森川由隆(三重大生物資源),荒川久幸(東水大),小池 隆(三重大生物資源) |
加温水槽(22.1±1.1℃) でイセエビの摂餌行動の日周性を確認し,水温が 23.6℃ から 7.9℃ へ徐々に低下する自然水温水槽で摂餌行動と水温の関係を調べた。餌のムラサキイガイを吊り下げた糸を電子天秤に結び,イセエビの摂餌にともなう糸の張力変化を計測した。15 秒毎の計測値に 0.5 g 以上の差が生ずる回数を数え,摂餌頻度として摂餌行動の指標とした。明暗周期 12L : 12D のもとで,摂餌頻度は明期に低く,暗期に高まる日周性が認められた。摂餌頻度は水温 13.7℃ 以下でゼロの日が現れ,それ以上では 95% 信頼区間において 1 ℃ の水温上昇に対し 10〜12 回の割合で増加した。
田島研一,竹内賢二郎,高畑美紀,長谷川学,渡邊聡子, モハメド・マハブブ・イクバル,絵面良男(北大院水) |
伊達市温水養殖センターにおいて低水温期のウニ病害原因菌 Vibrio sp. の季節的消長を調べた。本菌は通年センター内外の水系に存在し,ウニ個体が選別作業過程で傷ついたり,衰弱することにより本菌の攻撃を受け,選別作業後に発症するものと推察された。発症を防止するには,選別作業前後の一定期間二酸化塩素処理(5×102 ppm, 30 min) を行うか,紫外線殺菌処理(2〜3×103 μW・sec/cm2) 海水による飼育が有効な方法と考えられた。
北川忠生,沖田智昭,伴野雄次,杉山俊介(三重大生物資源), 岡崎登志夫(養殖研),吉岡 基,柏木正章(三重大生物資源) |
オオクチバスはノーザンバスとフロリダバスの 2 亜種からなり,現在日本に広く生息しているのは前者であると考えられている。奈良県の池原貯水池には,1988 年にそれまで生息していたノーザンバスに加えてフロリダバスが移殖された記録がある。池原貯水池を含む全国各地の 14 集団について mtDNA の PCR-RFLP 分析を行った結果,池原貯水池の水系から他の水系には認められない遺伝子型が多数検出された。既知の遺伝子型との比較により,これらがフロリダバスに由来するものであることが明らかになった。
西堀尚良(四国大短),西島敏隆(高知大農),畑 幸彦(高知大) |
穴内川ダム湖で発生する赤潮の原因種 Peridinium bipes f. occultatum はオルトリン酸および β-グリセロリン酸を単一のリン源として利用できた。リンによる制限のない場合の最大比増殖速度は 0.16 d−1,リン要求量は 1 mgP/l であった。リンに関する増殖速度半飽和定数はリン源により異なりオルトリン酸とグリセロリン酸でそれぞれ 126 および 46 μgP/l と算定された。また,本種は増殖に B 群ビタミン類を要求せず,カルシウム濃度 2 mg/l で増殖量が飽和した。これらの増殖パラメーターから本藻の赤潮発生過程を説明することは困難であることから,本藻の物理・生物学的な集積機構の解明が必要と思われた。
中神正康,堯津哲也(北大院水),松田泰平(道函館水試),高橋豊美(北大院水) |
マコガレイ稚魚の主要餌生物の変化とハルパクチクス目の雄成体に偏った捕食を検討した。1996 年 5-7 月,1997 年 5 月の岩部漁港ではハルパクチクス目の Harpacticus sp. が多く捕食され,1997 年 5 月の七重浜沖では Halectinosoma sp. が主に捕食されていた。1996 年 8 月以降体長 30 mm を超えると主要餌生物は,小型底生甲殻類や多毛類に変化した。ハルパクチクス目の雄成体に偏った捕食は,サイズ選択ではなく繁殖期に雄の行動が活発化し,捕食され易くなった結果と考えられた。
李 遺元,向井 徹,飯田浩二(北大院水) |
船舶の接近に伴なう魚群行動の変化をスキャニングソーナーを用いて観察し,魚群の形状や行動の変化を 6 つのパラメータを用いて定量化し,それらのパラメータによる魚群行動の評価法について検討した。その結果,観察した 15 魚群のうち 5 魚群について魚群形状や遊泳方向および遊泳速度に有意な変化が認められた。また,これらの魚群は魚群形状のトレースによる観察においても魚群行動に変化が認められたため,用いたパラメータは魚群行動の分析に有効であると考えられた。
山口宏史(道中央水試),上田祐司,菅野泰次,松石 隆(北大院水) |
体長によるコホート解析(LPA) を北海道東部太平洋海域のけがに漁業に適用した。モデルでは,成長の個体差や加入サイズを確率分布として扱い,非線形最適化手法を用いて各年の甲長別資源尾数と成長や加入に関するパラメータを同時に推定した。1992 年から 1997 年のデータを適用した結果,モデルの推定結果は観測データによく適合し,モデルが資源動態をよく反映していると考えられた。推定された資源尾数と加入尾数の関係から,当海域のケガニ資源は加入量に大きく依存していることが明らかになった。
小林 徹,上野紘一(近大農) |
アマゴの第二極体放出阻止型雌性発生二倍体作出のための高温処理開始適正時期は 12.0℃ 培養で媒精後 30 分であり,その時卵内は第二減数分裂後期の終わりであった。媒精 5 分〜30 分では倍数化の効率にはほとんど差がなかったが,卵の発生に対し,物理的感受性の違いのためか中期よりも後期の方が生存性がよくなり収量は増加した。極体放出阻止は媒精 35 分から 60 分にかけて徐々に不能となった。その主たる原因は染色体間距離の増加ではなく,収縮環によって中央体がくびり切られるいわゆる細胞質分裂にあると考えられた。
胡 夫祥(東水大),大関芳沖(中央水研),東海 正,松田 皎(東水大) |
高速曳網が可能な稚魚採集トロール網用の湾曲 V 型デプレッサーを設計し,模型実験によりデプレッサーの潜行力,抗力特性を調べた。実験には翼面積 397.7 cm2,縦横比 6.0,反り比 15% および上反角 20°の模型を用い,流速および迎角ごとに各流体力を計測した。また,ヒール角度を 30°まで 5°間隔に変化させて,横揺れが生じたときの潜行力特性への影響も調べた,さらに,同じ上反角を持つ平板型デプレッサーについても同様な実験を行い,両者の潜行力特性を比較した。湾曲 V 型デプレッサーは最大潜行力係数が 1.57 (迎角 20°) で,平板型の値に比べて倍ほど大きいことが分かった。しかし,最大潜行力係数を得た後に失速が早いことも確認された。また,湾曲 V 型デプレッサーでは,横揺れが生じたときにヒール角度 20°までは潜行力特性に及ぼす影響が小さく,特にヒール角度による圧力中心位置のずれが少なく,横揺れに対する復元性がよい。
寺山誠人(宮崎水試),山中英明(東水大) |
漁獲直後のカツオを対照区(苦悶死),打撃区(即殺無放血)および脱血区(延髄刺殺)に調製した。36 時間水氷貯蔵後の背肉の pH は,対照区が最も低く,次いで打撃区,脱血区の順であった。メト化率は対照区が最も高く,打撃区と脱血区に差はなく対照区より低かった。肉の赤さとして色差計により a*値を比較したところ,脱血区が最も赤く,対照区と比べ有意に赤かった。船上凍結試験でも対照区より脱血区の方が赤かった。官能試験では,脱血区の方が肉色が明るく鮮やかで,生臭くなく,対照区より高い評価が得られた。
白井展也(東水大),宮川正也((株) 宮川),東海林茂, 荏原 紘((株) 月島食品),和田 俊(東水大) |
天然ナマズ(マナマズ Silurus asotus およびイワトコナマズ S. lithophilus) と養殖ナマズ(マナマズ S. asotus,アメリカナマズ Ictalurus punctatus,タイ産ナマズ C. macrocephalus およびタイ産ナマズ Hybrid C. macrocephalus & C. galipinus) の可食部における脂質成分について分析した。養殖マナマズは天然マナマズより脂質含量が高かった。各ナマズの内臓に脂質蓄積は確認できなかった。脂質は皮下に極めて多く存在し,普通肉では背肉よりも尾部に多く存在した。ナマズには 18 : 1n-9 が多く含まれていた。タイ産ナマズは他のナマズに比べて飽和酸の割合が高かった。養殖ナマズは 18 : 2n-6 の組成比が高く,天然ナマズは 20 : 4n-6 の組成比が少なかった。日本で生育したナマズはアメリカおよびタイで養殖されたナマズに比べて 20 : 5n-3 と 22 : 6n-3 を多く含んでいた。尾部の 18 : 2n-6, 20 : 5n-3 および 22 : 6n-3 含量は他の普通肉部位よりも高かった。これらの結果から日本のナマズは機能性のある有用な食材であることを示す。
今野久仁彦,今村浩二(北大院水) |
スケトウダラ肉糊を 25℃ で加熱すると 150 kDa, 70 kDa の成分が生成した。同時にミオシン重鎖(HC) と HC2 量体の間に 2 本のバンド(上から a, b) が認められた。コイ・ミオシン.サブフラグメント-1(S-1)HC に対する抗体は 150 kDa 成分とバンド a, b と反応した。さらに,70 kDa 成分のアミノ末端部分のアミノ酸配列を決定し,150 kDa と 70 kDa はそれぞれ,HC が Gly-1334 と Val-1335 の間で切断され生成したヘビーメロミオシン(HMM) 様,ライトメロミオシン(LMM) 様の成分と結論した。またバンド a, b はそれぞれ,HC と 150 kDa, 150 kDa 同士の架橋体と推定した。すなわち,同一ミオシン分子に分解と架橋が同時に起こりうることが示された。そして,これら分解成分はすべて肉糊中で変性凝集体として存在していることが ATPase 失活,溶解性の消失から示された。
郡山 剛,木幡知子(日水中央研),渡辺勝子,阿部宏喜(東大院農) |
市販精製マグロ油,大豆油および豚脂を用い,その理化学的特性を測定するとともに,それぞれの脂質をメバチエキスに加えたときの味質の差を官能的に調べた。マグロ油をエキスに添加すると全体的な味の強度は変化しなかったが,顕著に甘味が増加し,酸味と苦味が減少し,後味の増加傾向が認められた。大豆油および豚脂を添加したエキスと異なり,マグロ油添加エキスでは先味が減少し後味の増加が顕著であった。マグロ油をエキスの 30% まで添加した場合,全体的な味の強度は変化しないものの,添加量の増加に比例して,後味,甘味,うま味が増加し,先味,酸味,苦味が減少した。これらの結果から,油脂がメバチエキスの呈味に与える影響は油脂の種類と含量に依存することが示唆された。
加納 哲,渡辺 都,丹羽栄二(三重大生物資源) |
ドチザメのミオシンおよびそのフラグメント,ロッドと S1 の α ヘリックス構造に及ぼす尿素の影響を円二色性を用いて調べた。サメの各標品の α ヘリックス含量は尿素濃度の増大に伴って減少したが,ロッドは最も変化が小さかった。対照のコイ各標品の α ヘリックスに及ぼす尿素の影響はサメの相同タンパク質より大きかった。さらに,サメの各タンパク質の α ヘリックスは尿素を除去した後,完全に復元したが,コイのそれは不完全であった。以上の結果は,ドチザメ・ミオシンの α ヘリックス構造が高い尿素抵抗性を有することを示唆する。
不破 茂,石崎宗周,田中安曇,江幡恵吾(鹿大水), 三浦汀介(北大院水),阿部俊夫(株コーノ) |
イカの加工残滓を利用した人工餌料と天然餌料を使用して底立延縄操業を行い,餌料別に釣獲個体数と浸漬時間ごとの餌料の脱落率を調べ,室内実験でこれら 2 種の餌料を 10℃ の海水に 1〜8 時間浸漬して破断強力を比較した。人工餌料でのユメカサゴとサメ類の釣獲率は天然餌料のそれぞれ約 70%,約 25% であり,この差は有意だった。2 種の餌料の脱落率はどの浸漬時間でもほぼ同じだった。浸漬直後の人工餌料と天然餌料の破断強力は差がなく,浸漬 8 時間での破断強力は天然餌料ではほとんど変化ないが,人工餌料では初期値の約 40% まで低下した。
横井健二,舩津保浩(富山食品研),小平憲一(富大工), 川崎賢一(富山食品研) |
ブリフィレーを含気包装(AG) および窒素ガス置換包装(NG) して 5℃ で貯蔵し,その品質を官能検査(SE),生菌数(VCN),揮発性塩基窒素(VBN),過酸化物価(POV) および揮発性成分(VC) より調べた。その結果,貯蔵初期に VCN と VBN は異臭には関係なく変化したが,AG の POV は SE での異臭に対応して変化した。両者の VC を MS および GLC の tR を標準品と比較して同定したところ,共に脂質の酸化によるアルデヒド類やケトンなどが検出されたが,貯蔵 2 日後のそれらの種類は NG が AG よりもかなり少なく,異臭が抑制されていた。