Fisheries Science 掲載報文要旨

魚類自然免疫システムにおける DNA ワクチンを介したパターン認識受容体活性化経路について

青木 宙(早大・ナノ理工),
高野倫一(水研セ増養殖研),引間順一(宮崎大農)

 病原微生物の感染の脅威にさらされている中で,ワクチンは宿主の免疫機構を高め,それらの感染を防御するための最も効果的な方法の 1 つである。DNA ワクチンは抗原をコードした遺伝子を生体内に導入するもので,養殖魚においても高い効果を示すことが知られている。本総説では,最近の魚類 DNA ワクチンについてまとめ,DNA ワクチンおよび宿主自然免疫機構との関係,特にウイルスや細菌由来の核酸(DNA や RNA)によるパターン認識受容体(PRR)を介した I 型インターフェロン活性化経路(特に TANK 結合キナーゼ 1 依存性経路)について解説した。

81(2), 205-217 (2015)
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日本におけるシロザケの新しい増殖システムおよび生理学的研究

上田 宏(北大フィールド科セ)

 我国のシロザケは,主に人工ふ化放流事業により増殖されている。1996 年まで資源量は,人工ふ化放流技術の改良により増加した。しかし,近年は資源量の変動が大きく,また 2011 年の東日本大震災により稚魚放流数が激減した。シロザケ稚魚は生まれた川(母川)から海への降河回遊時に母川を記銘し,親魚は母川を想起して遡河回遊して母川回帰する。シロザケの行動から遺伝子までの生理学的研究は,稚魚の生残率を高め,回帰親魚数を安定化させるために役立つ。本総説では,稚魚の健苗性を高め,嗅覚の母川記銘能を高める新しい増殖システムを紹介する。

81(2), 219-228 (2015)
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受動的音響手法により観測されたイセエビの摩擦音について

菊池夢美(東大院農・CREST),
赤松友成(水研セ水工研・CREST),
高瀬智洋(東京都島しょセンター)

 イセエビは日本の重要な海洋資源の一つであり,その管理のためには生息数の評価法を確立する必要がある。本研究では将来的なイセエビ資源量の遠隔的観測を目指し,エビが発する摩擦音を対象に長時間の収録を行った。伊豆大島,新島周辺海域において,刺し網およびエビ籠に水中録音装置を設置し,収録された摩擦音をマニュアル解析により抽出した。イセエビが発したと考えられる摩擦音の頻度は,昼間と比べて夜間に,潮位の差が大きくなるに伴い増加する傾向がみられた。また,エビの漁獲数と摩擦音頻度の間には正の相関関係が見られた。

81(2), 229-234 (2015)
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ニホンウナギの産卵場における親魚の産卵行動観察のための新たな漂流式水中カメラシステム

福場辰洋,三輪哲也(海洋研究開発機構),
渡邊 俊(日大生物資源),望岡典隆(九大院農),
山田祥朗(いらご研),
Miller J. Michael(東大大気海洋研・日大生物資源),
岡崎 誠,児玉武稔(水研セ中央水研),
黒木洋明(水研セ増養殖研),張 成年(水研セ中央水研),
塚本勝巳(日大生物資源)

 本稿ではニホンウナギの産卵行動の直接観察の為に開発した自由漂流式水中カメラシステム「ウナカム」と,2013 年 5 月に実施した運用結果を報告する。人工催熟したニホンウナギの雌雄個体を,天然親魚にたいする誘引物質源として用いた。水中照明の点灯・消灯周期をプログラムした 3 台のウナカムを,西マリアナ海嶺南部海域に形成された塩分フロント南側の海面下 173-200 m に投入し,延べ 7 昼夜間観察した。その結果,システムは安定して動作し,繁殖関連行動と思われる動作を示したクビナガアナゴを始め,多様な生物の映像を取得できた。

81(2), 235-246 (2015)
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メタ・フロンティア分析を用いた漁業の効率性水準に関する国際比較

Sang-Go Lee,Amaj Rahimi Midani(釜慶大学,韓国)

 本研究は,世界の漁業を対象に,1960 年から 2010 年の間における技術効率などを分析することを目的としている。分析対象とした地域は,ヨーロッパ,アジア,北米および中米,南米,アフリカ,ならびにオセアニアである。世界的な過剰漁獲を受けて,多くの国で資源回復計画を実施している。各国の効率水準は,それぞれの地域内の比較においては高いものの,これを世界で比較すると,効率水準が高い国は限定的であった。漁船などのオーバーキャパシティーを是正しコストを引き下げることなどが課題となっているといえる。
(文責 八木信行)

81(2), 247-254 (2015)
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長時間空気に曝されたコイにおける急性の赤血球更新

Yen-Hua Chen,Hong-Han Chen,
Sen-Shyong Jeng(台湾海洋大,台湾)

 空中曝露は魚に極めて強いストレスを与え,ほとんどの魚類は数分間で死に至るが,コイは数時間生きることができる。そこで,コイを 4 時間空中曝露後,25℃ で 140 時間回復させ,血球学的反応と亜鉛との関連性を検討した。回復 20 時間後では,35% の成熟赤血球は分解され,15% は脾臓から急性に動員された未成熟赤血球で,20% は赤血球生成によって生じた未成熟赤血球で置換された。赤血球生成の増加は,頭腎中の亜鉛によって促進された。更新された赤血球は通常のものよりも有意に高浸透圧に強く,これによりコイがストレスへの抵抗性を高めていることが示唆された。
(文責 佐野元彦)

81(2), 255-265 (2015)
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日本海域におけるマガキ属のカキ Crassostrea dianbaiensis の初記載

関野正志(中央水研),石川 裕(愛媛県),
藤原篤志(中央水研),
Doyola-Solis EFC,Lebata-Ramos MJH(SEAFDEC),
山下博由(貝類多様性研究所)

 四国南西部において,ミナミマガキ C. bilineata に似た形態を持つカキが見つかった。ミトコンドリア DNA および核 DNA 解析に基づいて種同定を行ったところ,これらはごく最近熱帯性種として初記載された C. dianbaiensis(和名スミゾメガキ)であった。また本種は系統分類的にもミナミマガキに近いことが分かった。原記載標本(南シナ海産)と四国産標本の貝殻特徴を比較したところ,貝殻内面の着色程度が大きく異なっていた。本発見により,日本産マガキ属の種リストが更新された。

81(2), 267-281 (2015)
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ニホンウナギの仔魚期における飲水と腸でのイオン吸収の発達

安 孝珍(東大大気海洋研),
李 慶美,井ノ口繭,渡邊壮一(東大院農),
岡村明浩(いらご研),塚本勝巳(東大大気海洋研),
金子豊二(東大院農)

 ニホンウナギの仔魚期における浸透圧調節機構の開始を調べるために,人工孵化仔魚を用いて飲水時期を特定し,腸での浸透圧調節関連遺伝子 NKCC2β および NCCβ の発現パターンを検討した。その結果,孵化直後から消化管内に環境水の取込が観察され,孵化 1 日目まで消化管前部に滞留,2 日目に肛門まで達した。発現部位解析の結果,NKCC2β は腸を含む部位で,NCCβ は直腸を含む部位で高い発現が見られた。発達段階における NKCC2β の発現は孵化 4 日目以降に上昇傾向を示し,7 日目以降安定した。NCCβ は 3 日目で最低値を示した後,NKCC2β と同傾向の上昇を示した。

81(2), 283-290 (2015)
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東南アジア産汽水・淡水フグ Tetraodon および Carinotetraodon 属 8 種の飼育下での産卵

土井啓行(下関市立しものせき水族館),
酒井治己(水大校),山野上祐介(東邦大),
園山貴之・石橋敏彰(下関市立しものせき水族館)

 下関市立水族館において,東南アジア産汽水・淡水フグ 8 種 Tetraodon biocellatus (Tb), T. cochinchinensis (Tco), T. cutcutia (Tcu), T. palembangensis (Tp), T. turgidus (Tt), Carinotetraodon irrubesco (Ci), C. lorteti (Cl)および C. travancoricus (Ct)が自然産卵した。Tco, Tcu, Tp および Tt は大きい卵を一層に産卵し雄が保護した。Ct は同属の中では大きめな卵をわずかに産卵し雄が保護した。一方 Tb, Ci および Cl は小さい卵をばらまいて産卵し保護はしなかった。Tco, Tcu, Tp, Tt の生長は早く,Tb, Ci, Cl, Ct は遅かった。

81(2), 291-299 (2015)
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腐肉食性のヨコエビ類と貝虫類により引き起こされたトラップ内のヒラメ稚魚の死亡

首藤宏幸(国際農研セ),梶原直人(水研セ瀬水研)

 ヒラメ放流種苗の減耗要因把握のため,佐渡市真野湾のヒラメ成育場において,生きたヒラメ天然稚魚・人工種苗を餌としたトラップ実験を行った。トラップ内のヒラメは,砂を敷いたトラップの天然魚を除き,ほとんどの個体が多量の腐肉食性のヨコエビ類 2 種とウミホタルによる食害を受け一晩で骨の状態となった。水槽実験においても,これら 3 種が生きたヒラメを殺し,摂食することが確認された。従って,これらの腐肉食性甲殻類が夜間にヒラメを集団で攻撃・捕食することにより,放流直後のヒラメ種苗の減耗に関与している可能性がある。

81(2), 301-308 (2015)
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中国北東部の青島沿岸域におけるイイダコの生殖腺の発達と季節変化

Weijun Wang(山東省海洋資源与環境研究院),
Gen Dong(中国海洋大学),
Jianmin Yang(山東省海洋資源与環境研究院),
Xiaodong Zheng(中国海洋大学),
Xiumei Wei,Guohua Sun(山東省海洋資源与環境研究院,中国)

 イイダコの生殖腺の発達と成熟段階を調査するため,2011 年 12 月から 2012 年 11 月にかけて 171 個体を採取し,雌雄別に体重,外套長,生殖腺指数および繁殖形質について調査した。生殖腺の成熟段階は,組織学的調査に基づき,雌雄とも 5 期(未熟,発達,成熟途上,成熟,放卵・放精)に分類された。青島沿岸域のイイダコは成長が速く,短命で,生涯 1 回繁殖型の繁殖生態を示した。また,成熟段階と生殖細胞の発達から,繁殖周期は 4 月から始まる 4 期に区分され,雄は雌よりも小型で成熟し,交接は雌の繁殖期前に起こっていた。
(文責 浜崎活幸)

81(2), 309-319 (2015)
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ニホンウナギの天然産卵親魚と人為催熟魚の卵膜の組織学的特徴

泉 ひかり,萩原聖士(北大院水),
黒木洋明(水研セ増養殖研),張 成年(水研セ中央水研),
塚本勝巳(日大生物資源),香川浩彦(宮崎大農),
工藤秀明,井尻成保,足立伸次(北大院水)

 2009 年に採集されたニホンウナギ天然産卵親魚 4 個体と人為催熟魚における卵母細胞の卵膜の組織学的特徴を調べた。人為催熟魚の卵膜の厚さとホルモン注射回数に正の相関がみられた。天然産卵親魚 2 個体の卵膜は人為催熟魚と比べて有意に薄かった。天然産卵親魚の卵膜内層には層構造が観察された。この層構造は繰り返しホルモン注射を受ける人為催熟魚特有の構造と考えられていたが,天然産卵親魚においても同様の層構造を有することから,産卵回遊中の天然成熟魚の卵膜形成は何らかの形成リズムを持つと考えられる。

81(2), 321-329 (2015)
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石垣島浅海域におけるイラ属稚魚 2 種の食性と餌料環境

福岡弘紀,山田秀秋(水研セ西海水研亜熱帯セ)

 シロクラベラとクサビベラの稚魚の食性を消化管内容物調査から明らかにした。両種とも全長 25 mm 以下の個体ではカイアシ類が主要な餌であるが,組成には違いが認められた。これは両種の着底時期の違いによると考えられ,褐藻類が繁茂する時期に着底するシロクラベラは褐藻葉上に豊富なハルパクチクス類を利用し,褐藻類が消失した後に着底するクサビベラは海草葉上のカラヌス類やハルパクチクス類を利用していた。褐藻類は,着底直後のシロクラベラ稚魚にとって重要な餌場であることが示唆された。

81(2), 331-344 (2015)
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アメリカザリガニ Procambarus clarkia のエクジステロイド応答性アミラーゼの同定と発現

Tao Peng,Daojun Wang,Yingying Yu,
Chaoliang Liu,Baojian Zhu(安徽農大,中国)

 澱粉を加水分解するアミラーゼは,多くの生理過程の制御に重要な役割を果たしている。アメリカザリガニ Procambarus clarkii がもつアミラーゼ遺伝子 Pc-Amy は 514 アミノ酸からなり,他の甲殻類と高い相同性を示した。逆転写定量 PCR およびウェスタン解析により,この遺伝子は脱皮期に肝膵臓で高く発現するとわかった。この発現はエクジステロイド投与 48 時間後に抑制されるが,エクジステロイド受容体の発現阻害により,この抑制はみられなくなった。以上より,Pc-Amy は P. clarkii の発生過程で何らかの役割を持つと示唆される。
(文責 神保 充)

81(2), 345-352 (2015)
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Streptococcus parauberis を接種したヌマガレイ Platichthys stellate の c タイプおよび g タイプのリゾチーム cDNA の同定

Yi Kyung Kim,Yoon Kwon Nam(釜慶大,韓国)

 ヌマガレイから c タイプと g タイプのリゾチーム cDNA を同定した。これらは,それぞれ 143 と 188 アミノ酸をコードし,触媒部位と機能に保存的な配列を有していた。両遺伝子は,調べたすべての臓器で発現し,特に c タイプは脾臓で,また,g タイプは腸後部で高い発現が見られた。S. parauberis の接種によって脾臓の c タイプの発現が誘導されたことは,脾臓がリゾチームの主要産生組織であることを示している。感染 4 時間後には体表粘液と血清中にその活性が検出されたことから,リゾチームは細菌感染への急性期の応答に関わることが示唆された。
(文責 佐野元彦)

81(2), 353-363 (2015)
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サンマの普通肉および血合肉の IMP 分解酵素におよぼす塩類の影響

関 洋子,濱田(佐藤)奈保子(海洋大)

 サンマは塩サンマとして保存されることが多く,保存中の旨味成分の保持は重要であり,イノシン酸(IMP)分解酵素(IMPase)活性を抑制する必要がある。サンマは筋肉中に占める血合肉の割合が高いため,普通肉だけでなく,血合肉についても様々な加工条件における IMPase の挙動を比較した。pH,温度,塩類の影響について普通肉,血合肉ともに同様の挙動を示したことから,加工の際には両者を分けず同様の条件で塩加工できることがわかった。血合肉の IMPase は MgSO4 によって特に活性が促進されたため,加工には SO4 を含まないイオン交換膜塩が適していることを提案した。

81(2), 365-371 (2015)
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ミャンマーのナレズシの乳酸菌相

Nant Kay Thwe Moe(海洋大・ミャンマー水産局),
Su Myo Thwe(ミャンマー水産局),
白井隆明,寺原 猛,今田千秋,小林武志(海洋大)

 ミャンマーの伝統的な発酵食品である,コイ科の小型魚 tinfoil barb を用いたナレズシ(ngachin)の乳酸菌相を培養法と非培養法を用いて検討した。分離乳酸菌は,ホモ型発酵の乳酸桿菌がほとんどで,PCR-RFLP および 16S rRNA 遺伝子シーケンスなどの結果から Lactobacillus plantarum group, Lactobacillus farciminis が優勢種と同定され,その一部は γ-アミノ酪酸(GABA)を産生した。ナレズシから直接 DNA を抽出し T-RFLP 解析を行ったところ,培養法による同定結果に類似した結果となった。

81(2), 373-381 (2015)
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ヨシキリザメの皮から抽出したゼラチンの加水分解物がすり身の冷凍変性に及ぼす影響

Kanokrat Limpisophon(カセサート大,タイ),
井口仁美(海洋大),田中宗彦(国学院栃木女子短大),
鈴木 徹,岡崎恵美子,斎藤俊樹,高橋希元,
大迫一史(海洋大)

 ヨリキリザメの皮から抽出したゼラチンの加水分解物がすり身の冷凍耐性に及ぼす影響について検討した。平均分子量が大きい加水分解物,平均分子量が小さい加水分解物,およびこれらの主構成アミノ酸をすり身に添加したところ,平均分子量が小さいほど効果は高く,すり身中の Ca-ATPase 活性および不凍水量の測定結果もこれを支持した。また,同様の処理を行った豚皮セラチンの冷凍耐性付与効果も同様の傾向を示した。以上の結果より,サメ皮ゼラチン加水分解物は冷凍変性防止剤としてすり身に添加可能であることが明らかになった。

81(2), 383-392 (2015)
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未知の構造変動を考慮したタラ市場需要分析

若松宏樹,宮田 勉(水研セ中央水研)

 本研究では,未知の構造変動を考慮した日本のタラ,スケトウダラ市場の需要モデルを推定した。結果は,構造変動を考慮した場合,しない場合よりも最大 17 ポイントも説明力が上昇した。タラ市場の所得・価格弾力性なども判明し,これらの商品は必需品であることが伺えた。また,タラは,漁業努力を減らすことで利益上昇が望めることが示唆された。

81(2), 393-400 (2015)
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東南アジアにおいて流通の変化が漁業に及ぼす影響:フィリピン国アクラン州バタン湾の事例

神山龍太郎(東大院農),宮田 勉(水研セ中央水研),
黒倉 壽(東大院農),石川智士(地球研)

 本研究は東南アジアにおいて水産物の市場と流通の構造的変化が漁業に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。そのために,フィリピン国のバタン湾を事例とし,沿岸の漁業者,仲買人,水産物流通業者に対する聞き取り調査を実施した。その結果,1980 年代に調査地と国内外の市場をつなぐ流通経路が新たに形成されたことで魚価が上昇し,漁業が儲かるようになったため,漁業者と彼らの所有する定置漁具の急増が生じたことが明らかとなった。このことから,漁業管理においては,市場や流通を考慮する必要があることが考えられた。

81(2), 401-408 (2015)
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