市場経済のグローバル化に伴い、物流も加速されている。移動される物資には生きた動植物も含まれ、本来の分布域を越えた移動先での繁殖に成功した種類も増えてきている。水産業においても、古くから積極的に国内外を問わず種苗を導入してきた経緯があり、それらが人間の管理下から離れて繁殖し、制御が困難となった事例や種苗に混入または寄生して侵入し、生物生産のみならず生態系にまで悪影響を及ぼした事例も後を絶たない。
東北地方においては、近年、アサリを食害するサキグロタマツメタやマボヤの疾病を引き起こす寄生虫など、外来生物による産業的被害も起きている。さらに、内水面においてもオオクチバス等による漁業や在来生物への悪影響もよく知られている。
これらの外来生物は、指数関数的な増大を辿ることが多く、気付いた時には手遅れだったり、その防除に膨大な費用を要したりする場合が多い。外来生物に関する法整備も進展してきたが、水産生物に関してはまだ不十分であり、今後も東北地方への新たな外来生物の侵入が懸念されている。その被害を未然に押さえるためには、その兆候や特性に関する情報をいち早く把握し、共有することが重要となる。
そこで日本水産学会東北支部としても最新の情報を提供し、その対策を検討していくために今回のミニシンポジウム「外来生物による水産業と生態系への影響」を企画した。 |