公益社団法人 日本水産学会

会長 渡 部 終 五


 平成23年(2011年)3月11日,東北地方太平洋沖に発生した大地震によって東日本沿岸を中心に大きな被害が起きてから早,3年以上が経過した。この東日本大震災により水産業も甚大な被害を被ったが,直後から学会会員の多くが独自に復旧・復興支援したとの情報を頂いた。平成22・23年期理事会も素早く対応し,平成23年3月29日に本学会水産政策委員会主催によって「水産業の震災復興に向けた勉強会」が開催された。義捐金募集も始まり,復興に向けた行動計画が同年4月11日に公表された。その後,本学会は多くの活動を行ったが,同年6月4日に「災害復興支援拠点」を東北支部に設置したことが特筆される。平成24・25年期理事会では平成24年(2012年)6月2日に東日本大震災災害復興支援検討委員会(特別委員会)を設置し,平成22・23年期の活動も含めて平成25年(2013年)6月に取りまとめ冊子を本学会から刊行した。さらに,日本学術会議と連携して水産・海洋科学研究連絡協議会を発足させ,水産に関係するより広い分野からの協力体制を構築して震災復興に取り組んだ。しかしながら,先の取りまとめを活かした新たな取組方針は未だ明確でない。その理由は,大震災が水産業に与えた被害があまりにも大きく,また,広域にわたり,地域ごとに状況が異なるからである。一方,復興支援への取組には水産学が真に水産業に役立つ研究を行っているのかといった,水産学の応用学問としての社会的価値も問われている。当初スピード感のあった水産関係の復興も復興景気等による景気上昇で人件費が高騰するなど,種々の問題から,その速度は低下傾向にある。また,福島県の水産業に関しては未だほとんどの魚介類が試験操業の段階で,その漁獲量はごくわずかにとどまっている。水産学に携わる会員がこの復興支援に努力することを平成26・27年度も惜しんではならない。
 一方,失われた10年とも20年ともいわれるバブルショック後の日本の経済の低迷や,円高による日本の産業の空洞化は,水産学に携わる会員にも大きな影響を与えた。国立大学や国立研究所では運営交付金の縛りによる影響を受けた競争的資金獲得の激化,地方自治体の研究機関では研究予算の縮小や人員の減少,民間でも日本経済の低迷による水産学を専攻した学生の受け入れ先が減少した。アベノミクスで日本の経済が復調傾向になってきているようであるが,未だ予断を許さない。さらに,若年層の減少である。本来,組織の活性維持には若年層が継続して加入される必要がある。若い世代の新しい考え方が組織の硬直化を防ぎ,知識の新たな発掘と時代の変化に柔軟に対応した取り組みを可能にする。幸い,本年(2014年)2月には水産学若手の会が発足したが,この新たな芽を会員全体が暖かく見守り,育てる必要がある。
 先述の東日本大震災の発生直前,平成23年(2011年)2月18日付けで日本水産学会は公益社団法人として認可された。それから3年以上経過したが,毎年少しずつ懸案事項を克服して公益法人としての体制は軌道に乗りつつある。本学会は平成13年(2001年)に創立70周年記念国際シンポジウムを開催し,この機会を利用して本学会は70年史を編纂した。本学会は昭和57年(1982年)に50年史を編纂している。50年史がB5版で56ページであるのに対して70年史はA4版で169ページにも達している。後者は50年史の概略と国際シンポジウムを含む70周年記念事業の記事で約30ページを費やしているものの,50周年から70周年までの20年間の水産学の変遷は急速であったことが窺える。本学会は3年後の平成29年(2017年)に創立85周年を迎えるが,これを機会に公益法人化や大震災復興支援などに携わった激動期を含む15年分の水産学の発展と本学会の歴史を取りまとめておく必要があろう。もちろん,過去を振り返っているだけでは進歩がない。水産学の発展を基礎にした水産業への貢献など,人類の福祉に役立つための本学会の将来計画が必要である。平成20年(2008年)に主催した第5回世界水産学会議以来の国際シンポジウムも検討しなければならない。さらに,水産学分野の女性研究者に対する積極的な研究活動支援,水産業に関連した民間や団体との密接な交流,水産業の諸問題に対処するための政府への働きかけも重要である。今後とも会員の皆様のご支援とご協力をお願いします。