第49回海中海底工学フォーラム
プログラム

日 時  2012年4月20日(金)
第49回海中海底工学フォーラム:
研究会:13時〜17時
懇談会:17時〜19時
場 所  東京大学生産技術研究所An棟2Fコンベンションホール「ハリコット」
〒153-8505 目黒区駒場4-6-1 電話:03-5452-6487
地 図  http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/access/access.html参照
参加費  ワークショップおよび研究会:無料
懇談会(郵便振替振込み):3000円(30才未満および70才以上無料):
振込先:郵便振替:口座番号00150-8-354229、口座名:海中海底工学フォーラム
主 催  海中海底工学フォーラム運営委員会
共 催  (財)生産技術研究奨励会
協 賛  日本船舶海洋工学会、海洋調査技術学会、海洋音響学会
(社)土木学会*、(社)日本水産学会、IEEE/OES日本支部、
MTS日本支部, 東京大学海洋アライアンス
*「土木学会認定CPDプログラム」

1)挨拶

13時00分-13時10分
東京大学生産技術研究所 浦  環

2)海底下深部生命圏の探究と地球生命工学の実践による持続的炭素循環システムの創出にむけて

13時10分-13時50分
海洋研究開発機構 稲垣 史生

[概要]過去10年間の科学海洋掘削による海底下生命圏の実態に関する一連の研究は、主に海洋表層における基礎生産に依存する従属栄養型の海底下微生物生態系の存在や機能を明らかにしてきた。それらの代謝活動の蓄積は、大陸沿岸の炭化水素資源の形成プロセスに重要な役割を果たしている。現在、超高空間分解能二次イオン質量分析器(NanoSIMS)等を用いた単一細胞レベルの同位体地球化学・生物地球化学的研究やシングルセルジェノミクスによる分子生物学的研究により、生態系を構成する単一細胞の生理・代謝機能や遺伝学的特性が明らかにされつつある。今後の科学海洋掘削や地球科学―生命科学融合研究において、海底下微生物生態系の持つ潜在的機能の詳細な理解および地球生命工学的な利活用研究の展開は、自然界および人工的な持続的炭素循環システムの発見・創出に繋がる大きな可能性を秘めている。

3)日本海溝海底地震津波観測網プロジェクト
―大規模リアルタイム観測網が海底に、でもIPは行けない―

13時50分-14時20分
防災科学技術研究所 金沢 敏彦

[講演概要]東京大学地震研究所では、それまでの紐状配置のケーブル式観測網を脱却して、M8クラスの地震の震源域に40観測点規模を面的に展開できるケーブル式観測システムを開発した。IP技術を利用することで、装置の小型化と低価格化を実現して、2010年に4観測点の小規模システムを日本海粟島から敷設。現在も観測は順調に継続している。東北地方太平洋沖地震M9は、現行の津波や地震の即時的な情報には正確さが欠けていることを誰の目にも明らかにした。海底における直上観測のリアルタイム化のため、房総沖から北海道沖およびアウターライズに展開する総ケーブル長約5600km、154観測点の海底観測網プロジェクトがたちあがった。平成26年度までに独立行政法人防災科学技術研究所が構築する。

4)新しい学術研究船〜淡青丸は生まれ変わるか

14時20分-15時00分
東京大学大気海洋研究所 沖野 郷子

[講演概要]東北地方太平洋沖地震により、津波による破壊・撹乱を受けた生態系の復元と水産資源への影響、放射性物質の広がりとこれにもとづく海洋の物理・化学・生化学および生態学的過程の解明、地震のメカニズムや海底の地殻変動の解明などの多くの研究課題が生じました。これらの新しい研究課題に取り組むため、補正予算による新しい学術研究船の建造が決まり、現在詳細設計が進んでいます。2013年夏には、長い間沿岸海洋研究の柱として活躍してきた淡青丸(1982年建造)にかわり、新しい船が日本近海のさまざまな調査に乗り出すことになります。新船建造計画の概要を紹介するとともに、船を有効に使うにはどうしたらよいかを考えたいと思います。

5) MilMilCrest 研究開発計画

15時20分-15時40分
東京大学生産技術研究所 浦  環

[講演概要]地球生命の起源とも目される海底生物は、熱水地帯、ガスハイドレート地帯などの自然界あるいは人工漁礁などの海底の100mx100mをはるかに越える領域に集中的に分布している。これら生物群集は、ROVや深海有人潜水艇によって、ピンポイントあるいはラインワイズに調査されてきたに過ぎない。調査はせいぜい数時間であり、年に数回あるいは数年に一回という低い頻度である。深海のホットスポットの底生生物の生態系の全貌を計測し、生物相および周辺環境を総合的に理解することは、これまで全く出来なかったと言える。「木を見て森を見ず」というのが現状である。海底資源を開発するには、この状態を打破し、「木も見て森も見る」という全体から細部まで、さらには時間軸を持った観測が必要である。海底生物の面的な広がり、さらには熱水チムニーが林立するような場所では三次元的な広がりを四次元的に明らかにすることを第一ステップとし、さらに、そのデータを基に、海底の特定の生物あるいは周辺環境をなす海底土等のサンプリングを行い、詳細な生態系および環境を明らかにすることを第二ステップとする観測システムを研究開発するプロジェクト「MilMilCrest(通称)」を2011年12月から5年計画で立ち上げた。観測作業は複数のAUVによって分担され、少ないShip Timeで多くの項目の観測を可能とさせる。海底面をcm以下の精度と数cmの水平分解能にてmappingを行い、さらにmmオーダーの分解能を持つスチル写真をそれに重ねることにより、地形情報のみならず広域の生態系を明らかにするとともに、サンプリングやドリリングによりミクロなレベルでの情報を取得するシステムを研究開発し、生物多様性と資源量および環境評価へ貢献する。

6)レーザアブレーションプラズマを用いたin situ成分分析

15時40分-16時10分
東京大学生産技術研究所 Blair Thornton

[講演概要]海底鉱物などの物質元素をin-situでリアルタイムに検出することができる新たな元素分析装置を紹介します。本装置で用いるパルスレーザ照射によって生成するプラズマ発光のスペクトル分析(LIBS: Laser-induced breakdown spectroscopy)に基づく計測法は、水中高圧下(30MPa)でも固体物及び液体物の元素分析が可能であることを実証しました。海中ロボットに搭載可能な3000m級のLIBS装置を開発し、ROV、AUV等を用いた広範囲の物質成分分布を効率的にマッピングできる調査手法の確立に向けて研究を進めています。今後、海における環境監視や資源探査を効率的に実施するために活用されることが期待されます。

7)サメの電気受容器をモデルとした新たな海中通信およびセンシングへの試み

16時10分-16時40分
東京大学生産技術研究所 滝口 清昭

[講演概要]塩分のため導電性の高い海中では電流現象である電波は電流が短絡して伝搬せず利用が困難である。一方、電圧現象である準静電界は誘電性および導電性の高い海水中においても比較的広い範囲に分布させることが可能であり、実際に生物界においてもサメ、エイや深海魚ではこうした電界のセンシングが広く行われている。この準静電界を用いることで海中通信や、海中の底生生物や海底鉱物資源を従来の光(カメラ)や音(ソナー)とは異なる新たなセンシング方法が期待される。我々はサメの電気受容器の幾何学的な構造をモデルとしたセンサーを考案し、海中における新たな通信、センシング手法への応用を検討している。

8)海底ケーブル保護工事用トレミー管式ロックダンピングシステム

16時40分-17時00分
(株)関海事工業所 白石 俊樹

[講演概要]浅海域では、海底ケーブルやパイプラインは、船錨や漁具等による損傷を避けるため、海底に埋設される。しかし流れの速い海域や岩盤地帯など、埋設できない場所もある。このような海域でのケーブルやパイプラインの保護には、砕石によるマウンドで覆う工法が適している。弊社は、水深165mまでの海底に敷設された海底高圧電力ケーブルの保護に適用できるトレミー管式ロックダンピングシステムを開発し、韓国内の済州島・珍島間約100kmに敷設された海底電力ケーブル(2条)で、従来のROVでは埋設できない区間(全体で約8km)の保護工事を実施した。本システムは、ダンピングする砕石を積載する大型作業船(DPS機能装備、12,000トン)とトレミー管(内径60cm)およびROVから構成され、ROVおよびトレミー管は、母船の中央部のムーンプールから吊り下げられる。トレミー管の先端に装備されたROVには、位置制御用スラスタ、海底ケーブルの位置計測用センサ、造成中のマウンド形状を計測するセンサを装備している。ロックダンピング前に海底ケーブル位置と海底地形を正確に計測し、ダンピング作業中は、保護対象のケーブル直上にROV位置を維持するため、作業船の位置とROVの位置を制御するようにし、連続的にマウンド(典型的な断面形状は、上辺2m、下辺8m、高さ1.5mの台形)を造成するとともに、リアルタイムでマウンド形状を計測し施工管理を行うようにしている。

懇談会:17時00分-19時00分


申し込み先:  東京大学生産技術研究所海中工学国際研究センター浦研究室 杉松治美
Tel:03-5452-6487
Fax:03-5452-6488
E-mail:harumis@iis.u-tokyo.ac.jp
申し込み期限:  4月13日(金)までにお申し込みください