第51回海中海底工学フォーラムプログラム

日 時 2013年4月19日(金)
第51回海中海底工学フォーラム:
研究会:13時〜17時
懇談会:17時〜19時
場 所 東京大学生産技術研究所An棟2Fコンベンションホール「ハリコット」
〒153-8505 目黒区駒場4-6-1 電話:03-5452-6487
地 図 http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/access/access.html参照
参加費 ワークショップおよび研究会:無料
懇談会(郵便振替振込み):3000円(30才未満および70才以上無料):
振込先:郵便振替:口座番号00150-8-354229、口座名:海中海底工学フォーラム
主 催 海中海底工学フォーラム運営委員会
共 催 東京大学生産技術研究所(生研研究集会)
協 賛 日本船舶海洋工学会、海洋調査技術学会、海洋音響学会
(公社)土木学会*、(公社)日本水産学会、IEEE/OES日本支部、
MTS日本支部, 東京大学海洋アライアンス
*「土木学会認定CPDプログラム」

1)挨拶
13時00分-13時10分
九州工業大学 浦  環
 
2)魚のエラからセシウムが排出される
13時10分-13時50分
東京大学大学院農学生命科学研究科 金子 豊二
[概要]海水魚はエラの塩類細胞から体内に過剰となるNa+とCl-を排出することで、血液の浸透圧を海水よりも低く保っている。我々の研究グループは塩類細胞がNa+とCl-に加え、K+も排出することを明らかにした。さらに、生体内でK+と似た挙動を示すことが知られているセシウム(Cs+)についても、塩類細胞に備わるK+排出経路を介してエラから排出されることが示された。放射性セシウムの生物学的半減期は淡水魚に比べ海水魚で短いことが、過去の報告から知られている。これには、塩類細胞のK+ (Cs+)排出機構が関与すると考えられる。今後、魚体内におけるK+ やCs+の動態をより深く理解することで、除染の効率を高める技術の開発につながるものと期待される。
 
3)南海トラフの巨大地震の大きさとその影響について
13時50分-14時20分
東京大学地震研究所 平田  直
[講演概要]2011年東北地方太平洋沖地震(マグニチュード(M)=9.0)では、東北日本の下に沈み込む太平洋プレートの約500年分の動きによる弾性エネルギーが解放された。観測史上知られていない超巨大地震であった。一方、西南日本の太平洋側ではフィリピン海プレートが沈み込み、M8を超える巨大地震が100年から200年間隔で繰返し発生している。昨年内閣府が発表した南海トラフ沿いの地震被害想定では、M9.0-9.1の地震が仮定された。この地震規模はこれまで南海トラフで観測されたどの地震より大きいが、このような超巨大地震を仮定する科学的な意味と、その地震による揺れ・津波、それによる被害と、地震・津波への備えについて議論する。
 
4)我が国周辺諸国の大陸棚延長申請
14時20分-14時50分
内閣官房 吉田  剛
[講演概要]昨年末、中国及び韓国は、九州薩摩半島沖から沖縄本島北方沖永良部島沖までの沖縄トラフを南東の限界とする大陸棚の延長を、大陸棚限界委員会に申請しました。大陸棚とは海底及びその下の天然資源の探査・開発に関して主権的権利等を有すると国連海洋法条約で規定される海域のことで、領海基線から200海里まで、もしくは、地形が一定条件を満たす場合には条約に基づき設置される大陸棚限界委員会から勧告を得ることで200海里を越えて延長可能であるとされています。東シナ海は、中韓と日本との距離が400海里未満であり、合意に基づく境界画定が必要な海域ですが、今回、中韓は、日本の同意を得ずに中間線を大きく越えて申請を行いました。大陸棚限界委員会では審査には関係国の同意が必要と手続規則で定めており、我が国は既に同意しない旨を口上書で示しているため、中韓の申請は結局審査されないこととなります。本講演では、中韓がこのような申請を行った経緯と、中韓が主張している延長大陸棚の地理的位置について紹介します。
 
5)深海のダイオウイカ 世界初撮影に至るまで
15時10分-15時40分
NHKエンタープライズ 小山 靖弘
[講演概要]伝説の怪物として語られてきたダイオウイカ。最大記録18mという世界最大のイカですが、深海で生きた姿を見た者は誰もいません。ダイオウイカは中深層に生息するため調査を行いにくい上に、視覚が優れ警戒心が強いことが大きな理由です。2012年夏、小笠原諸島沖の深海にて、NHKと科学者の国際チームが無人カメラと有人潜水艇という2つの方法でダイオウイカの動画撮影に成功しました(NHKスペシャルとして放送)。超高感度カメラや水中生物には見えない照明など、世界で初めて姿を捉えることになった撮影技術とはどんなものだったか。水中ロボット・音響カメラ・バイオロギングなども用いて試行錯誤を続けた10年間の撮影戦略と比較しながら、理学(生物学・海洋学)と工学とテレビ撮影の接点例を紹介します。
 
6)食物連鎖網は可視化できるのか 〜アミノ酸の安定同位体比でみる生物と生物のつながり〜
15時40分-16時10分
海洋研究開発機構 力石 嘉人
[講演概要]生態系ピラミッドにおける生物の位置(これを「栄養段階」という)を知ることは、生物の食性や生態系構造を評価することだけでなく、重金属などの濃縮係数、人間活動が生態系へ与えている影響などを知るうえでも必須の情報である。しかしそれを正確に求めることは、実は簡単なことではない。例えばカニを例にあげると、彼らは海藻も貝も魚も何でも食べる。それ故,彼らが生態系ピラミッドのなかで、「平均」として、どこに位置しているのかを知ることは、一年中張り付いて観察をしていてもなかなかわからない。さらに、現場に行って観察することが困難な深海生物や、過去に絶滅してしまった生物においては、その手がかりすら得られないケースも多い。では、どのように求めることができるのだろうか?講演では、その1つの解として、最近開発された、栄養段階を正確に数値化する手法「アミノ酸の窒素同位体比を用いた栄養段階推定法」の原理と、応用研究の結果を紹介する。
 
7) 白鳥と蓮の伊豆沼の自然環境保護に効力を発揮するソーナー新技術開発
16時10分-16時40分
東京大学生産技術研究所 浅田 昭
[講演概要]宮城県栗原市と登米市にまたがる伊豆沼・内沼面積1,455haはラムサール条約指定登録湿地で、夏に沼一面に咲き乱れる蓮の花のスケールは日本最大級といわれ観光船から間近に見ることができる。また、冬にはガンやカモ、ハクチョウなどの渡り鳥が多数飛来する日本最大級の渡り鳥の越冬地である。しかし近年、水質汚染が進み伊豆沼は日本でワースト1位、2位となっている。伊豆沼・内沼の沈水植物は,クロモやホザキノフサモなどが確認されているが、水質悪化に伴いクロモはほぼ絶滅し、人工移植を行い再生活動が行われている。 水質環境の劣化の一つには、蓮の大増殖が起因している。蓮は底泥を好み根を生やし、自身の腐葉土が沼をさらに覆い環境を悪化させる。人工的にレンコンを掘り起こすことは容易では無い。一方、毎年4000羽を超えるオオハクチョウが冬に飛来し、沼地のレンコンを好んで食している。オオハクチョウは首を1m程度水中に潜らせ、沼底のレンコンを食べるが首の長さより深いものは採ることができない。オオハクチョウは大量のレンコンを食べるので蓮の繁殖を抑制する働きをしている。これら水中の定量的観測手法の研究開発は伊豆沼の自然環境や生物環境保護の観点から以前から望まれていた。浅田研究室は宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団に協力しソーナー技術の研究開発を進め、柔らかいソフトマッド層厚の音響計測、底泥下のレンコンの音響分布計測、オオハクチョウがレンコンを食べる際に開けた穴跡の分布形状計測、レンコンの発芽の計測、沈水植物の自動識別、マッピング計測、人工移植したクロモのザリガニによる食害の音響観察技術など伊豆沼の自然保護管理に欠かせないソーナー計測技術を開発してきた。
 
8)スミスカルデラ自律型ロボット3匹同時展開
16時40分-17時00分
九州工業大学 浦  環
[講演概要]深海底の熱水鉱床は鉱物資源が豊富に賦存すると期待され、その効率的な発見と詳細観測のため、自律型海中ロボット(AUV)等を用いた調査が活発化しています。ロボットは支援船から展開され、海洋底のマッピングや海水の化学成分の計測など、有望な鉱床発見のためのタスクをこなし、予定された時間に浮上・揚収されます。これまでは、一度に展開されるのはロボット1台でしたが、観測効率の向上、シップタイムの有効活用そしてタスク分散によるロボット小型化(大型母船を必要としない)を目指して、タイプの異なるAUVを複数台同時展開するオペレーションシステムを開発し、2012年10月、AUV3台(航行型2台:「AE2000a」, 「AE2000f」、ホバリング型1台:「TUNA-SAND」)を八丈島南方のスミス海丘カルデラにて同時展開することに世界で初めて成功しました。「AE2000a」と「AE2000f」とは、カルデラ内で過去に活動し現在は活動を停止している熱水地帯と推定されるマウンド状の地形を発見しました。講演ではロボット3匹同時展開および熱水マウンド発見に至るまでをご紹介します。
 
懇談会:17時00分-19時00分
 
申し込み先:東京大学生産技術研究所海中工学国際研究センター    杉松治美
Tel:03-5452-6487
Fax:03-5452-6488
E-mail:harumis@iis.u-tokyo.ac.jp
申し込み期限:4月13日(金)までにお申し込みください