髙山 剛(水研セ水工研,海洋大院), 長谷川誠三(水研セ水工研),桜井泰憲(北大院水), 稲田博史,有元貴文(海洋大) |
スルメイカの対光応答特性の把握と,観察手法の構築を目的として,明暗両環境下におけるスルメイカの行動を音響カメラによって水槽内で観察した。明環境下ではスルメイカは離底して遊泳行動をとることが観察された一方,暗環境下では主に着底行動をとり,散発的に壁面に衝突する行動が観察された。このことから,スルメイカは視覚が機能しない状況では空間認識能力を失うことが示唆された。また,明暗の光条件を切換えた際には,スルメイカの行動は,切換後の光条件に対応した遊泳もしくは着底行動へと速やかに変化することが観察された。
藤波裕樹,田中 彰(東海大海洋) |
ドチザメは伊豆半島下田周辺海域において混獲されるが,その生物学的知見は少ない。そこで,下田周辺海域におけるドチザメの年齢・成長・繁殖について調査した。試魚は,1991〜2012 年に採集された雄 113 個体,雌 123 個体である。椎体に形成される輪紋は雄で 3〜15 輪,雌で 2〜18 輪確認された。観察値より求めた von Bertalanffy の成長式は雄:Lt=1329−1079 exp(−0.178 t),雌:Lt=1436−1186 exp(−0.165 t)であった。50% 成熟全長および年齢は雄で 914 mm,5.7 歳,雌で 1083 mm,8.6 歳であった。近年,大型個体の数が減少しているため,継続的な調査の必要が示唆された。
大畑 聡,石井光廣,梶山 誠(千葉水総研セ) |
東京湾内 24 地点で 2006 年から 2010 年に試験曳網を行い,トリガイ稚貝の着底時期と成長を調べた。月別の採集状況と殻長組成から調査海域は大きく北部,南部に大別された。北部海域では,秋に着底した稚貝が初冬以降に採集されたが,夏になると貧酸素水塊のためほとんど見られなくなった。南部海域では春に着底した稚貝が夏季に多く採集されたが,初秋まで殆ど成長せず,これには貧酸素水塊が影響を与えている可能性が考えられた。初冬以降は両海域で稚貝が成長したが,殻長が 60 mm になるまでの期間は北部海域の方が短かった。
山本圭介(水研セ瀬水研,広大院生物圏科), 長澤和也(広大院生物圏科) |
東シナ海と黄海で着底トロール調査を行い,夏季と冬季の底生性エビ類の群集を調べた。底生性エビ類群集は両季ともに 5 クラスター,水温と塩分によって識別された底層水塊は夏季と冬季にそれぞれ 5 クラスターと 4 クラスターに区分された。正準対応分析(CCA)でもエビ類の各クラスターの水平分布は底層水塊との対応関係を示し,黄海冷水系水塊に分布する冷水性群集,黒潮系水塊に分布する黒潮系群集と大陸棚外縁群集,低塩分水塊に分布する低塩性群集,2 つの水塊の混合域に分布する混合群集によって構成されることが明らかになった。
高木秀蔵,清水泰子,草加耕司(岡山水研), 小林志保,藤原建紀(京大院農) |
窒素安定同位体比(δ15N)を用いて,ノリ葉体中の窒素の河川起源の割合を調べた。低塩分の場所のノリの δ15N の値は 7.7±0.1‰ となり,同海域の冬季の河川水の NO3-N の報告値(6.5‰)と近い値を示した。高塩分の場所のノリの δ15N は高く,11.1±0.1‰ であった。高 δ15N の色落ちノリを河口域に移植したところ,色調の回復に伴って δ15N は低下し,移植 7 日後には移植前からその漁場にあったノリの δ15N とほぼ同じ値となった。同海域のノリは河川由来の窒素を取り込んでおり,δ15N を用いて定量化できた。
森岡克司,大西研示,伊藤慶明(高知大農) |
本研究は,養殖ブリ及びカンパチの血合肉の褐変現象の差を明らかにすることを目的とした。ブリでは冷蔵 24 時間で褐変したが,カンパチでは 48 時間でも褐変しなかった。ブリではメト化率はカンパチより速やかに上昇した。冷蔵中の血合肉の pH は,ブリでは約 6.6 で,カンパチでは約 6.9 であった。メト化の進行に及ぼす pH の影響を粗ミオグロビン溶液(pH 6.0〜7.0)で調べたところ,両種とも pH の低下に伴い,メト化が進む傾向であったことから,両種の血合肉の褐変現象の差には,pH の差が関係することが示唆された。
中山奈津子(水研セ瀬水研), 近藤伸一(新潟水海研),畑 直亜(三重水研), 外丸裕司,樽谷賢治,長崎慶三,板倉 茂(水研セ瀬水研) |
Heterocapsa circularisquama に感染するウイルスを含む現場海底泥散布による赤潮抑制の可能性を検討した。天然の H. circularisquama 赤潮海水(8.0×103 細胞/mL)を 500 mL 容の透明ボトルに 400 mL 入れ,様々な条件で底泥を接種後,海水中に吊して 5 試験区の細胞密度変化を比較した。その結果,非滅菌底泥を接種した区で顕著な H. circularisquama 細胞密度の減少とウイルス密度の増加が確認され,底泥中のウイルスによる赤潮抑制の可能性が示唆された。
永井崇裕,中森三智,水野健一郎,高辻英之,若野 真(広島水海技セ) |
低温保存されたむき身かきにおける不快臭の発生原因と対策について検討した。むき身かき浸漬液で菌数の増加が顕著であり,浸漬液への抗生物質の添加で臭気が有意に抑制されたことから,臭気発生への細菌の関与が示唆された。0.5℃,4℃ および 10℃ でむき身かきを保存し,菌数と臭気の変化を比較した結果,0.5℃ では細菌と臭気の増加が大幅に抑制された。むき身かきの不快臭の発生を防ぐためには,0.5℃ での保存が有効であることが示された。