日本水産学会誌掲載報文要旨

長崎県壱岐周辺海域における人工魚礁の利用状況とメダイおよびマダイ資源密度に与える人工魚礁の効果

井上誠章,南部亮元,桑原久実(水産機構水工研),
桑本淳二(水産土木セ長崎),
横山 純(長崎県),金岩 稔(三重大院生資)

 沿岸漁業での重要種であるメダイとマダイは壱岐の小型漁船では主に日帰り航海の一本釣り操業により漁獲される。航海中,操業は人工または天然魚礁海域の複数地点で行われる。壱岐周辺の小型漁船の操業記録から,人工魚礁の利用状況を把握するとともに,Delta 型二段階法を応用して両種の資源密度に与える人工魚礁の効果を,各航海の人工魚礁の操業時間割合などから推定した。その結果,メダイの場合,人工魚礁は天然魚礁よりも資源密度の増大効果があり,一方マダイでは両者は同程度の効果を持つと推定された。

日水誌, 84 (6), 1010-1016 (2018)

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銚子漁港に水揚げされたマサバにおける脂質含量の季節変動と生殖腺の発達との関係性

吉満友野,加藤正人,小林正三(千葉水総研セ)

 魚類の脂質含量は,生殖腺の発達と関係があるとされている。マサバの生殖腺の発達は資源量に影響されることが知られている。そこで,2007-2017年に測定したマサバの,脂質含量の季節変動と,脂質含量と生殖腺熟度指数の関係を検討した。脂質含量は,秋冬が多く,大型になるほど多かった。また,資源量の多い2013年級群が加入した2014年以降は,2013年までよりも脂質含量や生殖腺熟度指数が高くなる時期が早くなった。そして,生殖腺熟度指数は,脂質含量が増加してから,7,8か月後に高くなることが確認された。

日水誌, 84 (6), 1017-1024 (2018)

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アカマンボウに含まれるバレニンのアミノ酸自動分析計による定量

大村裕治,木宮 隆,松田 隆,
國吉道子(水産機構中央水研),
前川貴浩,川端康之亮,安達駿悟((株)極洋塩釜研究所),
網谷雄也((株)極洋)

 既報の6M塩酸中110℃で24時間加水分解後,アミノ酸自動分析計による 3-メチルヒスチジン(3-Mehis)定量値をバレニン(Bal)量とする分析法を再検討した。3-Mehis定量値のばらつきが最小となる加水分解時間は 3 時間,3-Mehis/Bal比が安定し両者の間に高い直線的相関が得られるBal濃度は0.05-10μmol/mLでBalからの3-Mehis生成率は89%だった。本法でアカマンボウ筋肉エキスを分析したところヒゲクジラ類を上回る高濃度のBalが含まれることが判明した。

日水誌, 84 (6), 1025-1033 (2018)

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旅行費用法で評価した静岡県興津川におけるアユ釣りのレクリエーション価値

鈴木邦弘,鈴木勇己(静岡水技研)

 静岡県興津川においてアユ釣りをする漁業者・遊漁者数は年間6.5-7.8万人であり,そのうち1割は関東圏から乗用車と有料道路を利用して来訪する県外遊漁者であった。2011-2012年において,地域旅行費用法(ZTCM)によるレクリエーション評価額(便益)は4.78-4.79億円,1人あたりの便益は6,776-7,290円,費用便益比は8.9-9.2,遊漁料等便益比は9.1-9.2と推定され,興津川のアユ釣りに高いレクリエーション価値が確認された。

日水誌, 84 (6), 1034-1043 (2018)

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定置網に入網したクロマグロ小型魚の放流方法と生残率(短報)

秋山清二,泉澤光紀,高田将平(海洋大),
野呂英樹(ホリエイ)

 クロマグロ資源の保全と定置網漁業の操業継続を同時に実現するためには,定置網に入網したクロマグロ小型魚を健全な状態で網外へ放流する技術を開発する必要がある。本研究では,クロマグロ小型魚の放流方法と生残率の関係を明らかにするため,定置網に入網したクロマグロ小型魚を大ダモ方式,水ダモ方式,緊急放流口(ERウィンドー)方式,選別網+ERウィンドー方式の4種類の方法で大型円形生簀に放流した。その結果,生残率は大ダモ方式が0%,水ダモ方式が13%,ERウィンドー方式が88%,選別網+ERウィンドー方式が87%となった。

日水誌, 84 (6), 1044-1046 (2018)

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