Fisheries Science 掲載報文要旨

3種のOncorhynchus属魚類におけるStreptococcus iniaeに対する市販ワクチンの有効性および受動免疫効果

森本和月,前田知己,中川徹優,高野倫一,松山知正
 日本で海産魚に承認されたStreptococcus iniaeに対する市販ワクチンのニジマス,ヤマメ,ギンザケにおける有効性と受動免疫効果を調べた。ワクチン接種区ではいずれの魚種でも,S. iniae感染後の生残率が対照区と比較して有意に増加し,relative percentage survivalは90%以上であった。血中抗体価はワクチン接種区で有意に上昇し,ワクチン接種魚血清移入による防御効果から,特異的抗体の誘導がワクチン効果の発揮に重要である可能性が,3魚種で同様に示唆された。

92(4), 743−750 (2026)
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汽水性潟湖周辺における放流ホシガレイ種苗に対するカニ類の捕食リスク

高木淳一,荒井優志,久米 学,市川光太郎,佐々木恵一,
伊藤貴之,岩崎高資,神山享一,角野和史,小木曽奏斗,
荒井修亮,山下 洋,三田村啓理,和田敏裕
 ホシガレイ種苗に対するカニ類の捕食リスクを福島県松川浦で調査した。2012−2014年実施のカゴ調査では,潜在的捕食者10種を含む36種3,763個体を捕獲した。特にイシガニとモクズガニが優占し,その分布は種苗放流時期(5−7月)および場所と重複していた。これら2種とマアナゴの捕獲数は水温と正の相関を示し,放流の遅れによる捕食リスク増加の可能性が示唆された。水槽実験では,個体数は少ないものの両カニ種による種苗の捕食を確認した。捕食者の分布やその捕食リスク評価が種苗の生残率向上に重要であると考えられた。

92(4), 751−762 (2026)
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畳み込みニューラルネットワークを用いた画像解析による藻場モニタリング手法の開発

金元保之
 藻場は沿岸生態系における主要な基礎生産の場として重要であるが,近年は磯焼けなどにより減少傾向が続いている。藻場の効果的な保全や衰退状況の早期発見のため,従来の調査手法よりも高度なモニタリング技術の開発が望まれる。本研究では畳み込みニューラルネットワークを用いて,藻場の水中画像から主要な海藻4種と岩盤の合計5つを同時に検出する技術を確立した。開発したモデルの予測精度は98.6%であり,非常に高精度であった。さらに,種々の環境下で撮影した画像に対して,予測精度の低下はみられず,高い汎用性を示すことができた。

92(4), 763−775 (2026)
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Cytb−RFLPを用いた国外外来種カラドジョウのミトコンドリア2系統の識別

黒田真道,東 典子,清水孝昭,藤本貴史,荒井克俊
 国外外来魚カラドジョウParamisgurnus dabryanusは,一部地域で在来ドジョウMisgurnus anguillicaudatusと同所的に生息し,交雑による遺伝的撹乱が懸念される。国内のカラドジョウでは,mtDNA解析により2つのグループ(1,2)の存在が示され,核RAG1遺伝子解析では両者に差がないことが明らかとなっている。本研究では両グループの迅速な識別を目的に,mtDNAのcytochrome b領域を対象として,制限酵素AvrIIとNcoIを用いたPCR-RFLP法を開発した。また,ドジョウ用に開発された核DNAマーカー解析でも,先行研究と同様に両者で差は認められなかった。開発したRFLPマーカーは,分布調査や侵入経路の解明に有用である。

92(4), 777−791 (2026)
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トランスクリプトーム解析による雄の異質三倍体(Crassostrea gigas × C. angulata)と同質三倍体(C. gigas)カキの配偶子形成の差異をもたらす分子基盤の解明

Kunyin Jiang, Xiaoxiao Li, Haijun Liu, Qi Li
 三倍体カキは中国のカキ産業に不可欠である。成長が速く繁殖能力が低い異質三倍体(C. gigas ♀ × C. angulata ♂)の配偶子形成の分子基盤解明のため,雄の同質・異質三倍体で比較トランスクリプトーム解析を行った。1,367個の発現変動遺伝子(DEGs)を特定し,GO・KEGG解析から翻訳,ペプチド合成・代謝,細胞間接着やユビキチン依存性タンパク質分解に関わるプロセスや経路の濃縮を確認した。特に異質三倍体ではタンパク質合成・分解活性が高く,これらの差異が生殖腺発達の違いに寄与することが示唆された。
(文責 平瀬祥太朗)

92(4), 793−802 (2026)
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ウナギ組換え生殖腺刺激ホルモン投与によるマアナゴの成熟および排卵誘導法の開発

中村尚隆,家戸敬太郎
 本研究では,マアナゴConger myriaster雌の成熟および排卵誘導における,ウナギ組換え生殖腺刺激ホルモン(rGTHs)の有効性を検討した。卵黄形成促進のため,前卵黄形成期および卵黄形成初期の雌にウナギ組換え濾胞刺激ホルモン(500 μg/kg体重)を毎週投与し,卵母細胞における細胞質の透明化によって示される核移動期に,ウナギ組換え黄体形成ホルモン(500 μg/kg体重)を投与した。実験1では8個体中7個体,実験2では11個体中10個体が排卵し,平均孵化率はそれぞれ35.1%および44.5%であった。これらの結果から,ウナギrGTHsはマアナゴの成熟および排卵誘導に有効であると示された。

92(4), 803−815 (2026)
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ステレオカメラとシングルビームソナーを用いた養殖生籠におけるマダイPagrus majorの行動の時空間解析

池上温史,川上連太郎,米山和良
 マダイPagrus majorは,日本で最も重要な養殖種の一つである。ステレオカメラはマダイの成長をモニタリングするために広く使用されている一方,設置深度に依存した測定誤差が懸念される。そこで本研究では尾叉長と遊泳速度に着目して,異なる深さに設置された4台のステレオカメラを使用して,季節ごとに測定を行った。尾叉長の測定結果から,深度に依存するバイアスがあることが明らかになった。遊泳速度は,深度,季節,魚のサイズによって異なった。マダイ養殖の尾叉長測定に最適な深度は,魚群の中層と推察された。

92(4), 817−830 (2026)
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宮津湾における下痢性貝毒原因プランクトンDinophysis 3種の増殖特性および毒産生能

Wai Mun Lum,内田 肇,舩越裕紀,宮園 章,Sirje Sildever,松嶋良次,鈴木敏之,長井 敏
 2023年5月,宮津湾において初めて二枚貝から基準値以上の下痢性貝毒が検出された際に,Dinophysis属3種が確認された。本研究では,その貝毒発生とDinophysisとの因果関係を解明するために,培養株を確立して増殖実験および毒分析を行った。その結果,Dinophysis fortiiの比増殖速度は3種中最も低かったが,DTX1毒量およびDTX1/OA比は他の2種より極めて高かった。また,1か月培養したD. fortii 36株のほとんどが高いDTX1/OA比を示した。以上の結果から,本事例における下痢性貝毒の原因種は D. fortiiである可能性が示唆された。

92(4), 831−843 (2026)
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深海性等脚類オオグソクムシの主要アレルゲン,トロポミオシンの同定と性状解析

黒瀬光一,小沢(岩川)織奈,紀藤圭治,嶋倉邦嘉,大迫一史,小山寛喜
 深海性等脚類オオグソクムシBathynomus doederleiniは混獲される未利用水産資源であり,その有効利用を検討する上で食品安全性,とくにアレルゲン性の評価は不可欠である。本研究では甲殻類アレルギー患者血清を用いてIgE反応性を解析し,主要IgE反応タンパク質としてトロポミオシンを同定した。cDNA解析では他の甲殻類と高い配列保存性を示し,本種トロポミオシンがIgE交差反応性アレルゲンであることを示した。

92(4), 845−854 (2026)
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日本のまぐろ市場の長期的再構築と刺身まぐろ需要の2050年までの見通し

川本太郎
 本研究は公式統計を用い,日本のまぐろ消費を缶詰,鰹節,刺身用途に区分し,1993年から2022年までの市場規模推移を生体重量換算値で推定した。日本の刺身まぐろ消費は2000年の72.6万tをピークに2022年には35.9万t(人口1人当たり2.86 kg)まで減少したと推定された。ガンマモデルにより国内需要,シナリオによりインバウンド需要を推計したが,増加傾向のインバウンド需要は国内減少分を補うには至らないと推定され,2050年の総需要は11.2万tと2022年の3分の1未満となる可能性が示された。ただし結果は特定の前提に基づく参考値である。

92(4), 855−870 (2026)
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未利用・低利用魚(NUF):現状,動向,および定義

志賀智寛,八木信行,阪井裕太郎
 本研究では,従来「未利用魚」と呼ばれてきた魚種を,国際的議論に接続しうる資源概念として再構築し,NUFとして提示した。新聞記事と3地域のフィールド調査から,日本国内におけるNUFの現状,動向,および定義について整理した。その結果,市場価値の低下や流通構造・消費嗜好の変化に加え,人口減少や地域消費の弱体化などの社会経済的要因がNUFを生み出していることが示された。農業のNUS概念を参考に,活用状況と市場価値に基づく分類枠組みを提示し,NUFという語を設定の意義と今後の研究の必要性を提唱した。

92(4), 871−888 (2026)
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