DNA多型学会シンポジウム
DNAが語る水生生物の進化−発生、系統、生態−

コンビーナー: 猿渡敏郎 東京大学海洋研究所

開催趣旨
 地球上の生命は、約35億年前に海洋にて誕生した。以後、地球の表面積の七割を占める海洋は、生命のゆりかごとして機能し、ありとあらゆる形態と生態を有する生物が生息する場となった。海洋が脊椎動物中最も繁栄した分類群である魚類の生息環境であることからも、生命現象のゆりかごとしての海洋の特性がうかがえる。海洋、そして水界において適応放散を遂げ進化した水生生物は、研究者にとって生物の進化過程や生命現象の研究を行なう上で、好適かつ手強い研究材料となっている。

近年、PCR法の確立と普及に伴い、水生生物を対象とした分子生物学的研究も盛んに行われるようになって来た。特に、形態形質の進化や生態・生活史の進化を論ずる上で、中立的な系統樹を提供する分子系統解析は、これら水生生物の進化に関する研究を行なう上で強力なツールとなりつつある。本シンポジウムは、分子系統解析により得られた系統樹を研究のゴールとするのではなく、分子生物学的手法を用いて得られた様々な情報を土台に、水生生物の系統・進化・生態・生活史に関する研究を行っている研究者に講演を依頼した。そして、各人の研究の出発点から現在抱えている問題点にいたるまで、研究の歴史と成果、そして将来的展望を発表してもらい、今後の水生生物の進化学的、生態学的研究の新たな出発点を構築することを目的とする。本シンポジウムの予定演者は、水産学系研究者に限定されているわけではない。医学系、理学系の方達にも講演をお願いし、了解をいただいている。非常に学際的色彩の濃いシンポジウムである。

開催日時: 12月 1日(水)10:00〜18:00
会  場: 横浜市金沢産業振興センター サービスセンター2F大会議室
シーサイドライン 横浜市金沢産業振興センター前下車
〒236−0004 神奈川県横浜市金沢区福浦1丁目5番地2
TEL:045−782−9700(代表)
FAX:045−781−1136
問い合わせ先: 猿渡敏郎
東京大学 海洋研究所 資源生態分野
〒164-8639 東京都中野区南台1-15-1
電話:03-5351-6500 ダイアルイン、ファックス兼
メール: tsaurwat@ori.u-tokyo.ac.jp
プログラム
各演題発表時間 20分 質疑 10分
10:00〜10:05 開会挨拶
小林敬典(独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所)
10:05〜10:10 趣旨説明
猿渡敏郎(東京大学海洋研究所)
10:10〜10:40 1.アコヤガイ類の系統と適応放散過程の推定
正岡哲治1、小林敬典2
1独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所、2独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所)
10:40〜11:10 2.ミトコンドリア遺伝子間配列を用いた造礁サンゴ種内多型の解析
渡辺俊樹(東京大学海洋研究所)
11:10〜11:40 3.イセエビフィロゾーマ幼生消化管内DNAの塩基配列分析による餌生物同定の試み
張 成年1、鈴木伸明1、村上恵祐2
1独立行政法人水産総合研究センター遠洋水産研究所、2独立行政法人水産総合研究センター栽培漁業部南伊豆センター)
11:40〜12:10 4.ミトコンドリアゲノム分析から探るエビ・カニ類の系統と進化
山内視嗣(東京大学海洋研究所)
12:10〜13:10 休憩
13:10〜13:40 5.ヒラメの身体の左右非対称性を制御している発生機構の特殊性と普遍性
鈴木 徹(東北大学農学研究科)
13:40〜14:10 6.ヤツメウナギ類にみられる異時性と進化
山崎裕治(富山大学理学部)
14:10〜14:40 7.シラウオ科魚類に見られる異時性とその適応的意義
猿渡敏郎1、小林敬典2
1東京大学海洋研究所、2独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所)
14:40〜15:10 8.極端な幼形成熟を示すシラウオ科魚類の多様性と進化
昆 健志(東京大学海洋研究所)
15:10〜15:30 休憩
15:30〜16:00 9.DNAが語る日本の沿岸岩礁性魚類相の歴史:ササノハベラを中心に
馬淵浩司(東京大学海洋研究所)
16:00〜16:30 10.ナンキョクカジカ亜目魚類に見られる南極海への適応機構
岩見哲夫(東京家政学院大学)
16:30〜17:00 11.DNA多型から見たペンギン類の系統と進化:幼形進化の好適なモデル
津田とみ(徳島文理大学人間生活学部)
17:00〜17:30 12.DNA塩基配列を指標としたちりめんじゃこの原料魚種推定
赤崎哲也1、猿渡敏郎2、渡邊良朗2、佐藤宗衛1
1財務省関税中央分析所、2東京大学海洋研究所)
17:30〜18:00総合討論
18:00 閉会挨拶
猿渡敏郎(東京大学海洋研究所)