Fisheries Science 掲載報文要旨

インド・ベンガル湾のSundarbanエスチャリー生態系における構造と栄養段階動態

Sachinandan Dutta, Kunal Chakraborty(カルカッタ大),
Sugata Hazra(インド国立海洋情報サービスセンター,インド)

 インド・ベンガル湾のSundarbanエスチャリーにおける漁業に対する栄養段階構造のモデルを,Ecopathを用いて解析した。平均栄養段階は2.716であり,栄養転換効率は,中型底魚の0.424から中型浮魚の0.961の範囲であった。デトライタスと植物プランクトンがほとんどの機能群に正の影響を与えることがわかった。一次純生産量に対する平均漁獲量,すなわち生態系の総効率は約0.001であり,この生態系の栄養段階は低く効率は高いことが示された。
(文責 片山知史)

83(2), 145-159 (2017)
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中西部太平洋熱帯域に於けるまき網のFAD操業によるメバチThunnus obesusの国別・地域別漁獲特性

川本太郎(株式会社 極洋),
中前 明((一社)海まき協会)

 中西部太平洋のまき網のメバチ漁獲量は,中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)加盟の17カ国・地域が主体で2012-2014年では全体の86%を占めた。これらを主たる操業海域別に東部・西部・その他の3グループに分け,単位努力当たり漁獲量として1隻当たりとFAD (fish aggregating device)操業1回当たりのメバチ漁獲量を比較すると東部グループが西部グループよりいずれも高い傾向にあった。回帰分析によりFAD操業1回あたりのメバチ漁獲量として,東部で7.1t,西部では2.7tとなり,東部グループが高いのはメバチ混獲が多い東部海域でFAD操業を増加させた事に起因すると考えられた。

83(2), 161-170 (2017)
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然別湖に固有に生息するオショロコマSalvelinus malma miyabeiを対象とした保全策としての遊漁

芳山 拓(北大院水),坪井潤一(水産機構中央水研),
松石 隆(北大院水)

 本研究では然別湖の固有種ミヤベイワナSalvelinus malma miyabeiを対象とした遊漁について,保全との両立に向けた管理方策の有効性を検討した。遊漁解禁に合わせて実施した標識放流の結果,2014年6月のミヤベイワナ資源尾数は105,300尾であり,高い水準であると推定された。また,遊漁による減耗は資源量の0.1%以下と推定され,過去8年間の資源動向に減少傾向はみられなかった。さらに,遊漁者数と釣獲尾数を把握するシステムが確立されている事から,現在の管理方策は,ミヤベイワナの遊漁と保全を両立しうるものであると考えられた。

83(2), 171-180 (2017)
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CFDを用いた矩形V型オッターボードの流体力学的特性に関する研究

Qingchang Xu, Liuyi Huang, Fenfang Zhao,
Xinxin Wang, Yanli Tang(中国海洋大),
Zhenlin Liang(中国海洋大・山東大),
Rong Wan(中国海洋大・青島海洋科学/技術国家実験室),
Peng Sun, Changdong Liu(中国海洋大,中国)

 矩形V型オッターボードの流体力学的性能を二種の数値シミュレーション解析手法により評価した。最大揚力係数と最大揚抗比の算定にはCFXを用いたほうが良く,流場の推定にはFLUENTの方が適していた。実物大のオッターボードの流体力学的性能についてCFXを用いた数値シミュレーションを用いて調べたところ,オッターボードのアスペクト比は0.49,上反角が17°のときにその性能が向上することが示唆された。数値シミュレーション技術はオッターボードの性能評価と設計最適化を行うのに強力なツールとなり得る。
(文責 高木 力)

83(2), 181-190 (2017)
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フグ毒投与によるトラフグ人工種苗の被食回避能の向上

阪倉良孝,高谷智裕,中安純一(長大院水環),
山崎英樹(水産機構瀬水研),
崎山一孝(水産機構日水研)

 トラフグ稚魚に対するフグ毒(TTX)の生態学的機能を探ることを目的とし,TTX投与が被食に与える影響を調べた。TTXを0, 7, 14MU/(g飼料)となるよう調整し,無毒人工種苗(体長4.1±0.4cm)に10日間給餌した。TTX給餌による毒の蓄積が確認されたが,生残・成長に影響を与えなかった。各給餌区の稚魚を100尾ずつ同時に天然水域を模した実験池(2,650m2)に捕食者とともに放流し,放流5日後の生残を比較したところ,0MU区(32%)よりTTX給餌区(62-74%)が有意に高かった。

83(2), 191-197 (2017)
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陸奥湾におけるイカナゴ属仔魚の摂餌,栄養状態と生残

南條暢聡,髙津哲也,伊村一雄(北大院水),
伊藤欣吾(青森水総研),
竹谷裕平(青森水総研,北大院水),
高橋豊美(北大院水)

 1999-2001年2-4月に陸奥湾で採集されたイカナゴ属仔魚は,主に水深10-30m層に分布し,主にかいあし類ノープリウスを捕食し,体長12mmを超える大型仔魚はOithona similisと尾虫類も捕食していた。パス解析の結果,水深35m層と5m層の海水密度差が大きいほど環境中のノープリウスの豊度は低く,体長6mmと10mmの仔魚の体重は軽かった。1999年には,鉛直混合と栄養塩の供給が妨げられた結果,ノープリウスの生産が妨げられ,イカナゴは加入に失敗したものと推定された。一方,餌豊度が高かった2001年と2000年には,高水温だった2001年の方が成長が速く,生残率が高かったものと考えられた。

83(2), 199-214 (2017)
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飼育下におけるマコガレイ稚魚の摂食と成長に及ぼす水温の影響

日下部和志(広大院生物圏科),秦 正樹(香川県庁),
小路 淳(広大院生物圏科),
堀 正和(水産機構瀬水研),
冨山 毅(広大院生物圏科)

 マコガレイ稚魚にとっての適水温を明らかにするため,瀬戸内海産の親魚を由来とした体長40-54mmのマコガレイ種苗を用いて8-26℃の6水温試験区で飼育を行った。飼育は集団で飼育する方法と,個体別に隔離した状態で飼育する方法を用いた。どちらの飼育方法でも20℃で最も成長量が大きかった。個体別飼育では個体ごとの摂食量や転換効率の情報も得られ,いずれも20℃で他の水温区より高かった。以上から,瀬戸内海におけるマコガレイ稚魚の適水温が20℃付近であることが明らかになった。

83(2), 215-219 (2017)
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飼育条件下における大型海藻類と底生動物に対するエゾバフンウニの摂食生態

梅津裕也(東大大気海洋研),
鬼塚年弘(水産機構北水研),
河村知彦,渡邊良朗(東大大気海洋研)

 エゾバフンウニ(殻径3-60mm)の摂餌生態を明らかにするため,2種の大型海藻(ナガコンブ,クシベニヒバ)と4タイプの底生動物(キタアメリカフジツボ,シロガイ,アオゴカイ,針金で固定したアオゴカイ)を餌料とした給餌実験を行った。その結果,稚ウニから成体に至るまで,コンブ属褐藻類とアオゴカイに対して高い選択性が認められた。アオゴカイなど動物性餌料の転換効率は高く,小型のウニに対しては海藻類と比べて日間成長量が高かったことから,動物性餌料は天然環境下においても重要な餌料源となっていると考えられる。

83(2), 221-233 (2017)
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広島湾のマガキ養殖筏周辺におけるクロダイの移動パターン

津行篤士,海野徹也(広大院生物圏科)

 クロダイによるマガキ稚貝への食害に対策を講じるためには,カキ筏周辺における本種の移動パターンを知る必要がある。超音波発信器を装着したクロダイ7個体のうち,6個体はマガキ養殖漁場内を回遊し,計65日の追跡日数のうち,55日はカキ筏内にて位置が特定された。クロダイの日間移動距離は1km未満で,最外郭行動圏の面積は0.11-1.14km2と小規模であった。カキ筏におけるクロダイの遊泳深度はマガキ垂下連の設置深度と一致した。マガキ養殖場周辺におけるクロダイの移動パターンは,カキ筏に強く依存していることが示唆された。

83(2), 235-244 (2017)
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被食リスク低減へ向けたサクラマス放流魚体サイズの検討

宮本幸太(水産機構中央水研・北大院農),
荒木仁志(北大院農)

 サケ科魚類間での被食リスクと体サイズとの関係を調べるため,被食者としてサクラマス10個体,捕食者としてイワナ2個体を水槽に収容し,24時間の捕食実験を行った。実験設定は,尾叉長をもとにサクラマスで4区分,イワナで3区分に選別した供試魚群を用いて,両者それぞれの区分の総当たりとした。実験結果から,捕食リスクは,被食者と捕食者の相対体サイズに依存しており,被食者の相対体サイズが捕食者の40%以上で低く,30%以下で高くなると考えられた。

83(2), 245-250 (2017)
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スピノーザトゲガエルの熱ショックタンパク質90遺伝子はストレス応答性と免疫応答性をもつ

Shu Miao-An, Tu Dan-Dan, Zhang Pan, Long Chen,
Gu Wen-Bin, Zhou Zhong-Kai(浙江大,中国)

 熱ショックタンパク質HSP90は生物種を超えてよく保存されている分子シャペロンの一種であり,細胞のストレス応答で重要な役割を担っている。本研究では,スピノーザトゲガエルのHSP90のcDNAクローニングと発現解析を行った。配列解析の結果,得られたcDNAはHSP90βサブタイプをコードしていることが分かった。また,調べた全ての組織で発現しており,肝臓,腎臓,皮膚での発現は熱ショックによって増加すること,肝臓と腎臓での発現は病原体への感染によっても増加することが分かった。これらの結果は,スピノーザトゲガエルのHSP90が熱ストレス応答や免疫応答に関わることを示唆している。
(文責 大久保範聡)

83(2), 251-258 (2017)
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オニテナガエビMacrobrachium rosenbergii postlarvaeのシェルター色嗜好性

川村軍蔵,Annita Seok Kian Yong, Teoh Chui Fen,
Leon Seng Lim(サバ大海洋研,マレーシア),
Teodora Bagarinao(AQD, SEAFDEC,フィリピン)

 オニテナガエビMacrobrachium rosenbergiiの飼育池や水槽にシェルターを入れて生産効率を高めている。本研究ではpostlarvae(PL)のシェルター色嗜好性を水槽で調べた。4つの水槽にそれぞれ200匹のPLを収容し,水槽内の異なる2つの色のシェルター(黒と濃緑,黒と薄緑,黒と青,濃緑と薄緑,濃緑と青,薄緑と青の6組)の内と壁に接触静止しているPLの数をThurstone's law of comparative judgmentで解析した。平均z-scoreは黒シェルターで有意に高く最も好まれた。シェルター色嗜好性は視覚行動であるが,シェルターへの接触刺激が闘争行動を抑制することを実証した。オニテナガエビPLの飼育に黒シェルターが推薦される。

83(2), 259-264 (2017)
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Clarias batrachusにおける単純反復配列(SSRs)の単離,同定および,個体群調査への応用

Shreya Srivastava, Basdeo Kushwaha(国立魚類遺伝子資源局),
Jyoti Prakash(AMITY大),
Manmohan Pandey, Suyash Agarwal, Ravindra Kumar(国立魚類遺伝子資源局),
N. S. Nagpure(水産教育研究所)・
Mahender Singh, Paramananda Das(淡水養殖研究所),
Chaitanya Joshi (Anad農科大),
Joy Krushna Jena(国立魚類遺伝子資源局,インド)

 インド等に生息するナマズ,マグールClarias batrachusの集団遺伝学的な構造を理解するため,単純反復配列(SSRs)マーカーを利用して,マグールの3地域集団を調査した。集団間の平均ヘテロ接合度の実測値および推測値はそれぞれ0.652-0.688, 0.864-0.873であった。NJ法系統樹により3つの地域集団は,Lucknow集団のみのクラスターとBhubaneswar集団およびKolkata集団を含むクラスターの2つに分離された。以上,マグールの地域集団間には著しい多様性が存在することが明らかとなった。
(文責 吉崎悟朗)

83(2), 265-272 (2017)
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Kumamoto oysterシカメガキにおけるhsp70遺伝子の単離および発現

永田大生,鮫島 守(熊本水研セ),
内川 拓,長船奈津美,北野 健(熊大院自然科学)

 本研究では,シカメガキCrassostrea sikameahsp70遺伝子について,様々な条件におけるmRNA発現量の変化を解析した。シカメガキhsp70 mRNAの発現量は高温処理により種々の組織で顕著に増大した。20-22℃および10-12℃で飼育した個体を37℃で1時間処理したところ,前者は処理終了時点でmRNA発現量が最大となったのに対し,後者は処理後3時間で最大となった。これらの個体を42℃で1時間処理したときの生残率はそれぞれ62.5%および100%であった。また,20-22℃で飼育した個体を37℃および40℃で1時間処理した場合,その後42℃で1時間処理してもほとんどの個体が生き残った。

83(2), 273-281 (2017)
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孵化場のサケ稚魚に寄生する鞭毛虫Ichthyobodo salmonisの定量解析

水野伸也(道さけます内水試),
浦和茂彦(水産機構北水研),
宮本真人,畑山 誠,小出展久(道さけます内水試),
上田 宏(北大フィールド科セ)

 サケ孵化場では,稚魚に鞭毛虫Ichthyobodo salmonisが寄生し,被害が発生する。本研究は,原因虫リボゾームRNA遺伝子(rDNA)の定量PCR系を開発し,稚魚への寄生状況を把握することを目的とした。本系は,1.0-1.0×108 rDNA copy/μLの範囲で高い再現性を有し,測定できた。rDNAコピー数と虫体数の間には正の相関があり,調査した87箇所の孵化場のうち23箇所で寄生がみられた。以上の結果から,本系がサケ稚魚のI. salmonis寄生状況を把握するために有用であることが示された。

83(2), 283-290 (2017)
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サケ発眼卵放流群が浮上期に至るまでの生残に河床環境が与える影響

飯田真也(水産機構日水研),
今井 智(水産機構瀬水研),
片山知史(東北大院農)

 サケの発眼卵放流に適した環境を検討するため,細粒土砂の割合,フレードル指数(FI),動水勾配,水深,流速を測定した河床へ,バイバートボックスを用いて発眼卵を埋設し,浮上期に至る生残を確かめた。生残率の平均は,2013年では92.7%(57.2-100%, N=19),2014年では71.5%(6.4-100%, N=23)だった。生残について,FIおよび流速と有意な正の相関,細粒土砂の割合および水深と有意な負の相関が認められた一方,動水勾配とは関連がなかった。生残率を高めるには,透水性(FI)が高く,細粒土砂の侵入を妨げる浅い河床を選択する重要性が示された。

83(2), 291-300 (2017)
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シロザケ卵アレルゲン(Onc k 5)とIgE交差反応性を示すボラ卵中の卵黄タンパク質

李 卓志,清水 裕,佐伯宏樹(北大院水)

 シロザケ卵の主要アレルゲン,β′-コンポーネント(βC)に対するウサギIgG(a-β)を用いて,ボラ卵中のアレルゲンタンパク質の性状を検討した。ボラ卵中にはa-βと反応する16kDaと30kDaのβCが見いだされ,これらはビテロジェニンAと同B由来の6種類のアイソフォームを含んでいた。そして,ボラβCのすべてのアイソフォームは,シロザケ卵アレルギー患者血清とシロザケβC間の特異IgE反応を阻害した。これらの結果は,ボラ卵が,シロザケ卵との間でアレルゲン交差性を有し,アレルギー原因水産物となる可能性を示唆している。

83(2), 301-308 (2017)
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肝臓RNA/DNA比は低栄養状態におけるスッポン幼生の成長の指標となる

Fangshuo Ji,Quansen Xie,Haiyan Liu,
Yujuan Li,Zhencai Yang(河北師範大,中国)

 低タンパク質状態をモニターする指標であるRNA/DNA比の有用性を調べるために,35, 40および45%のタンパク質含有飼料でスッポン幼生を90日間飼育し,継時的に肝臓のRNA/DNA比を測定した。肝RNA/DNA比と成長速度との間には正の相関が認められ,タンパク質含量によってそれぞれ異なる指数曲線に回帰された。以上のことから,肝RNA/DNA比は,スッポン幼生の成長を評価するための迅速かつ高感度な指標であると考えられた。
(文責 潮 秀樹)

83(2), 309-315 (2017)
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マイクロウェーブを用いた酵素加水分解処理がニジマスOncorhynchus mykiss加工残滓の機能性および抗酸化性に及ぼす影響

Elizabeth Nguyen, Owen Jones, Yuan H. Brad Kim,
Fernanda San Martin-Gonzalez, Andrea M. Liceaga(Purdue大,米国)

 マイクロウェーブを用いた酵素加水分解処理がニジマス加工残滓の機能性および抗酸化性に及ぼす影響について検討した。ニジマスの加工残滓をアルカラーゼを混合し,マイクロウェーブ(50-55℃, 1200W, 20%の出力)あるいは通常の方法(50℃のウォーターバス)で,一定時間加水分解した。同一の条件下において,加水分解の程度は,通常法に比較してマイクロウェーブを用いた方が高かった。また,乳化活性においてはマイクロウェーブを用いた加水分解物が,通常法のものより高かった。その他の機能性もマイクロウェーブ処理した加水分解物の方が高かったことから,マイクロウェーブ処理は加水分解物を生産するうえで,有用な方法と言える。
(文責 大迫一史)

83(2), 317-331 (2017)
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