山中英明(東水大) |
魚介類の“生き”(死後硬直前の状態)の保持については,即殺後,マダイは 10°C,ヒラメは 5°C-10°C に貯蔵すると死後硬直が遅延した。ホタテガイ生鮮貝柱の硬化防止には 5 °C 流通がよく,除菌洗浄は 20 分間,15°C 人工海水が適していた。酸素ガス置換包装によって品質が保持された。ホタテガイ貝柱の加熱褐変は G6P,F6P と Tau,Ala のメイラード反応によって発生した。防止法として活貝より分離後速やかに加熱すること,冷凍品は凍結状態のまま加熱することなどが必要であった。赤色魚類の体色保持については,低温処理により養殖マダイの黒色化を防止でき,KCl 溶液への浸漬を併せて行うとより効果的であった。
横山 寿,坂見知子(養殖研) |
「持続的養殖生産確保法」により定められた酸素消費速度と硫化物態硫黄量(AVS-S)を指標とする養殖漁場の環境基準が五ヶ所湾の魚類養殖場に適用可能か否かを検討した。生簀から順次,間隔をとって採取した沈降物と堆積物の有機態 C と N 量および堆積物の AVS-S は生簀に近づくほど増加し,有機物負荷の傾度をよく表していた。しかし,有機物負荷量に応じた酸素消費速度の最大値を見出せず,本環境基準を五ヶ所湾の漁場に適用できなかった。その要因として,有機汚濁レベルが高いため有機物負荷に応じた酸素消費速度の増加局面を把握できなかった可能性および生物的酸素消費速度が海底直上水の DO に即応して変化した可能性を指摘した。
鷹見達也(道孵化場),吉原拓志(東農大生物産業), 宮腰靖之(道孵化場),桑原 連(東農大生物産業) |
2000 年 9 月に北海道西部にある石狩川水系の一支流において,在来種のアメマスと 1980 年代後半に移入されたとされる欧州原産のブラウントラウトの生息状況を調べた。ブラウントラウトはこの支流の優占種となっており,その推定生息尾数はアメマスの 1.8 倍で,特に支流の中下流域で卓越していた。これに対しアメマスは上流域のみで優占していた。夏から秋の河川水温は,支流の下流部で 5〜16°C であった。この支流の中下流域では,15 年以内でアメマスが移入されたブラウントラウトに置き換わったと考えられた。
堀 英夫,立石晶浩(日本冷食検査協),山田 久(瀬戸内水研) |
クルマエビに対する有機スズ化合物およびペンタクロロフェノールナトリウム塩の急性毒性は脱皮により約 10 倍も強く発現することが解ったが,アシナガモエビモドキでは認められなかった。アシナガモエビモドキは各種の有害物質に対して感受性の高い生物であり,急性毒性試験生物として適していると考えられる。水温および塩分の変動は,アシナガモエビモドキの急性毒性値に対して大きな影響は与えなかった。
堀 英夫,立石晶浩(日本冷食検査協),山田 久(瀬戸内水研) |
閉鎖循環式試験装置を用いてクルマエビの生物濃縮試験を実施した。クルマエビによる塩化トリブチルスズ(TBTCl)の生物濃縮係数(BCF)は,4700〜7500 であり,クルマエビがマダイなどの海産魚類と同様に TBTCl を高濃度に生物濃縮することが明らかになった。一方,クルマエビによる塩化トリフェニルスズ(TPTCl)の BCF は 130〜260 であり,マダイなどの海産魚類に比較して TPTCl の BCF は著しく小さかった。
谷内喜一,田島研一(北大院水),下野 功(道立工技セ),絵面良男(北大院水) |
エゾバフンウニ斑点病原因菌 Flexibacter sp. F-2 株の低温環境における生残性について検討した。その結果,対数増殖期中期の細胞を低栄養,低水温環境に保持することで VBNC へ移行することが判明した。また,VBNC 移行に伴い長桿状から球状に近い状態への形態変化が観察された。さらに,VBNC へ移行した本菌はウニに対する病原性を喪失した。これらのことより,本菌は VBNC へ移行することで冬季の低水温期に生残し,高水温期に蘇生し斑点病を引き起こす潜在的要因となることが示唆された。
安藤大成(道孵化場熊石),宮腰靖之,竹内勝巳,永田光博(道孵化場), 佐藤孝弘,柳井清治(道林試),北田修一(東水大) |
遊漁が禁止されてない都市近郊の河川で,サクラマス幼魚の遊漁釣獲尾数を推定した。調査日と車を抽出単位とした 2 段抽出の標本調査から遊漁者数を推定し,アンケート調査より 1 人あたりの釣獲尾数を調べた。6 月に生息していた 21,874 尾(95% 信頼区間;20,785-22,963)のうち,10 月までに 14,219 尾(4,613-23,825)が釣獲されたと推定された。推定精度は高くなかったが,都市近郊の河川では遊漁がサクラマス幼魚の減耗要因になっている可能性が示唆された。
田子泰彦(富山水試) |
富山湾奥部の浅海域では,アユ仔魚は 10〜12 月に出現のピークを示した。仔魚の出現範囲は海岸線から沖合いほぼ 2.5 km 以内に限られた。仔魚の標準体長(又は脊索長)範囲は 3〜22 mm にあり,他の海域では報告例のまれな 9〜12 mm の仔魚も多く含まれていた。体長 10 mm 以上の個体は河口域に近い,海岸線から 1 km 以内の海域で多く出現した。仔魚の主分布層は水深 1 m 以浅に形成される塩分躍層より浅い表層であった。富山湾奥部河口域では,アユ仔魚は表層の河川系水中に降海・分布し,成長とともに岸寄りに移動し,砕波帯に出現するものと推定された。
木村 稔,今村琢磨,成田正直(網走水試),潮 秀樹,山中英明(東水大) |
1998 年の 3 月から 12 月に水揚げされた紋別産ホタテガイについて,貝柱成分の季節変化を調べた.貝柱重量とグリコーゲン量は,春から夏にかけて増加し,冬に減少した.タンパク質量は 10 月に最大となったが,一個当たりのタンパク質量は 8 月に最大となった.グリコーゲンとタンパク質の無水物量は負の相関関係を示した.ATP および関連化合物量と遊離アミノ酸量はそれぞれ 7 月と 6 月に最も高くなった.グルタミン酸量は産卵後の 5 月に顕著に高い値であったが,グリシン,アラニン,アルギニン,プロリン量は夏季に多い傾向を示した.これら貝柱成分の季節変動から,この地域のホタテガイの旬は夏季と考えられた.
小関聡美,村中知香子,酒井 徹,中島博武(東和化成) |
クロロフィル分子のアロマー化合物を食用の緑色色素として多量に調製するための研究を行った。
塩蔵コンブからクロロフィル分子アロマーである 10―ハイドロキシクロロフィル α/α′を多量に含むエタノール抽出液を得て,光照射し,残存していたクロロフィル α から少量の 10-エトキシラクトンクロロフィル α/α′を生成させたところ,抽出液の緑色が強まった。しかし長時間光照射したところ,色素全体の分解が起こり,退色した。抽出液中のアロマー化合物含量を増やすため,クロロフィル α を追加して,500 lx で 6 時間,光照射した。アロマー化合物の総含量は高速液体クロマトグラフィー分析によると約 85% に達し,その色調は青味がかった緑色を示した。
木村メイコ,関 伸夫(北大院水),木村郁夫(日水中研) |
海産魚類筋肉中のトリメチルアミンオキシド(TMAO)の分解は凍結貯蔵中にも進行することから,その酵素的および非酵素的分解機構を Fe2+ と還元剤(アスコルビン酸と Cys)の存在下に in vitro で調べた。TMAOase はスケトウダラ筋肉から調製した。−4°C 過冷却未凍結溶液中では TMAOase により酵素濃度依存的にジメチルアミン(DMA)を生成したが,非酵素的分解はほとんど起らなかった。−4°C 凍結では酵素分解は停止し,非酵素的に DMA と TMA を生成した。これは−20 および−40°C でも同様であった。DMA は,Fe-Cys 系では−4°C より−20 と−40°C で多量に生成され,微量の TMA も生成された。酵素および非酵素的 DMA の生成にはいずれも Fe2+と還元剤が必要であった。
阿知波英明(愛知水試) |
トラフグへの焼き印による標識の可能性について試験を行った。体背面,体腹面などに焼き印したところ,全長 38, 43 mm では 11 日目までに 3 個体とも死亡したが,全長 66, 70 mm については 355 日以上にわたり生存し,火傷跡に小棘鱗状突起および鱗が再生しなかったため,焼き印が明瞭に識別できた。
このことから,全長 66-70 mm のトラフグへの焼き印標識方法は,長期間にわたり標識として確認が可能で,さらには標識を付ける作業が容易で,経済的でもあることなどから有効であると考えられた。