宮城亜紀,甘糟和男(海洋大), 安部幸樹,今泉智人(水研セ水工研), 宮本佳則,柿原利治(海洋大) |
本研究では,超音波バイオテレメトリー手法においてピンガを対象魚の腹腔内に挿入した場合の送波音圧の変化とそれが受信距離に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。ピンガの代わりに無指向性の送波器をミナミマグロ 3 個体の腹腔内に挿入し,個体毎に送波音圧を様々な方向から測定した。その結果,方向によって送波音圧が変化することを確認した。送波音圧は最大約 34 dB 低下し,受信距離に換算すると約 460 m の減少となった。本研究からピンガを腹腔内に挿入すると受信距離が短くなることが示された。
亘 真吾(水研セ瀬水研), 石谷 誠,尾田成幸(福岡水海技セ) |
瀬戸内海豊前海のシャコについて,2007〜2009 年に小型底曳網で試験操業を実施し,資源評価を行った。2007 年級群を用い,加入以降半年ごとの漁獲係数を推定したところ,加入直後から投棄による死亡がみられた。加入後 1 年間の生残率は 13.4% で,水揚対象サイズに達するまでの減耗が大きかった。加入あたり漁獲量と加入あたり産卵量の解析の結果,漁獲量と産卵量の双方を増大させるには,着底から 2 年間の漁獲圧を削減することが効果的であり,特に投棄による死亡の多い,着底翌年の夏の漁獲圧削減の重要性が示唆された。
山口浩志,西内修一,高柳志朗(道中央水試), 宮下和士(北大フィールド科セ) |
ホッコクアカエビに対するえびかごの網目選択性を,5 種類の脚長目合について比較操業実験を行い,SELECT 解析法を用いて推定した。推定された網目選択性は,抱卵の有無によって異なった。網目拡大について漁業者と合意形成をするために,当業船が通常用いている脚長目合 15.30 mm から目合を拡大した場合の漁獲量および漁獲金額を試算した。漁獲量および漁獲金額の減少率は,脚長目合 16.84 mm では,11.5% および 9.5% であったのに対して,脚長目合 19.13 mm では 31.2% および 27.8% となった。
藤原公一(滋賀水試,海洋大), 臼杵崇広,根本守仁(滋賀水試), 松尾雅也,竹岡昇一郎,田中 満(琵琶湖栽培漁業センター), 北田修一(海洋大) |
耳石に ALC 標識を付けたニゴロブナ種苗の放流・再捕調査により,琵琶湖での本種の効果的な放流技術を検討した。その結果,標準体長が概ね 16 mm を超え稚魚期に達した種苗をヨシ帯に放流すると生残率が向上した。ヨシ植生のない水域への放流,琵琶湖の人為的操作による水位低下に伴う水ヨシ帯の奥行きの減少,冬季の過度な刈り取り管理による春先のヨシの成長遅滞,ヨシ帯への過多な種苗放流により,放流種苗の生残率の低下がみられた。これら問題点を克服した稚魚放流やヨシ帯に依存しない種苗放流が今後の課題と考えられた。
市村政樹(標津サーモン科学館), 柳本 卓(水研セ遠洋水研), 小林敬典(水研セ中央水研), 正岡哲治(水研セ養殖研),帰山雅秀(北大院水) |
根室海峡周辺ではシロザケ Oncorhynchus keta とカラフトマス O. gorbusha の中間的な外部形態を有する「サケマス」と呼ばれる個体が採集される。「サケマス」を DNA 分析により交雑個体であるか検討した。両種の mtDNA と核 DNA の塩基配列から特定種の増幅産物が得られるようにプライマーを設計し,SSP (species specific primers)-PCR 分析により親種を特定した。分析の結果,「サケマス」11 個体中 6 個体が交雑個体であった。交雑個体の複数の外部形態は両種の混合型を示した。
今井彰彦(海洋大),岩崎隆志(水研セ増養殖研上浦), 橋本 博(水研セ増養殖研志布志), 平田喜郎,浜崎活幸(海洋大), 照屋和久(水研セ西海区水研八重山), 浜田和久(水研セ増養殖研古満目), 虫明敬一(水研セ西海区水研) |
カンパチ仔魚の鰾開腔メカニズムを理解するために,流動パラフィンで水面と空気を遮断した水槽を用いて仔魚を飼育し,開腔状況を調査するとともに,仔魚の鰾の個体発生を組織学的に調べた。カンパチ仔魚の開腔率は水面遮断水槽ではきわめて低かった。鰾は消化管背部の一部が膨出して形成された。3 日齢以降の仔魚では消化管と鰾を連絡する気管の存在が確認され,5 日齢以降には気管の閉塞・分離がみられた。カンパチ仔魚は,開口後の 3〜4 日齢にかけて,水面からの空気呑み込みによって鰾に最初のガスを導入し開腔することが示唆された。
藤原公一(滋賀水試,海洋大),北田修一(海洋大) |
琵琶湖沿岸の発達したヨシ帯の岸辺付近は,溶存酸素濃度が著しく低いが,水温が高く,ニゴロブナ仔魚の餌になる微小甲殻類が多い。本種仔魚はこの水域に蝟集する。その要因を 2 種類の忌避/選好試験装置を用いて検討し,本種仔魚は貧酸素を忌避せず,高水温を選好し,遮光環境を著しく忌避し,微小甲殻類に強く誘引されること,およびヨシ帯の外縁の水より微小甲殻類を多く含む奥部の水を選好することが判った。本種の増殖のために育成場の造成や放流場所の選択を行う場合,これらの生態および環境条件を加味することが不可欠である。
山本昌幸,長野泰三,牧野弘靖,植田 豊, 中山博志,安部昌明(香川水試), 一色 正(三重大院生資) |
瀬戸内海香川県沿岸域のヒラメにおける N. hirame の寄生は,1998 年に初めて確認された。寄生率は 1998 年から 2000 年に急増し,2005 年まで高い水準であったが,2006 年に減少し,2010 年まで低い値で推移した。一方,寄生強度には年変動がみられなかった。寄生率と寄生強度は夏・秋より冬・春で高く,季節変動が示された。日本海西部の調査結果と比べたところ,本海域の寄生率・寄生強度の方が低く,その要因として夏の高水温と冬の低水温,および本海域特有のヒラメの分布生態が関与していると推察される。
寺井章人(京大院農), 山本房市(四電技術コンサルタント), 大橋友孝((株)ハイドロワークス),豊原治彦(京大院農) |
養殖の副産物として大量に廃棄されているマガキ貝殻を原料とした凝集沈澱剤を開発した。焼成温度(200℃〜600℃)が凝集沈殿効果に及ぼす効果を検討した結果,400℃ 焼成が最も効果的であった。比表面積及び粒度分布測定の結果,焼成温度が高いほど比表面積及び粒径は小さくなった。これらの結果から,400℃ 焼成の貝殻がもっとも高い凝集沈殿効果を示したのは,400℃ がフロック形成に有効な小さな粒径と,フロック強度に必要な大きな比表面積を貝殻に付与するのに最適な焼成温度であるためと推測された。
西川哲也(兵庫農水技総セ),今井一郎(北大院水) |
2002 年 4 月〜2009 年 3 月までの 7 年間,播磨灘における Eucampia zodiacus の個体群動態と細胞サイズの変化を調査した。本種の栄養細胞は周年観察され,本種個体群は毎年 1 回,秋季に最小となった細胞のサイズを回復した。また,サイズ回復期の平均細胞密度とサイズを回復した個体群がブルームを形成するまでに要した積算日数には,負の相関が見られた。このことから,秋季のサイズ回復時期と細胞密度を把握することによって,本種による養殖ノリ色落ち発生時期の予察が可能であると考えられた。
濱洋一郎,常田尚正,杉本良子,中川浩毅(佐賀大農) |
乾海苔を 80% エタノールで脱色後,既報に従い無水条件下でメルカプトリシスし,多糖から構成単糖をジエチルジチオアセタール誘導体として定量的に遊離させ,TMS 化後 GLC で分析した。ガラクトース,6-O-メチルガラクトース,3,6-アンヒドロガラクトース,キシロース,マンノース,グルコースが検出され,それらの定量値から対応する多糖量を求めた。秋芽網海苔,冷凍網海苔ともに,摘採回数の増加につれ,ポルフィラン,キシラン,マンナンの含量が増加し,ポルフィラン中の構成糖組成も変化していた。
竹内友里,高橋英史(公益財団法人東洋食品研究所) |
レトルト殺菌処理をすることでエビの組織が脆弱化する原因を探索した。試料は非加熱,ボイル,レトルトしたウシエビを用いた。組織強度測定,官能評価,X 線 CT・SEM・ESEM による構造観察,コラーゲンのゼラチン化率測定を行った。レトルト試料の組織は軟化し,弾力が失われた食感を示し,筋肉構造や筋繊維構造は崩れ,コラーゲンのゼラチン化率はボイル試料より高かった。エビはレトルト殺菌によりコラーゲンのゼラチン化が多く起こることで組織は脆弱化する可能性が示唆された。
鈴木仁美(静岡理工大,(株)光コーポレーション), 木本雅哉,吉添祐太,常吉俊宏(静岡理工大), 浅井 昂((株)光コーポレーション), 上田 幹(雅水産(株)), 久保田裕明,久保田隆之((株)あつみ) |
ウナギが日本種であることを DNA 鑑定により確実にかつ商品レベルで安価に証明するために,外国種ウナギ混入 DNA 鑑定法を開発した。ほとんどが日本種と想定される 100 匹の多数検体群中に外国種が混入しているか否かを,ミトコンドリア DNA・シトクロム b 遺伝子を用いて判定した。日本種以外の全外国種に共通する塩基配列をプライマーに用い,外国種・対立遺伝子特異的 PCR を実施した。PCR 産物が生成した場合は制限酵素 Rsa I, Hinf I を用い制限断片長多型(RFLP)法により種名を判定した。
山下秀幸,横田耕介,笹尾 信(水研セ開発セ) |
近海かつお一本釣り漁業では,夏の高水温時のカタクチイワシ活餌の斃死が問題となっている。中層型浮魚礁操業において,カタクチイワシ活餌と高温耐性の強いサバヒー活餌の漁獲を比較した。一般化線形混合モデルによる解析の結果,活餌の違いは漁獲尾数に影響を与えることが示された。サバヒーを使用した場合の漁獲尾数は,カタクチイワシに対して,カツオで 6〜9 割,キハダで 3〜4 割と推定された。キハダでは大幅に漁獲尾数が低減するものの,カツオを主対象としたパヤオ操業では,条件によってはサバヒーが有効となる可能性もある。
安田 拓(東海大院理工),木原 稔(東海大生物理工) |
組織内の粘液研究には,主に組織化学的方法が用いられるが,時間,設備,および技術が必要であるという難点が挙げられる。そこで本研究では,簡便な粘液定量方法の確立を目的に,マハタの腸管組織粘液のヘキソサミンを分析化学的手法で定量し,組織標本を用いた形態定量法による粘液量との相関を確認した。二通りの方法から得られた粘液量には,有意な正の相関が認められたことから,本方法が簡便な粘液定量方法として利用可能であると考えられた。