水産政策委員会からのお知らせ


平成31年度日本水産学会水産政策委員会ミニシンポジウム「「水産政策の改革について」の意義と問題点」
「『水産政策の改革』に関する日本水産学会の意見」へのご指摘と対応について
「水産政策の改革」に関する日本水産学会の意見
平成29年度日本水産学会水産政策委員会シンポジウム「水産資源管理の国際協力−開発途上国にとって有効な水産資源管理アプローチと日本の技術、知見の活用−」
海の恵みと食料安全保障を考える産学国際シンポジウム〜海外から見た日本の水産資源管理の評価と今後のあり方〜(H26.3.7)
震災復興に向けた臨時勉強会のお知らせ
「連続シンポジウム・ワーキンググループ」に不参加決定
採集・分析機器提供のお願い
東日本水産業復興対策緊急シンポジウムの開催について
日本水産学会の今後の活動に対する意見募集
理事会・水産政策委員会「我が国におけるIQ/ITQ制度の可能性」(H21.3.31)
マリン・エコラベル認証について
本水産学会特別シンポジウム「生態系サービスと水産」
海洋基本計画(原案)に対する意見
海洋基本計画(原案)に対する意見募集のお知らせ
海洋基本計画策定への水産学からの提言を提出
水産政策委員会の新設について
海洋基本法制定記念大会での政策委員会委員長挨拶の内容ならびに海洋基本法に関する意見の募集


水産政策委員会ミニシンポジウム

「「水産政策の改革について」の意義と問題点」

主 催:日本水産学会水産政策委員会
日 時:2018年3月26日(火) 13:00〜17:00
場 所:東京海洋大学白鷹館1階講義室
コンビーナー:片山知史(東北大院農)・中田 薫(水産機構)

1. 趣旨説明:中田 薫(水産機構) 13:00
2. 話題提供
セッション1 漁業の成長産業化に向けた水産資源管理座長 片山知史(東北大院農)
・新たな資源管理システムの構築(資源評価・資源管理)について西田 宏(水産機構)13:10
・新たな資源管理システムの構築(漁業管理制度)について櫻本和美(東京海洋大)13:40
セッション2 水産物の流通構造座長 大石太郎(福岡工業大)
・漁業者の所得向上に資する流通構造の改革石原広恵(東京大)14:10
(休憩 14:40-14:50)
セッション3 漁業の成長産業化と漁業者の所得向上に向けた担い手の確保や投資の充実のための環境整備
 座長 八木信行(東京大)
・生産性の向上に資する漁業許可制度の見直し(遠洋・沖合漁業の漁業許可制度)について
 二平 章(茨城大)15:00
・生産性の向上に資する漁業許可制度の見直し(養殖・沿岸漁業の海面利用制度)について
 工藤貴史(東京海洋大)15:30
3. 総合討論座長 片山知史(東北大院農)・中田 薫(水産機構)
    コメント1多田 稔 (近畿大)16:00
    コメント2八木信行 (東京大)16:15
    意見交換 16:30
4. 閉会 17:00

開催趣旨
 漁業生産の減少と就業者の高齢化が続く中で、水産資源の適切な管理と漁業者の所得向上への取り組みはこれからの水産業に必要不可欠な事柄である。2018年6月に発表された水産庁の「水産政策の改革について」は、これまでの資源管理方策や漁業制度の考え方と仕組みを大幅に変更するものとなっている。発表後種々の議論があったが、2018年12月8日に臨時国会において改正漁業法が可決成立した。
 日本水産学会水産政策委員会は、本改革案の法制化にあたり、水産業と浜の活性化にとって実りあるものとなることを期待し、また検討すべき課題を整理するために意見書を発表した(「水産政策の改革」に関する日本水産学会の意見、2018年12月1日)。本ミニシンポジウムにおいては、更に本改革案の理解を深め、その内容の意義と問題点を検討する。


「『水産政策の改革』に関する日本水産学会の意見」へのご指摘と対応について

公益社団法人日本水産学会
会長 佐藤秀一
平成30年12月4日

 意見書のHP掲載後に、日本水産学会会員から、次のようなご指摘をいただいた。
5ページ、下から4行目、「定置網のような知事許可漁業」について、現行法において定置網は、定置漁業権として漁業権漁業に位置付けられており、知事許可漁業ではない。
10ページ、6行目、
「大企業の養殖業への参入」について、
「改革」では、新規参入を「大」企業に限定して推進しようとしているわけではない。
これらについて以下のように考え、対応した。
対応
5ページ、下から4行目、「定置網のような知事許可漁業」
原文において、この部分は、沖合漁業と沿岸漁業の間で競合する漁獲対象についての調整システムの必要を、定置網を例示して指摘したものであるが、知事許可漁業は漁業法の中に別途位置づけられており、その中に定置漁業権による定置網は含まれていない。不適切な例示であることを認めて、以下の様に修正した。
修正前「定置網のような知事許可漁業」
修正後「定置網のような漁業権漁業や知事許可漁業」
10ページ、6行目、「大企業の養殖業への参入」について、
原文作成の議論の段階では、改革が、現在の養殖業に比べて経営基盤の安定した経営規模の大きな企業の参入を促そうとしているものとして、「大企業」と表現した。原文の意図は、参入する企業がどのようなものであれ、その企業の経営方針と地域の目指す活性化の方向性の一致の必要性の指摘である。そのような内容のある議論に期待して、ご指摘の趣旨を紹介したうえで、原文を修正しない。


平成29年度日本水産学会水産政策委員会シンポジウム

日 時: 平成29年3月26日 10:00−17:30
場 所: 東京海洋大学品川キャンパス
テーマ: 水産資源管理の国際協力−開発途上国にとって有効な水産資源管理アプローチと日本の技術、知見の活用−
企画責任者: 八木信行(東大院農)
参加費: 無料
*日本水産学会会員以外の方も無料で参加いただけますので、周知・勧誘をお願いいたします。
開催の趣旨
 開発途上国では一人当たりの水産物の消費量が増加し、自国の水産資源を持続的に利用する対策を講じる必要性が高まっている。我が国はこれまで、島嶼国、アフリカ地域等の開発途上国に対して水産資源管理や沿岸漁業振興に係る技術協力に取り組んできた。途上国の小規模で多様な沿岸漁業の形態は日本漁業のそれと共通点があり、日本の水産資源管理や沿岸漁業振興へのアプローチが途上国でも有効であると考えられる。本シンポジウムでは、これまでの我が国が実施してきた技術協力の事例を紹介しながら、開発途上国にとって効果的な水産資源管理や沿岸漁業振興方法とは何か、日本での水産資源管理の取り組みや経験を活かした開発途上国の水産資源管理アプローチ等について議論し、今後の途上国への支援に繋げることを目的とする。

プログラム
開会の挨拶 10:00−10:05
  水産政策委員会委員長 八木信行(東大院農)

1. JICAによる水産資源管理に関する国際協力
  座長 堀美菜 (高知大)
(1) 開発途上国における水産資源管理の現状と課題 -チュニジアにおける違法漁業対策とバヌアツにおける統合的沿岸資源管理を事例として- 杉山俊士 (JICA) 10:05−10:50
(2) セネガルの漁民組織とバリューチェーンを活用した資源管理 加納篤(JICA)10:50−11:15
(3) JICAの水産資源管理分野の協力の特徴と課題 -東カリブ小島嶼地域のFADを活用した漁業管理などを踏まえて- 三国成晃(JICA)11:15−11:50
 
2. 海外漁業協力財団による沿岸漁業振興に関する国際協力
  座長 綿貫尚彦(OAFIC)
(1) PNGにおけるコミュニティベースでの沿岸漁業振興協力 堀之内康宏(OFCF) 13:00−13:30
(2) ソロモン諸島におけるナマコ資源管理を通じた地域振興 山田朋秀(OFCF) 13:30−14:00
 
3. 日本の水産資源管理手法と開発途上国での管理アプローチ
  座長 杉山俊士(JICA)
(1) 日本型共同管理アプローチ 牧野光琢(水産機構) 14:00−14:30
(2) エリアケイパビリティーアプローチによる貧困対策と資源管理能力の向上 石川智士(地球研) 14:30−15:00
休憩 15:00−15:15
(3) 途上国の漁業と漁村社会研究  堀美菜(高知大) 15:15−15:45
 
4. マーケットを念頭に置いた途上国の水産開発
(1) マーケットの視点を取り入れた水産資源管理 綿貫尚彦(OAFIC) 15:45−16:15
(2) 途上国を念頭に置いた水産物エコラベルの構築 八木信行(東大) 16:15−16:45
 
5. 総合討論 16:45−17:25
  座長 八木信行(東大院農)
  開発途上国にとって有効な水産資源管理アプローチと日本の技術、知見の活用
  −カンボジア水産局 Lieng Sopha 氏を交えて−
 
6. 閉会の挨拶 17:25−17:30
  三国成晃(JICA)

問い合わせ先:東京大学大学院農学生命科学研究科 八木信行 03-5841-5599
yagi@fs.a.u-tokyo.ac.jp


平成23年3月22日

震災復興に向けた臨時勉強会のお知らせ

 このたびの東日本大震災の復興に向けた勉強会を、平成23年3月29日、東京海洋大学において行います。
参加自由です。漁業・養殖業・沿岸社会の復興に向けて、有効と思われる情報をお持ちの方、復興に向けた提言をお持ちの方は、ご参集願います。
 なお、本件については、会長ならびに平成23年度春季大会委員長の同意を得て開催することを申し添えます。

日本水産学会政策委員会委員長

プログラム等のスケジュールは調整中ですが、概ね以下の内容になるものと思われます。

日時  平成23年3月29日 午後1時
場所  東京海洋大学品川キャンパス白鷹館2階多目的スペース1
内容
1. 海から見た被災地の現状
   緊急援助に直ちに向かった長崎丸のレポート
   被害を受けた港湾施設・漁業施設の映像もあるものと思われます。
2. 考えられる復興プロセスと予想される問題
  どなたか行政職として復興プロセスの構築・遂行に経験のある方にお願いする予定です。
3. 漁協の現状
   復興過程で重要なキーとなる漁協の機能がどの程度回復しているのか
    全漁連関係のどなたかに報告していただく予定です。
4. 養殖行の復興
   現状・今後の復興プロセス(養殖施設・資材の供給・種苗の確保)
   どなたか、増養殖分野の専門家の先生に今後展開される問題についての予想をお話しいただけませんか。
5. 水産物の放射性物質汚染
   過去の事例・考えられる今後の推移
6. その他(フリートーク・提言)
   この部分は未定です。自薦・他薦を含めて、有効な情報の提供をお願いします。


「連続シンポジウム・ワーキンググループ」に不参加決定

このたび、日本水産学会政策委員会は、日本学術会議 土木工学・建築月委員会を主体とする「東日本大震災の総合対応に関する学協会連絡協議会」が主催する「連続シンポジウム」に参加しないことを決定しました。
不参加の理由は以下の通りです。

平成 23 年 9 月 14 日

日本学術会議 土木工学・建築学委員会
東日本大震災の総合対抗に関する連絡会
「連続シンポジウム」取りまとめ担当殿

「ワーキンググループ」不参加の理由

今回の地震・津波及びそれに引き続く原発事故は、広く国民に工学技術およびそれを専門とする研究者に対する不信感を招きました。関連学界全体としては、関連分野の研究が内包する問題点を、真摯に反省することが求められています。

連続シンポジウムのテーマ(案)を見ると、こうした分析をテーマにするものは皆無であり、それらの反省が明示的に含まれない形で、防災や復興が語られようとしています。こうした態度は、災害をも研究に利用しようとするものと、国民一般から受け取られかねません。これらは、テーマの例示であって最終的な内容は、シンポジウム企画委員会で作られるべきものかもしれませんが、それぞれのシンポジウムは切り離されており、おそらく、他学会が行うシンポジウムの内容に強くかかわることは実質的にできないでしょう。こうした中で、農学関係者にも、1回のシンポジウムが割り振られています。水産関係に関しては、「小規模水産業から大規模水産業への移行」のようなテーマが例示されています。例示にすぎないにしても、災害受けて現に苦しんでいる人々に対して、災害の拡大に少なからず関与した学会が言うべき言葉ではないでしょう。水産業の適正な営業規模は、水産業者が考えればよいことであって、水産学の中で議論すべきことです。このような「連続シンポジウム」に加わることは、我々日本水産学会として、国民一般からその良識を問われかねません。

以上の理由で、シンポジウムには加わりません。

日本水産学会政策委員会
委員長 黒倉寿


採集・分析機器提供のお願い

あたたかいご支援をいただきましてありがとうございました。


日本水産学会の今後の活動に対する意見募集

水産政策委員会
委員長 黒倉 寿

日本水産学会では、新公益法人への移行に向けて、定款、組織、活動内容の見直しを行っています。このたび、(社)日本水産学会の新公益法人制度への移行に関する報告書・第一次案として見直しの結果をホームぺージ上に公開しました。

第一次案の中には、第8章として「公益法人への移行後の学会活動上の課題」が含まれています。これは、学会の各委員会・支部会等へのアンケートをもとに政策委員会が案として作成したものです。この「課題案」をふくめて、第一次案に対する意見(今後の水産学会の活動に関する意見)を広く会員から募集します。

アンケート依頼文およびアンケート.doc
取りまとめ.pdf
意見集約と説明.xls
(社)日本水産学会の新公益法人制度への移行に関する報告書 − 第一次案

日本水産学会秋季大会の最終日10月3日には、第一次報告書に対する意見の公聴会を行うことが予定されています。公聴会で意見を陳述したい方は、陳述したい意見の概要(800字程度word)を添付資料として添えて、下記メールアドレスまで送ってください。

旅費がないために学会参加が困難な方については、希望すれば旅費(交通費)の支援を考慮します。ただし、旅費の総額には限度がありますので、ご希望に添えない場合もあります。また、陳述希望者が多い場合には、類似の意見を集約して、陳述者をこちらで選ばせていただきます。

公聴会には参加できないが意見があるという方も、下記メールアドレス宛、意見を送ってください。こちらは長さの制限はありません。ただし、その後の意見交換・質問などの必要があるため、匿名での意見の送付はご遠慮ください。締切は10月15日とします。

メール送付先 akrkrh★mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
(★を@に変えて送信してください)
公聴会の予定 日時 平成21年10月3日 10時から12時終了予定
場所 平成21年日本水産学会秋季大会第2会場
   (いわて県民情報交換センター・アイーナ)
今のところ、陳述の時間は15分程度で、5分程度の質疑応答時間を設けることを考えています。


日本水産学会政策委員会では、マリン・エコラベル認証について、第一回の認証が既に決定済みであるという一部報道機関の記事を受けて、マリン・エコラベル・ジャパン事務局に対して、緊急に以下の申し入れを委員長名で行いました。なお、本件につきましては、あらためて理事会に報告し審議する予定です。

平成20年8月25日

(社)大日本水産会事業部
マリン・エコラベル・ジャパン事務局御中
 拝啓、貴会におかれましては日頃より我が国の水産業の健全な発展と水産資源の保護育成にご尽力を賜りありがとうございます。また、このたびは、マリン・エコラベル(MEL)生産段階認証の第一回の認証審査のプロセスに入られたことに深く敬意を表すものであります。

 さて、その認証のプロセスはかなり進んできたものと推察いたしますが、まだ最終決定には至っていないものと認識しています。このような段階において、8月31日の某漁船団の出港式において認証を受けることが決定しているという報道が一部地方誌でなされました。このことは、一般の方に、MELの認証は実質的な審査がなされず、申請すればだれでもが受けることのできる認証であるという印象を与えかねないものです。あるいは、そのような認識で報道に対応した方が実際にいたのかもしれません。しかし、安易な手続きと審査で「誰でも取れる認証」という認識はMELの権威を深く傷つけるものです。そのような、誤解が一般化すれば、MELは社会的な信頼と存在の根拠を失います。世界的に見れば、エコラベルに類するものは、水産以外のものを含めて多数存在し、その信頼性・有効性が現在競われています。我が国の水産人の一人として、MELの認証が、世界的に最も信頼される権威あるものの一つであってもらいたいと願っています。

 今回の認証については、パブリックコメントも寄せられているようです。こうしたコメントは、MELの権威をより高めんがためになされたと考えるべきです。こうした意見に一つ一つ丁寧に答えていくことによって、MELの考え方が普及し、人々の共通認識となり、権威が高まっていくものです。この過程がなければシステムが鍛えられていきません。

 今回の認証に関して、もし、既成事実として認証スケジュールのようなものがあるのならば、それにこだわることなく、時間がかかっても、一つ一つの問題点について議論を尽くし、判定を行っていただきたくことをお願いします。そのことが、将来に向けて認証の具体的なガイドラインを示す結果になると思います。

 資源管理に関して、資源回復計画など国が関与して行われる資源管理政策の枠組み内で漁業がおこなわれているから、妥当な資源管理が行われているという論拠が目立ちます。しかし、そうしたことよりも、漁船別の漁獲割り当てなど、申請団体の自主的管理努力が強調されるべきです。報告書でこうした努力を積極的に評価することは、申請を希望する多くの団体の工夫・努力を促すことになります。現状の報告では、国の言うことに従っていれば認証をもらえるという印象を与え、現場の積極的な努力を引きだせません。

 2006年に漁獲量がABCを大きく上回ったことについて、問題視する意見もあります。このことについて、どのような背景があったのか、どのような考え方に基づいてそれを許したのか、その後どのような対応がなされているのか言及がありません。資源管理を重点に置いて考える集団であれば、そのことに関する議論があったはずであり、その議論の経緯を明らかにし、そのことを認定団体がどのように考えたのかという記録を公開すべきです。

 脱出口つき籠については、せっかくの努力ですから、その効果を定量的に評価し、さらに改善スパイラルを回すような助言をしたらいかがですか。今の書きぶりでは、工夫だけを評価し、有効性の検証手順が抜けています。

 以上、肯定的であれ否定的であれ、現場の改善努力を促すような議論をしっかりして、そのことを、外部にも知らせ、全体的に向上していくような姿勢が大切です。現状では、その努力が不十分であると感じます。大変、お忙しいとは存じますが、よろしく議論を深めていただけるようにお願いいたします。

日本水産学会政策委員会
委員長 黒倉 寿

大日本水産会の中須会長からは、口頭で以下の趣旨の返答を頂きました。
(1) 今回、初めての認証が決定しているとの報道が一部でなされたが、認証は未だ決定事項ではない。内容的に不十分な報告書はいったん差し戻し、完成度を高めた上で時間をかけて審議を尽くし、決定をする考えである。
(2) MELは、完璧なデータが揃っていない限り認証を与えないといった立場はとっていないが、利用できる最善のデータに基づき十分な議論を尽くすことは極めて重要であると考えている。
(3) 認証においては消費者からの信頼が重要である。このような慎重なステップを踏み、このプロセスの透明性を高めることでで、消費者の信頼性を構築したいと考えている。


緊急企画:海洋基本法のもとでの漁業・水産業の在り方を模索する

日本水産学会特別シンポジウム「生態系サービスと水産」

主催 日本水産学会水産政策特別委員会 
共催 日本水産学会漁業懇話会委員会  
   日本水産学会水産利用懇話会委員会
   日本水産学会増殖懇話会委員会  
   日本水産学会環境保全委員会   

趣 旨
 生活レベルの向上と価値観の多様化は、産業や科学に、今までとは違った新しい対応を求めている。従来、産業は生産をになうものであり、生産物の質的向上と量的拡大によって、消費者の必要を満たすことがその使命であったと言えよう。しかし、温暖化問題その他の環境問題に見られるように、今や産業には、環境・生態系・安全や文化的価値の保全になど、人々の安全で快適な生活の維持に積極的に取り組むこともまた、その使命であると考えられるようになっている。このことは、水産業においても同様である。昨年度制定された海洋基本法、またそれを受けて作られた海洋基本計画においても、水産に対する期待は単なる水産物の生産にとどまっていない。海洋を利用する産業として、他の産業に先立って、海洋の多面的な機能の維持保全・持続的な利用に積極的に取り組むことが期待されている。とりわけ、生物の生産、物質の分解・浄化、レジャーを含む文化活動の場の提供、歴史的文化遺産の保全等に関して、海洋が提供している生態系サービスの機能の維持管理にかかわる監視者としての水産業者に対する期待はきわめて大きい。このような期待に応えていくことによって、今後の水産業の健全な発達が可能になるものと考えられるが、国民の水産業に対するこのような期待は、業界内においてはまだ十分に認識されていない。また、水産学の中においても、そのような産業として水産業を支えるべく、基礎的研究を充実させていこうとする動きはまだまだ不十分である。本シンポジウムは、日本水産学会水産政策特別委員会が、水産学会の他の委員会(漁業懇話会委員会、水産利用懇話会委員会、水産増殖懇話会委員会、水産環境保全委員会)に呼びかけて、海洋の生態系サービスの保全にかかわる産業としての水産学の今後の在り方について、漁業、加工流通、増殖、環境保保存の面から、広くその可能性を論じようとするものである。
日 時: 平成20年4月25日(金)13:00〜18:05
場 所: 東京大学農学部3号館4階大会議室
プログラム
13:00趣旨説明黒倉 寿(東大院農)
講演
  座長   松田裕之(横国大院環境)
13:05海洋の生態系サービス古谷 研(東大院農)
13:40水産未利用バイオマス資源の有効利用金庭正樹(中央水研)
14:15魚類養殖の環境インパクトと持続的生産横山 寿(養殖研)
14:50休憩 
  座長   末永芳美(海洋大先端技研セ)
15:00知床世界自然遺産と生態系サービス桜井泰憲(北大院水)・松田裕之(横国大院環境)
15:35生態系サービス保全における漁業管理と環境政策:知床の場合牧野光琢 (中央水研)
16:10生態系サービスを軸とする漁業と市民の未来の共有清野聡子(東大院総合)
16:45生態系保全のための資源経済学的アプローチ有路昌彦(アミタ株式会社)
17:20休憩 
17:30全体討論 
  座長   山川卓(東大院農)
18:00総括會田勝美(水産学会会長)
18:05終了 
18:15懇親会 


海洋基本計画(原案)に対する意見

    日本水産学会 政策委員会委員長 黒倉寿

    平成20年2月25日

はじめに
 先般、総合海洋政策本部事務局より、海洋基本計画(原案)のご提示をいただきました。短期間の間に広く意見を聴取し本提案をとりまとめられた総合海洋政策本部のご尽力に深甚なる敬意を表します。
様々な海洋利用活動が輻輳している中で、海洋を管理する立場からの明確な姿勢を持って、産学官が相互に連携協力し、海洋政策を推進することは極めて重要な課題であるという(原案)のご認識につきましては、代表的な海洋産業の一つである水産業にかかわる学術団体である日本水産学会もまったく同様に現状を認識しており、このような指針が今回「海洋基本計画」として策定されることは大いに歓迎することから海洋基本計画の策定に対して提言をさせていただきました。
 つきましては、平成20年2月4日にございましたパブリックコメントの募集に応じ、海洋基本計画の更なるブラッシュアップに貢献すべく、(原案)に対しまして、日本水産学会水産政策委員会として意見を取りまとめましたので、パブリックコメントとして送付申し上げます。よろしく、御取り計らい願います。

I.総論について
 計画策定の前提となる認識を示した総論の(1)項において、地球科学的、歴史的視点に立って、計画のあるべき方向性を示したこと、とりわけ、「リオ宣言」および「アジェンダ21」によって世界の共通認識となった「持続可能な開発」に言及し、本計画作成の基本的な理念が、環境と調和した持続的な開発にあることを明瞭に示したことを高く評価する。しかしながら、本項は、地球環境に対する海洋のかかわりを強調することにとどまり、食料生産、景観、文化等にかかわる海洋のかかわりに関しては、比較的主張が弱い。こうした人間生活にかかわる海洋の機能、すなわち、生態系サービスを全体として強調することが望ましい。

 こうしたあるべき方向性に対して我が国の海洋政策の推進体制を論じた(2)項においては、従来のわが国の海洋政策が利用の視点のみに立った政策であり、海洋「場」を管理するという視点からの政策がなかったという真摯な反省に立ち、海洋が生態系サービスを含めた多面的な機能をもち、さまざまな介在活動が輻輳する「場」であること、したがって、「場」の持つ容量を考慮して、管理・利用の政策を立案・決定していくことが不可欠であることを述べたことも、水圏生態系の持続的な利用のあり方を考える科学である水産学の立場からも大いに支持できる内容である。しかしながら、誤読を避けるために、場の管理の在り方については、さらに詳細な記述が必要であると考える。すなわち、具体的な政策内容の決定に関しては、行政府がトップダウンで当事者間の資源配分を決定することが最善の策とはならない可能性について留意しなければならない。(原案)においては、第一部5.「海洋の総合管理」12ページ18行から22行に同様の記述がなされている。このような認識は、海洋基本計画の原則的な考え方であるべきであり、総論において明確に述べられるべき内容であるものと考える。たとえば、環境経済学では、共有地においては、当事者同士の交渉により生まれる資源配分が経済的効率上も優れているという、いわゆる「コースの定理」という考え方がある。我が国の水産分野においても、沿岸域の資源利用を巡る利用者間の紛争について、江戸時代から現代に至るまで、当事者間の話し合いで調整がなされている。このようなボトムアップ型の調整により、衡平な解決策が見出されるとともに、当事者同士が約束を遵守するインセンティブが生まれやすくなる利点は頻繁に指摘されている。調整の在り方に関する記述の加筆を望みたい。

(3)項においては、資源利用にかかわる国際的な衡平の実現のために、国際的・先導的貢献を果たすべきことが述べられている。その見識を高く評価するとともに、前項で述べた、我が国の漁業制度のもつ先駆性(ボトムアップ型の調整による衡平の達成)と経験を生かす形で、世界に貢献すべきことを強調することを提案する。

 目標1においては、我が国が海洋に関する全人類的課題の解決に積極的貢献をなすべきことが述べられている。この目標もまた妥当なものと評価できるが、その理由として、我が国の技術的・経済的優位性のみをあげているのは不十分である。海洋の適正な管理・利用は、科学技術・経済のみによって達成されるものではなく、文化・思想的な相互理解を前提として制度設計がなされるものであることを考えるならば、我が国が高度に海面を利用してきたという歴史的・文化的蓄積も極めて重要な要素であり、海面の利用特に漁業等における経験の蓄積についてもここに記述されるべきものと考える。

 目標2においては、海洋資源や空間利用に向けた基礎づくりをすべきことが述べられている。ここに述べられたように制度的な整備が必要であることは間違いない.しかし、開発に伴う環境保全対策や他産業への影響等も考慮すると、開発のための直接のコストに加えて、これらのコストをどのように負担するかを制度整備の中に含めて考慮していかなくてはならないことを明記すべきである。

 目標3においては、国民生活の安全・安心の実現のために、海運の安全の確保の必要が述べられている。確かに、海運は国民生活・経済活動を支える重要な機能を持っている。しかしながら、その反面、バラスト水や船底付着生物による生物多様性の撹乱や、環境汚染の原因にもなっている。海運に限らず、陸上運送、航空をふくめて、人や物の移動に伴う環境負荷・環境撹乱の問題は、現代・未来社会の重要な課題であり、反面、工学・生物学・経済学の英知を結集してその解決にあたることによって、新たなビジネスチャンスも生まれる。安心・安全の国民生活に関しては、産業の発達に伴う負の影響の解決に貢献することも重要であり、目標の事例として取り上げるべきものと考える。

II.第1部「海洋に関する施策についての基本的な方針」について
 「3.科学的知見の充実」において、人文・社会科学も含めて多岐にわたる研究領域の集積の必要性が述べられたことについて、その見識の高さを評価するとともに、総論・目標2においてコストの問題に言及することと呼応する形で、「環境経済学・資源経済学等の人文・社会科学」のように具体的な内容を例示することによって、より明確に研究の方向性を示すことを提案する。
 すでに述べたように、「5.海洋の総合管理」の項において、海洋利用が複数の利用者による立体的な利用であることに言及し、当事者間の話し合いによる調整に必要に言及したことは、極めて高く評価できる。さらに、これにかかわる記述を総論にも加えて、その必要をより強調することを期待する。

III.「第2部 海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策」について
 「1.(1)水産資源の保存管理」において、生物の多様性と生物生産の維持管理に関して、「里海」の考え方の具現化が必要であることが述べられている。この考え方には全面的に賛成できるが、「里海」は「里山」に対応する造語であり、一般にはまだ定着していない言葉であることから、「地域社会が共有財産として、海の環境・生態系を保全し利用していくという「里海」の考え方」のように、より説明的・具体的に記載することが望ましい。
 「2.(1)生物多様性確保等のための取組」において、藻場・干潟・サンゴ礁の重要性が述べられ、保護区の充実が述べられているが、海洋環境および生態系の連続性を考えると、こうしたパッチ上の保全策に加えて、それ以外の海域においても適切な保全策が講じられることに必要性についても言及する必要がある。
「2.(2)環境負荷低減のための取り組み」において、開発に伴う海洋環境、生物多様性への影響への配慮が記されたことを高く評価するが、ここに記された技術的な解決に加えて、「場」の容量の視点から、陸上産業や生活に対して、過度の集中に対する警告を発していくことの重要性についてもこの項で言及されることが望ましい。
 「3.(2)ア 水産資源」に述べられている増殖、企業化に加えて、それらの前提として資源経済学的研究の充実の必要をのべる必要がある。
 「4.(4)海洋輸送の質の向上」の項に、タンカー座礁等による油汚染対策を加える必要がある。
 「6.(1)海洋調査の着実な実施」の項では、「海洋調査計画の調整、調査結果の共有及び海洋調査船や観測機器の共同利用」に関して、「大学、地方公共団体、民間企業等の協力が得られるよう努める」ことが謳われている。しかし、海洋調査そのものの実施については、「政府機関等」すなわち、国の関連機関等の役割に言及されているのみであり、地方公共団体等の役割は不明確である。従来、我が国周辺の沿岸・沖合域において、海洋環境・水産生物に関する最も詳細で密度の高い調査を継続的に行い資料を蓄積してきたのは、各地の都道府県水産試験場等である。しかしながら近年は、地方の財政難や燃油高騰のため、そのような継続的な調査の測点数が減らされ調査規模が縮小される等、我が国周辺海域の海洋調査の継続にとってきわめて憂慮される事態が出現しつつある。したがってこの項では、「海洋調査の着実な実施」のために、地方公共団体等の役割を具体的に明記し、水産試験場等の調査研究の充実と各機関の協力関係の構築の必要性に言及することが望ましい。
 また同様に、「6.(3)研究基盤の整備」の「ア 船舶・設備等の研究基盤の充実」の項や「2.(3)海洋環境保全のための継続的な調査・研究の推進」の項においても、「国、独立行政法人等」「政府機関等」だけでなく、大学や地方公共団体等についても言及されることが望ましい。
 「7.(1)基礎研究の推進」の項に、大学等の研究機関に加えて、水産試験場等の調査によるデーターの充実を加えることが望まれる。
 「11.(3)ア水産資源」において、途上国における水産業の開発、振興、資源管理に関する国際協力の必要性を記述したことを、我が国の海洋関係における国際貢献の評価を高めるという視点から強く支持するとともに、水産無償協力の充実とより具体的に記述することを提案する。

おわりに
 当会といたしましても、関係者の円滑な調整を側面から支援する意味で、海洋が有する漁業資源的な価値だけでなく、生態系サービスの価値などにも注目しながら、これらの評価に関する研究なども活性化させたいと考えております。今後とも、海洋基本計画の目標達成に向けて協力を行っていく所存であります。当会が参加可能なプロジェクト等がありましたら、是非お声をおかけいただけますようお願い申し上げます。


海洋基本計画(原案)に対する意見募集のお知らせ

内閣官房総合海洋政策本部事務局より海洋基本計画(原案)に対する意見(パブリックコメント)が募集されています。(締切 平成20年2月25日15時まで

海洋基本計画の原案(PDF)

詳細につきましては、首相官邸HP上にあります、総合海洋政策本部の「海洋基本計画(原案)に対する意見の募集について(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/index.html)」を御参照下さい。

【問合せ先】
内閣官房総合海洋政策本部事務局意見募集担当
〒106-0032 東京都港区六本木1-4-30六本木25森ビル2階
Tel:03-5575-1532  Mail:i.kaiyougoiken@cas.go.jp


海洋基本計画策定への水産学からの提言を提出

水産政策委員会委員長 黒倉 寿

日本水産学会は平成19年12月13日に総合海洋政策本部宛てに「海洋基本計画策定への水産学からの提言」を提出しました。その全文を掲載します。

海洋基本計画策定への水産学からの提言 全文


水産政策委員会の新設について

 第5回理事会(9月25日に函館にて開催)の理事会において,特別委員会として水産政策委員会の新設が認められました。
 これまで本会は,水産や海洋の政策全般について,行政や社会に対して意見を述べることを殆どしてきませんでした。しかし,社会への貢献を考えるに,今後は学会として積極的に様々な提言をすべき時代になってきたものと思われます。そこで,水産政策委員会を新設し,これに対応していくこととしました。
 なお,この委員会は当面の間は特別委員会として活動するものの,その後必要があれば常置委員会としたいと考えております。また,すでに現在,本委員会に対しては,海洋基本計画に関する本会としての提言案の取り纏めを諮問しております。

この委員会の委員長および委員は以下のとおりです。
担当理事:岡本純一郎
委 員 長:黒倉 寿 (東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
委  員:有路昌彦 (アミタ株式会社持続可能経済研究所主任研究員,京都大学大学院地球環境学舎特任講師)
 石原英司 (日本水産学会理事)
 岡本純一郎(日本水産学会理事)
 清野聡子 (東京大学大学院総合文化研究科助教)
 古谷 研 (東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
 松里寿彦 (日本水産学会理事)
 松田裕之 (横浜国立大学環境情報研究院教授)
 八木信行 (水産庁)
 山川 卓 (東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)
 矢持 進 (日本水産学会理事)


海洋基本法制定記念大会での政策委員会委員長挨拶の内容
ならびに海洋基本法に関する意見の募集

 平成19年10月2日,海洋基本法制定記念大会が開催され,黒倉寿委員長が日本水産学会を代表して挨拶をされました。(挨拶の内容(PDF)
 また,挨拶の脚注にもありますように,学会としての意見を集約するため,海洋基本法に対する意見を広く会員に求めます。ご意見を本学会事務局(fishsci@d1.dion.ne.jp)までお寄せ下さい。なお,締め切りは平成19年度10月末日とします。


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