Fisheries Science 掲載報文要旨

マダイ若魚に選択的に捕食されたヨコエビ類の生活型と体サイズ

首藤宏幸(日水研),畔田正格(マリノフォーラム 21)

 マダイ若魚の食物選択を,主食であるヨコエビ類の種に注目して検討した。胃内容物中の種組成は魚の成長に伴い変化したが,環境中のものとは異なっていた。7月中旬以前の選択性はヨコエビの生活型と密接に関係し,表在性>浅潜行性>内在管棲性>深潜行性の種の順に低くなった。一方,7月中旬以降はヨコエビの体サイズが選択性決定の主要因であった。体長の大きいByblis japonicus以外の表在性.浅潜行性種は体長が小さく選択されなかったからである。従って,マダイ若魚の食物選択はヨコエビ類の生活型と体サイズで説明可能であった。
67(3), 389-400 (2001)
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小川原湖のワカサギ湖内滞留群と降海回遊群の産卵場と再生産特性

片山知史(東北大院農)

 小川原湖のワカサギについて,小型の湖内滞留群と大型の降海回遊群の産卵場および再生産特性を比較した。産卵場において採集された産卵中の雌個体について,耳石日周輪を用いて生活史型を判別したところ,湖内滞留群は湖内でのみ産卵するのに対し,降海回遊群は湖内のみならず流入河川でも産卵することが明らかとなった。
 抱卵数は体長に対して指数関数的に増加したが,両群の体長の境に相当する63.8mmに変曲点が認められた。雌の成熟卵の卵径は両群間で有為差がなかった。しかし湖内滞留群に比べて降海回遊群の卵の乾燥重量は大きく,水分含有率は少なかった。両群から産出される卵稚仔の成長,生残および発育過程に差異が与えられるものと推察された。
67(3), 401-407 (2001)
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サバ延縄の釣獲率に及ぼす擬餌の色彩効果

謝 寛泳,黄 宝貴,呉 榮在,陳 俊徳(台湾海洋大)

 台湾海域におけるサバ延縄漁業の釣獲率に及ぼす擬餌の色の影響について,操業実験を行った。実験結果より,釣獲率の高い順に,赤>黒>黄>緑>黄橙≒赤橙≒桃>白>青>紫>透明となった。透明と紫,青の擬餌は特に釣獲率が低く,他の色に比べて有意な差が認められた。その他の色の間では統計的に有意な差はなかった。一方,9段階の灰色の擬餌を用いた比較操業実験では釣獲率に差が認められなかったことより,釣獲率に影響を及ぼしたのは色の波長特性であり,光度の影響は少ないものと結論した。
67(3), 408-414 (2001)
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ガゴメとマコンブの栄養塩取り込みに関する生理学的特性

尾崎 愛,水田浩之,山本弘敏(北大院水)

 ガゴメとマコンブの硝酸態窒素およびリン酸態リンの取り込み動態を調べ,その特性を比較した。異なる栄養塩濃度条件下での取り込み速度は,両種共にMichaelis-Mentenの式に従い,最大取り込み速度に差は認められなかった。しかし,ガゴメの半飽和定数はマコンブに比べ有意に高かった。また,低光強度条件下(<100μE/m2/s)でのガゴメの栄養塩取り込み速度はマコンブに比べ2~7倍高い値を示した。ガゴメの光補償点および光飽和点はマコンブに比べ有意に低かった。以上のことから,ガゴメは低光量下での栄養塩の取り込み能が高く,より深い場所や濁った場所での生育も可能であることが明らかになった。
67(3), 415-419 (2001)
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水温と明期を低減させたときのニジマスとコイのマクロニュートリエント(MN)選択性

山本剛史,島 隆夫,古板博文(養殖研),白石 学(中央水研),F. J. Sanchez Vazquez(ムルシア大),田畑満生(帝京科大)

 水温と明期を徐々に低減させた時のニジマスとコイのMN選択性を検討した。また,適切なMN比率の基本飼料(ST)を別の群に自発摂餌させ,飼育成績を比較した。ニジマスはこれらの環境変動に係わらずタンパク質主体飼料(HP)を選択し,コイは高水温.長日期にはHPを強く選択したが,水温等の低下に伴いその依存性は見られなくなった。一方,両魚種とも成長やタンパク質蓄積率等はST摂取群とMN選択群との間に差は見られなかった。
67(3), 420-429 (2001)
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琵琶湖におけるアユの鉛直分布の音響評価

白木原国雄,吉田政彦(三重大生物資源),西野麻知子(琵琶湖研),高尾芳三,澤田浩一(水工研)

 琵琶湖沖合域における矮小型アユ(コアユ)の鉛直分布を音響調査により明らかにした。定点での24時間連続計測を1995-97年の6-9月に8回実施した。計測範囲を深度3mから湖底までとし,魚種確認を水中に下ろしたビデオカメラで行った。コアユは温度躍層の上のクロロフィル最大層付近に出現した。その密度は深度4-11mで2-4尾/m3と最大となり,20m以深ではほぼゼロであった。コアユは1日中表水層に留まり明瞭な日周鉛直移動を行わない。この利点を餌の利用と捕食者回避の点から論じた。
67(3), 430-435 (2001)
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稚魚採集用フレームトロールの採集能力と操作性

板谷和彦,藤森康澄,塩出大輔(北大院水),青木一郎(東大院農),米澤 崇(北大院水,泰東製綱),清水 晋,三浦汀介(北大院水)

 小型浮魚類の仔稚魚を採集することができるフレームトロールを開発した。網はナイロン製ラッセル網地(網糸直径0.75mm,目合8mm)から構成される網長さ13mの4枚網である。網口フレームは4本のステンレスパイプ(一辺4m,直径76mm)により正方形に構成される。稚魚に対する採集能力と投揚網,網深度調節の操作性を評価するために数回の操業試験を行った。フレームトロールにより,これまで採集することが困難であったマイワシをはじめとする小型浮魚類の仔稚魚を採集することができた。水中カメラを用いた網口周辺の観察から,稚魚が網口から逃避する行動や網口を回避する行動は認められなかった。
67(3), 436-443 (2001)
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土佐湾におけるキシエビの成熟と産卵

阪地英男(中央水研)

 周年にわたる雌の生殖腺の観察により,土佐湾におけるキシエビの成熟と産卵を議論した。GSI(100×生殖腺重量/体重)と卵母細胞の発達段階の関係によると,GSI 6-8の個体の66.7%およびGSI 8以上の個体の100%が,核の縮小と縁辺部への移動後の前成熟期または成熟期の卵母細胞を有していた。このような卵母細胞が4, 6, 7, 8, 10, 11, 3月に,GSI 6以上の個体が9月と2月を除く期間中に出現した。成熟期卵母細胞を有する個体が確認された3月の水温は年間最低に近かった。以上から,我が国周辺のクルマエビ科で初めて周年にわたる成熟が確認された。
67(3), 444-448 (2001)
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ニホンザリガニによる人工巣穴の選択性

中田和義,浜野龍夫,林 健一(水大校),川井唯史(道中央水試),五嶋聖治(北大院水)

 危急種であるニホンザリガニを増殖させる上で有効な人工巣穴の開発を目的として,研究を実施した。巣穴の形状を水平の直管とし,内径と長さの異なる巣穴に対する選択実験を行った。実験の結果,巣穴の内径については,全長(X, mm)と好んで選択された内径(Y, mm)との間にY=0.49X+3.42という関係が認められた。巣穴の長さについては,全長の3倍以上の巣穴を有意に選択した。以上の結果をもとに,飼育に使用する人工巣穴のモデルと,また,ミティゲーションに役立つ人工巣穴の条件について論議した。
67(3), 449-455 (2001)
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消化管内滞留時間と血漿遊離アミノ酸の挙動に及ぼすブリ飼料の物性と形態の影響

渡邉 武(東水大),秋元淳志(日配中研),青木秀夫(三重水技セ),示野貞夫(高知大農)

 魚粉を主原料としてほぼ同じ原料組成で調製した3種類の形態の異なる飼料をブリに給餌し,消化管内容物の重量および血漿遊離アミノ酸(FAA)濃度を経時的に調べた。胃食塊の体重比の推移は飼料形態によって大きく異なっており,滞留時間は大型エクストルーダ製ドライペレット(SDP)が最も長く,次いで小型エクストルーダ製ドライペレット(EP)でシングルモイストペレット(SMP)が最も短かった。また,飼料に添加した結晶Met, Lys, Trpは飼料形態に関係なく給餌直後より吸収されておりLysとTrpの血漿FAA濃度は各形態の飼料区ともほぼ同じパターンで推移したが,Met濃度は飼料の胃内容物の消長と同調したパターンを示した。
67(3), 456-460 (2001)
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ブリ用無魚粉飼料の利用性(性能)に及ぼす飼料形態およびアミノ酸添加の影響

渡邉 武(東水大),青木秀夫(三重水技セ),渡邉哉子,舞田正志(東水大),山形陽一(三重水技セ),佐藤秀一(東水大)

 濃縮大豆タンパク質,大豆油粕,コーングルテンミール,ミートミールをタンパク質源とした無魚粉飼料のブリに対する性能に及ぼす飼料形態の影響および必須アミノ酸(EAA)の添加効果について検討した。供試魚は平均体重134gと237gのブリでそれぞれ93日間(生簀試験)および44日間(水槽試験)飼育した。その結果,無魚粉飼料の性能は飼料形態によって異なり,大型二軸エクストルーダ(Ex)製ドライペレット(SDP)が最も優れ,次いで小型二軸Ex製ドライペレット(EP)でシングルモイストペレットが最も劣った。また,いずれの飼料形態とも飼育成績はEAA添加区の方が無添加区に比べて優れており,EAAの添加によって無魚粉飼料の性能の改善が図れることが明らかとなった。
67(3), 461-469 (2001)
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ゴマフアザラシの胃リンパ節にみられた腺癌

本間義治,牛木辰男,人見次郎,武田政衛(新潟大医)

 1998年3月2日に,富山湾黒部市の漁港に上陸し,翌日死亡した雄ゴマフアザラシ(幼獣)は,既報のように,胃に硬性癌を伴う印環細胞癌(粘液細胞性腺癌)が発生し,腎臓に腺腫が,リンパ節には大食細胞が増殖活動していた。そこで,他への転移を予想し,精査してみた。その結果,胃リンパ節に明瞭な核と核仁をもつ細胞からなる腺腔(ムコイドを含む)を示す腺癌が発生していることが分かった。この腺癌細胞は,胃より血流に乗ってリンパ節辺縁洞より侵入し,増生したものと推定される。鰭脚類リンパ節における腺癌の記載は初めてであり,この腺癌も印環細胞癌とともに,ゴマフアザラシの死因の一つになったらしい。
67(3), 470-473 (2001)
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アユPlecoglossus altivelisのミトコンドリアゲノム全塩基配列

石黒直哉(福井県大生物資源),宮 正樹(千葉中央博),西田 睦(東大海洋研)

 アユPlecoglossus altivelisのミトコンドリアゲノム全塩基配列を,ロングPCRの手法と57個の魚類汎用プライマー,および5個の種特異的プライマーを用いて直接法により決定した。本種のミトコンドリアゲノムは全長16,537塩基対(bp)で,他の脊椎動物と同様に2個のリボゾームRNA遺伝子,22個の転移RNA (tRNA)遺伝子,ならびに13種類のタンパク質をコードする遺伝子から構成されていた。また,遺伝子の配置も他の一般的な脊椎動物と同一であった。tRNAPro遺伝子とtRNAPhe遺伝子の間にみられた857bpの非コード領域は,いくつかの特徴的な保存的領域を含むことから,調節領域(D-loop領域)に相当すると考えられた。
67(3), 474-481 (2001)
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鯨類精子の外部形態の比較

喜多祥一,吉岡 基,柏木正章(三重大生物資源),小川 覚(三重大医電顕室),鳥羽山照夫(鴨川シーワールド)

 鯨類精子の外部形態を4科10種について種間比較した。精子全長には,ニタリクジラなどの大型種ほど短く,スナメリなどの小型種ほど長いという傾向がみられた。しかし,マイルカ科についてはこの関係はあてはまらなかった。精子頭長は,陸上哺乳類に比べて短い傾向があった。精子頭部側面形態には,前域は扁平で,後域は厚いという共通した特徴がみられたが,背面形態は,パドル型,ボーリングのピン型,団扇型など5型に分かれ,精子全長とともに分類階級に呼応した種間差がみられた。
67(3), 482-492 (2001)
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ホタテガイ閉殻横紋筋トランスグルタミナーゼの精製とNaClによる失活

埜澤尚範,関 伸夫(北大院水)

 ホタテガイ閉殻横紋筋より組織型トランスグルタミナーゼを収率16.6%, 101.9倍に精製した。本酵素は,カルシウム依存性のチオール酵素で,分子量はSDS-PAGEにより95kDaと推定された。本酵素を基質非存在下,0.5M NaClと共に20°Cで2時間incubateすると,活性が14.4%に失活するが,この時,蛍光,紫外および円二色性スペクトルのいずれにも,顕著な変化は検出されなかった。また,0.5M NaClで失活した酵素の塩濃度を50mMに下げると,活性が一部回復した。以上の結果から,NaClによる酵素機能の変化は,酵素分子上のわずかな構造変化を通じて起こっていることが示唆された。
67(3), 493-499 (2001)
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非線形プログラムによる品質の異なるすり身の至適混合割合の決定

許 成光,蒋 丙煌(国立台湾大)

 スケトウダラ,イトヨリダイおよび低品質のタチウオすり身を種々の比率で含むすり身ゲルの物性と色調を決定した。すり身ゲルは2%NaClの添加で,90°C, 20分の加熱により製造した。品質の異なるすり身の混合割合とゲルの物性と色調とは非線形の関係にあった。それ故,至適混合条件の決定には非線形プログラムが適当であった。すり身製品を製造するために,高品質のすり身に低品質のタチウオすり身を混合する際にはおよそ3.3%から18.8%添加することが可能であった。
67(3), 500-505 (2001)
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ニュージーランドホタテガイにおけるペクテノトキシン2からペクテノトキシン2セコ酸への変換

鈴木敏之(東北水研),Lincoln Mackenzie (Cawthron Institute), David Stirling (ESR), Janet Adamson (Cawthron Institute)

 同一調査点で採取した有毒渦鞭毛藻Dinophysis acutaとニュージーランドホタテガイPecten novaezelandiaeの下痢性貝毒成分を高速液体クロマトグラフィー/質量分析で分析した結果,D. acutaからはペクテノトキシン2が検出されたのに対して,ニュージーランドホタテガイからはペクテノトキシン2セコ酸が検出された。また,精製したペクテノトキシン2をニュージーランドホタテガイのリン酸緩衝液抽出液に添加した結果,ペクテノトキシン2はペクテノトキシン2セコ酸に速やかに変換された。
67(3), 506-510 (2001)
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ムラサキイガイ前足牽引筋45-kDaカルポニン様タンパク質の単離とその性状

船原大輔,中谷操子,渡部終五(東大院農)

 ムラサキイガイMytilus galloprovincialis前足牽引筋(ABRM)から45-kDaの新規タンパク質を単離した。本タンパク質は,部分アミノ酸配列が他生物種由来のカルポニン関連タンパク質のそれと高い相同性を示し,抗ニワトリ平滑筋カルポニン抗体と強く反応した。ABRMアクトミオシンMg2+-ATPase活性は,本タンパク質をアクトミオシンに対し重量比1/10および1/1加えた場合に,それぞれ12および41%阻害された。
67(3), 511-517 (2001)
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ニジマス精巣におけるアンドロゲンレセプターの免疫組織化学的局在

竹尾仁良,山下伸也(日本水産(株)中研)

 ニジマスの精子形成におけるアンドロゲンの標的細胞を明らかにするために,抗ニジマスアンドロゲンレセプター抗体と抗3β-HSD抗体を用いて精巣におけるアンドロゲンレセプターの局在を免疫組織化学的手法により解析した。アンドロゲンレセプターの陽性反応は,マイクロウエーブ処理により,セルトリ細胞,ライデッヒ細胞とその他の間質細胞,精原細胞,精母細胞,精細胞の核で検出された。以上の結果から,ニジマス精巣の精子形成において,アンドロゲンは,体細胞と生殖細胞の両方に直接作用している可能性が示唆された。
67(3), 518-523 (2001)
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加熱したイカ筋肉からの乾燥食品の製造におけるソルビトールの働き

久保友和,佐伯宏樹(北大水)

 加熱処理したスルメイカの外套部(HM)を1.0Mソルビトール(S)溶液に浸漬後,直ちに30°C(相対湿度60%)で乾燥し,水分挙動と物性変化を未加熱試料(RM)と比較した。HMとRMの水分はSによる浸透脱水現象によって大きく低下し,減率乾燥期間の蒸発水分量の低下によって乾燥工程が短縮化できた。RMでは乾燥時の硬化がSによって抑制されたが,HMではこの現象はみられなかった。しかしHMの物性は加熱処理によって顕著に軟化するので,結果的にHMにおいても乾燥時の過度の硬化が抑制できた。
67(3), 524-529 (2001)
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屋久島におけるウナギ属魚類シラスの季節的出現(短報)

山本敏博,望岡典隆,中園明信(九大院生資環)

 鹿児島県屋久島宮之浦港において,1997年1月から12月の夜間の大潮時に,ライトトラップを用いてウナギ属シラスの定量的採集を行った。その結果,Anguilla japonica(ウナギ),A. marmorata(オオウナギ),A. bicolor pacificaの3種のシラスの遡上が認められ,それぞれ82.7, 16.4, 0.9%を占めた。ウナギは10月下旬から7月上旬(ピークは2月)に,オオウナギはほぼ一年中(ピークは6月と9月),A. bicolor pacificaは5, 9, 10, 12月に出現した。
67(3), 530-532 (2001)
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ナンノクロロプシスの酸素発生速度に及ぼす溶存態無機炭素濃度の影響(短報)

山崎繁久,山岡寿史(鹿大水)

 培地中の溶存態無機炭素(DIC)濃度がナンノクロロプシスの増殖に及ぼす影響を検討するために,DIC濃度とナンノクロロプシスの酸素発生速度の関係を調べた。ナンノクロロプシスの酸素発生速度は,設定した0.047-5.0mMのDIC濃度の範囲では,DIC濃度の増加につれて速くなり,およそ1.0mM以上で一定の値となる傾向を示した。自然海水のDIC濃度が約2.0mMであるので,ナンノクロロプシスの増殖を良好に保つには,培地中のDIC濃度を自然海水のそれの約半分以上に維持するのが望ましいことが示唆された。
67(3), 533-534 (2001)
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養成キジハタの双方向への性転換の可能性(短報)

奥村重信(日栽協玉野)

 養成キジハタの雌雄性を観察するため飼育実験を行った。キジハタの大型雌1尾と小型雌1尾を同一水槽で飼育する区(雌区)を3区,大型雄1尾と小型雄1尾を同一水槽で飼育する区(雄区)を3区の合計6区を設け,1997年8月から1998年7月まで飼育した。供試魚の生殖腺の組織切片を光学顕微鏡下で観察した結果,雌区の1尾の生殖腺が精巣組織を呈しており,雄区の2試験区においてそれぞれ1尾ずつが未熟な卵巣様組織を有していた。飼育下のキジハタでは雌雄両方向への性転換が起こりうる可能性が示唆された。
67(3), 535-537 (2001)
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サクラマスの銀化変態に伴う傍糸球体細胞の形態変化(短報)

水野伸也,三坂尚行,笠原 昇(道孵化場)

 本研究では,サクラマスの銀化変態に伴う傍糸球体細胞(JGC)の形態変化を調べた。サクラマスの腎臓には,ボウイ染色で好染されるJGCが観察された。JGCの細胞数および面積は銀化変態の進行に伴い増加した。このうちJGCの細胞数の変化は,銀化変態に伴う鰓Na,K-ATP ase活性の変化と同調していた。これらの結果から,サクラマスでは銀化変態の進行に伴い傍糸球体細胞が活性化することが明らかとなった。また,JGCの細胞数がサクラマスの海水適応能の発達を示す指標と成る可能性が考えられた。
67(3), 538-540 (2001)
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海水馴致したティラピア仔魚における卵黄嚢上皮塩類細胞からのClの排出(短報)

金子豊二,白石清乃(東大海洋研)

 淡水および海水に馴致したティラピア仔魚で,chloride testならびにX線分析により卵黄嚢上皮におけるCl排出部位の同定を試みた。仔魚を洗浄後,0.25% AgNO3水溶液中で1分間反応させ,太陽光に30分間さらした。その結果,Clの存在を示す銀粒子の沈着が海水仔魚の塩類細胞のpitに観察されたが,淡水仔魚では認められなかった。またchloride testを施した海水馴致魚をX線分析で調べたところ,塩類細胞のpit付近にのみ銀が検出された。以上の結果,鰓の未発達な仔魚期では,海水中で発達する卵黄嚢上皮の塩類細胞がCl排出部位として機能していることが示された。
67(3), 541-543 (2001)
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蛍光標識セラミドを用いて明らかにされた海産無脊椎動物における中性/アルカリ性セラミダーゼの分布(短報)

中川哲人,伊東 信(九大院.生資環.海洋資源化学)

 セラミダーゼは,生理活性脂質セラミドの酸アミド結合を加水分解する酵素である。至適pHにより酸性セラミダーゼと中性/アルカリ性セラミダーゼに分類される。後者は細胞内シグナル伝達系への関与が示唆されている。今回,中性/アルカリ性セラミダーゼの特異的な蛍光基質であるC12-NBD-セラミドを用いて,海産無脊椎動物における本酵素の分布を調べた。その結果,本酵素は海産無脊椎動物に広く分布し,特にクロボヤ,イトマキヒトデ,チョウセンイソメ等には強い活性が存在することが見出された。本論文は,海産無脊椎動物がセラミダーゼの優れた酵素源であることを示している。
67(3), 544-546 (2001)
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魚の鮮度評価に対する酸化還元電位利用の可能性(短報)

Tri Winarni Agustin(東水大),鈴木雅樹(法政大工),鈴木 徹,萩原知明(東水大),大河内正一(法政大工),高井陸雄(東水大)

 魚の鮮度評価の指標として,通常K値が用いられるが,K値を求める手法は複雑で時間がかかるのが問題である。本研究では,K値の代りに酸化還元電位(ORP)を魚の鮮度評価の指標として用いることができるかどうかについて検討した。試料はキハダの筋肉を用いた。ORP, K値の算出法は,それぞれ電極法,HPLC法を用い,貯蔵温度0-10°Cにおいて,それぞれの値の経時変化を調べ,両者を比較した。その結果,キハダ肉の生食限界とされるK値=20までの間,ORPはK値と良好な正の相関を示した。それ以上ではK値の増加に伴ってORPは温度ごとに異なる減少傾向を示した。この結果はORPが鮮度評価に適用出来る可能性を示唆するものであった。
67(3), 547-549 (2001)
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コシナガマグロの荒節加工に対する原料適性(短報)

平塚聖一(静岡水試)

 コシナガマグロは東南アジア近海で多く漁獲されているがその利用価値は低い。本実験ではコシナガマグロの節加工原料としての適性を把握するため,荒節(削り節)を試作してその化学成分等を調査した。削り節の遊離アミノ酸含量およびイノシン酸含量はともに対照に用いたカツオ削り節の70%程度であった。試作した削り節の色はカツオ削り節よりも白く,また,味,香りはかつお削り節よりやや弱かったが,削り花の状態は極めて良好であった。これらの結果から,コシナガマグロは荒節の原料になり得ると判断された。
67(3), 550-552 (2001)
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逆相高速液体クロマトグラフィーを用いた魚類肝臓中のシステインスルフィン酸デカルボキラーゼ活性の測定(短報)

後藤孝信,千葉可奈子,桜田悦大(沼津高専),高木修作(愛媛水試)

 魚類肝臓中のシステインスルフィン酸デカルボキラーゼ活性を高速液体クロマトグラフィー法で測定した。透析にて内因性のタウリンを除いたブルーギルの肝臓ホモジネートを粗酵素とし,内部標準物質としてβ-アラニンを用いた。酵素反応で生じたハイポタウリンを過酸化水素で酸化してタウリンに変換し,アミノ酸をο-フタルアルデヒドで蛍光誘導体にして,タウリン量を逆相HPLC法で定量した。タウリンの生成量は,ブルーギルで最も高く,ついでニジマスとなり,マダイおよびヒラメには極く僅かなタウリンの生成が認められた。
67(3), 553-555 (2001)
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シログチ普通筋トロポミオシンのcDNAクローニングと演繹アミノ酸配列(短報)

落合芳博(東大院農),Kash α Ahmed(茨城大),Md. Nazmul Ahsan,船原大輔,中谷操子,渡部終五(東大院農)

 シログチ普通筋トロポミオシンをコードするcDNAを単離して塩基配列を解析し,アミノ酸配列を演繹した。本分子は他の多くのものと同じく284残基からなり,分子量32,728,等電点4.55と算定された。他動物種αタイプのものとのアミノ酸同一率は94-97%と非常に高かったが,分子内の2箇所において動物種により明確に異なる残基が認められた。本トロポミオシンにおいてもcoiled-coil構造に特徴的な7残基および28残基ごとの非極性アミノ酸の繰り返し構造が認められたが,アミノ酸の種類により出現位置に偏りがあることが示された。
67(3), 556-558 (2001)
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抗マグロパルブアルブミンモノクローナル抗体の作製(短報)

川瀬しのぶ,潮 秀樹,大島敏明,山中英明,福田頴穂(東水大)

 ミナミマグロ普通筋より,水溶性タンパク質を抽出した後,TCA法によってパルブアルブミン(PA)画分を得た。本画分をBALB/cマウスに免疫後,脾細胞を採取してミエローマ細胞と融合した。ELISAおよびウエスタンブロッティングによってスクリーニングを行ったところ,約4000株のハイブリドーマのうち,7株の陽性ハイブリドーマが得られた。特にクローンBE5はコイPAとマグロPAを識別する抗体を,クローンEG8は各種脊椎動物PAのCa2+結合部位以外の共通領域を認識する抗体を産生しているものと考えられた。
67(3), 559-561 (2001)
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