていた。