趣旨(案): |
平成23年3月11日(金)14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに誘起された大津波は、東北地方太平洋沿岸域において、防波堤および防潮堤の崩壊、1m以上にも及ぶ地盤沈下、陸上から家屋等の瓦礫、車両、加工場の原材料、大量のオイルの流出などで海洋環境に大きな変化をもたらした。また、東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染や、漁船および漁具、漁港や増養殖施設の破壊などで、沿岸域の基幹産業である漁業・増養殖業、水産加工業に極めて甚大な被害をもたらした。いわゆる歴史的大災害である「東日本大震災」の大きな部分を漁業関連の被害が占めることとなった。
東日本大震災は極めて広範囲に及ぶ被害をもたらしたため、震災直後に被害の全体像を把握しての統一的な取組み方が難しく、これまで、ほとんどの水産科学・海洋科学の研究者は個々に、あるいは東北マリンサイエンス拠点形成事業、水産庁などから立ち上がったプロジェクトの中で、被災状況の調査研究と沿岸漁業の復興に向けた研究調査活動を行ってきた。このような活動の中から多くの調査研究成果が生み出されてきたが、震災から4年半が経過した今、その成果を取りまとめて新たな取組みを統合的に行う段階に差しかかっている。
今回、日本水産学会が被災地の一つである仙台市で学術大会を開催する。上述した活動に携わった研究者の多くが日本水産学会会員であり、また、日本水産学会は東日本大震災の被災地における水産業の復興支援を事業の大きな柱の一つとして活動してきた。そこで、この機に、上述した種々の活動から得られた東日本大震災に関する調査研究成果を集め、近未来における漁業の在り方を議論するシンポジウムを企画した。
学会会員に限らず、漁業者をはじめ、漁業関連団体、国や地方自治体、一般市民が一堂に会し、これまでの調査研究成果を共有するとともに、共にこれからの東北地方太平洋の沿岸域から沖合域における漁業の在り方や、漁業資源の持続的利用を考える機会となることを期待する。 |