第40回海中海底工学フォーラムプログラム

日 時 2007年10月26日(金)
研究会:午前の部:9時〜12時、午後の部:13時30分〜17時20分
    懇親会:17時30分〜19時30分
場 所 東京大学海洋研究所講堂
〒164-0014 中野区南台1-15-1 電話:03-5351-6342
地 図 http://www.ori.u-tokyo.ac.jp/map/index.html 参照
参加費 研究会:無料
懇親会(郵便振替振込み):3000円(30才未満および70才以上無料):
振込先:郵便振替:口座番号00150-8-354229、口座名:海中海底工学フォーラム
主 催 海中海底工学フォーラム運営委員会
共 催 (財)生産技術研究奨励会
協 賛 日本船舶海洋工学会、海洋調査技術学会、海洋音響学会
(社)土木学会*、(社)日本水産学会、IEEE/OES日本支部、
MTS日本支部、21世紀COEプログラム「機械システム・イノベーション」
科学技術振興調整費「アジア水圏観測ロボットシステムの開発戦略」
*「土木学会認定CPDプログラム」

午前の部:第40回海中海底工学フォーラム特別記念パネル
「海洋新時代の研究船・調査船を語る」
9時00分-12時00分
1)挨拶
9時00分-9時10分
東京大学生産技術研究所  浦  環
2)パネルディスカッション「海洋新時代の研究船・調査船を語る」
9時10分-12時00分
総合司会 東京大学海洋研究所 徳山 英一
東京大学生産技術研究所  浦  環
パネラー:海上保安庁海洋情報部;春日茂、東京海洋大学;松山優治、水産総合研究センター;中田薫、海洋研究開発機構;末廣潔、気象庁;北村佳照、石油天然ガス・金属鉱物資源機構;伊藤正
[概要]海洋は地球創世記から存在し、長年に亘り地球を生命惑星に適した環境に変遷・調節してきた。生命そのものも海洋で誕生し、その進化の多くは海洋で育まれたと考えられる。すなわち、海洋は地球生命の存在基盤であり、地球生態系の頂点に位置する人類の存続基盤であると言える。とくに、水産資源、鉱物エネルギー資源、海運など、人類は海洋から多くの恵沢を享受している。反面、海洋は自然災害をもたらす場でもあり、人類の安全を脅かす存在でもある。
 このように人類の生活基盤にとって必要不可欠である海洋との持続的共生を目指し、我が国における海洋政策の指針とすべく、本年7月20日に施行された海洋基本法においては、第三章に基本的施策として、海洋資源の開発及び利用の推進、海洋の安全確保、海洋調査の推進、海洋科学技術に関する研究開発の推進他が挙げられている。これらは、実海域での観測・調査・実験に基づく基礎的研究・開発を通してはじめて達成されるものであり、そのためには実海域の大型研究施設として、観測目的に応じた海洋研究船・調査船が不可欠と思われる。  これまで我が国では、各機関が所轄官庁縦割りで実海域での観測・調査・実験を実施し、おのおのに成果を挙げてきた。しかしながら、海洋との持続的共生パラダイムの新たな創成には、大規模研究開発計画とボトムアップ研究を調和させ、縦割りの枠組みを越えたマクロな視点に立脚した効率性の高いオールジャパン海洋研究船・調査船体制を打ち立てる必要がある。さらに、約450万km2という世界第6位の排他的経済水域を有する我が国がその広大な海域を管理するためには、国際的な視座のもとに海洋研究船・調査船の将来像を考えていかなければならない。
 そこで、実際に研究船・調査船を運行して観測・調査・実験を進めておられる我が国の代表的機関の方にご参集いただき、総合的な海洋観測のためのプラットフォームというマクロな視点から、海洋観測、教育実習、技術者の育成など現状の運航体制とその問題点と課題について検討するとともに、海洋基本法のもと、オールジャパン体制においてどのように海洋研究船・調査船体制を構築し、またその体制の中で各機関が如何なる任務を担当するか、そのために必要とされる船舶像と船舶数などの将来構想などについて議論すべく本海中海底工学フォーラムの第40回記念特別パネルを企画いたしました。

昼食休憩:
12時00分-13時30分
午後の部:一般講演会
13時30分-17時20分
1)挨拶
13時30分-13時40分
東京大学生産技術研究所 浦  環
2)「海に生きる多様な適応戦略を探る」
13時40分-14時20分
東京大学海洋研究所 竹井 祥郎
[講演概要]海は陸上と比較すると極めて安定な環境で、その安定性は溶媒である水のおかげである。水は比熱が大きいため温度変化が少なく、密度が大きいため地球上の生物にかかる重力から解放してくれる。また、地球上に降り注ぐ有害な紫外線を吸収して生物を守っている。このように生命の母なる海は生物にとって棲みやすい環境と思われるが、水の大きな密度は海底に棲む生物に水圧という試練を与え、最も多様な物質を溶かす溶媒であるという性質は高い浸透圧への適応という試練を生物に与えている。本講演では、海洋に生息する多様な生物がどのようにこれらの試練を克服しているかを紹介する。

3) バイオテレメトリーが解くメコンオオナマズの謎
14時20分-15時00分
京都大学大学院情報学研究科 荒井 修亮
[講演概要]メコンオオナマズは、メコン川流域にのみ生息する。全長3m、体重300kgにもなる最大級の淡水魚であり貴重な水産資源である。漁の安全・豊漁を祈願する捕獲儀礼や「諸葛孔明の生まれ変わり」との伝承に加えて、約3000年前の岩壁画にも描かれるなど古来より地域社会の象徴であった。しかし、その生態には多くの謎がある。長大なメコン川流域の極めて限られた場所と時期だけに、産卵を迎えた成魚のみが捕獲される。しかし、産卵後は何処へ回遊するのか、そして不思議なことに未成熟個体が捕獲されることはない。こうした謎を解くために、タイ国水産局の求めに応じて我々は超音波バイオテレメトリーによるメコンオオナマズの追跡プロジェクト(Mekong giant catfish tracking project: MCTP)を開始した。いくつかの興味深い生態は明らかとなったが、全ての謎を解くには未だ道のりは遠い。

4)世界のAUV,ROV,HOVなど深海探査機の開発動向
15時00分-15時30分
(社)日本深海技術協会 高川 真一
[講演概要]日本は1990年に有人潜水艇(HOV=Human Occupation Vehicle)である「しんかい6500」を開発し、以後17年間現役の世界最深艇として世界にそのプレゼンスを示してきている。また1995年には世界最深部であるマリアナ海溝チャレンジャー海淵に遠隔操縦艇(ROV=Remotely Operated Vehicle)「かいこう」を潜航させ、両者を併せて日本をして自他ともに認める世界における深海技術のトップリーダーとなった。しかし「かいこう」完成後すでに12年経っており、深海技術に関して米国に新しい動きが生じつつある。またお隣中国は「しんかい6500」の潜航能力を上回る水深7000mの潜航が可能な有人潜水艇を開発建造中であり、来年には試験潜航に臨みたいとしている。自律型無人機(AUV=Autonomous Underwater Vehicle)においても、潜航深度のみならずその機能において長足の進歩が遂げられつつある。日本として決して安穏としていられる状況ではない。本講演では最近の国際学会における発表や現場視察等を通じて得られた深海探査機の開発動向について論ずる。

5)「かいこう7000 II」〜改造とオペレーション
15時40分-16時00分
(独)海洋研究開発機構 村島 崇
[講演概要]10,000m級無人探査機「かいこう」ビークル漂流事故後、「かいこう7000」を開発し、平成17年度より1年間運用した。この結果、研究者およびオペレーションチームより、作業性、運動性能、および、ペイロード(研究者持込み機器)搭載能力に関して改善要望があった。
このため、漂流したビークルとほぼ同じ大きさの新しいフレームを製作し、ペイロード重量の増加とマニピュレータ2本の搭載を可能とした。マニピュレータは、作業性を向上するため、従来の6軸レート方式に加え、7軸マスタースレーブ方式を追加した。また、機体が大きくなったため、スラスタを改造し、推力も向上した。改造後を「かいこう7000 II」と呼び、平成18年度より運用を開始した。本講演では、「かいこう7000」から「かいこう7000 II」への改造と、試験潜航、調査潜航について報告する。

6)メタンセンサーの開発について
16時00分-16時20分
(財)エンジニアリング振興協会 嘉納 康二
[講演概要]近年、国産の新規クリーンエネルギー資源として、大きく期待されている『メタンハイドレートの資源開発』において、エンジニアリング振興協会では、環境に調和した海洋MH開発の実現を目指して、MH開発時の環境影響をモニタリングするための、既存には無い「ガス漏洩モニタリング」と「地層変形モニタリング」などの要素技術の開発を進めてきた。本講演では、そのうちMH開発に伴う周辺海域へのメタンガス漏洩を早期に検知するために開発を進めている溶存メタンセンサーについて紹介する。改良型METSセンサーについては、既存の市販品と比較して①応答速度の大幅な改良、②誤差要因の一つとして挙げられる「溶存酸素飽和度依存性」の大幅な低減などを行い、メタン漏洩のアラームセンサー(実証機)としての開発はほぼ最終段階にきている。

7)光ファイバセンシング技術による海底ケーブル式地震・津波観測システムの開発
16時20分-16時40分
NTTインフラネット(株) 藤橋 一彦
[講演概要]水深数千mの外洋における地震・津波の早期キャッチを目指して、光ファイバセンシング技術を活用した海底ケーブル式地震・津波観測システムの開発に現在取り組んでいます。開発中のシステムは海底ケーブル式で、センサは加速度計、津波計の2種類であり、その方式は、光ファイバセンシング技術のうちFBG方式です。E・O,O/E変換が無くセンサに給電が不要などにより、従来の電気式と比較してハード構成がシンプルになり、その結果コストダウンが期待できます。本講演では、本システムの開発概要を紹介するとともに、今まで実施してきた各種室内試験と、実環境下でのフィールドトライアルの状況について紹介します。

8)海洋情報の有効利用に向けた課題(講演およびディスカッション)
16時40分-17時20分
東京大学海洋研究所 道田 豊
[講演概要]「海洋の研究,開発,保全などの推進には、さまざまな目的や手段で取得された、あるいは取得されるデータや情報の管理が必要である」。この主張を否定し、またはこれに反対する人はまずいない。しかし、現在がそうであるように、この種の議論が数年に一度くらいの頻度で時折盛り上がりを見せるのは、いまだ「海洋情報管理」が満足できる水準に達しているとは言えないことの証である。少しでもこの課題に携わったことのある人には同意していただけると思うが、海洋情報管理は極めて地道な努力の積み重ねであり、いろいろな意味で成果の見えにくい分野であることは否定できない。しかし、海洋基本法が成立し、我が国が真の海洋立国を目指すことを内外に宣言することとなったこの機会を逃すことなく、海洋に関する活動の基盤を支えるものの一つとして海洋情報管理について本腰を入れるべきである。そのために解決すべき課題を整理し、採るべき施策等についての提案を試みる。

懇親会:
17時30分-19時30分
申し込み先: 東京大学生産技術研究所海中工学研究センター浦研究室 杉松治美
Tel:03-5452-6487 Fax:03-5452-6488  E-mail:harumis@iis.u-tokyo.ac.jp