Fisheries Science 掲載報文要旨

海産無脊椎動物のステロール(総説)

金澤昭夫(鹿大名誉教授)

 近年,各種機器分析法の進歩によりステロールの分離や構造解析が容易となり,多数の新ステロールが海産無脊椎動物から単離され,その化学構造が解明された。海産無脊椎動物のステロールは複雑な組成を示し,また新奇な構造を有するものが含まれている。一方,甲殻類および軟体動物のなかには水産食品および養殖上重要なものが多い。また甲殻類や軟体動物の一部にはステロール合成能を欠如するので,成長および生残のために食餌性ステロールを要求する。ここでは,海産無脊椎動物のステロールの生合成および栄養要求,組成および構造,生物活性および海洋環境における分布について概説する。
67(6), 997-1007 (2001)

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台湾北東海域におけるキントキダイの生殖

劉 光明(台湾海洋大),洪 國堯,陳 哲聰(高雄海洋工学研)

 1997 年 12 月から 1998 年 11 月に台湾北東海域においてオッタートロールで採集され Tashi 港に水揚げされたキントキダイ Priacanthus macro-acanthus601 個体について成熟と産卵を調べた。卵巣の解剖学的観察,生殖腺熟度指数,卵細胞径頻度分布および卵巣の組織学的観察より,当海域における本種の産卵期は 4 月から 7 月に及び,その盛期は 5〜6 月であることが明らかになった。また本種の平均抱卵数 131, 112±33, 379,成熟最小尾叉長は 18.9 cm であり,それは 3 歳に相当することが明らかとなった。
67(6), 1008-1014 (2001)

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CIS を用いた人工礁の位置選定

曽 振徳,陳 世欽(台湾水試),黄 繼興,劉 春成(台湾海洋大)

 台湾東北部の I-Lan 湾において水深,底質,傾斜,離岸距離および漁港からの距離の 5 項目による GIS を用いて人工礁の評価と位置選定を行った。AHP 解析より 5 項目の重みづけはそれぞれ 0.416, 0.141, 0.331, 0.074 および 0.038 となった。これより人工礁の位置選定でもっとも重要なのは水深であることが判明した。ArcView を用いて地図を作製した。GIS で選定された人工礁の位置は従来の方法で選定された位置と一致した。人工礁の最適位置の選定には GIS および AHP が有効である。
67(6), 1015-1022 (2001)

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瀬戸内海広島湾の 2 つのアカモク個体群の成長と成熟

吉田吾郎,吉川浩二,寺脇利信(瀬戸内海水研)

 瀬戸内海西部の広島湾において,2 つの 1 年生ホンダワラ類アカモク個体群の生態学的調査を行い,その成長・成熟の季節的パターンを比較した。両個体群とも秋季(9-10 月)以降,急速な茎の伸長(10 mm/日)による成長が観察された。湾奥部の大野瀬戸に生育するアカモク個体群の藻体長は 12 月にピークに達した。しかし,湾口部の松ヶ鼻に生育する個体群は冬季も成長を続け,4 月に藻体長がピークに達した。生殖器床の形成は大野瀬戸個体群では 11 月に始まり,卵の放出は 11 月下旬から 1 月にかけてみられた。松ヶ鼻個体群は冬季に生殖器床の形成を開始し,卵の放出は 4-5 月に観察された。
67(6), 1023-1029 (2001)

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水深センサー付き記録型標識によって明らかにされた西部北太平洋におけるサケの鉛直行動

石田行正(北水研),谷野 章(島根大),伴 真俊(さけ・ます資管セ),小倉未基(遠洋水研)

 水深センサー付き記録型標識により,西部北太平洋におけるサケの 23 日間にわたる鉛直行動を明らかにした。サケは明瞭な日周行動を示し,平均遊泳水深は昼間 12.8 m,夜間 4.8 m であった。サケは昼間の 48%,夜間の 85% を 10 m 以浅で,昼間の 30%,夜間の 10% を 10-20 m 層で,昼間の 20%,夜間の 5 % を 20-60 m 層で過ごした。サケは表層にとどまることが多く,40 m 以深に潜ることはまれで,50 m 以深にまで潜ったのは 23 日間で 3 日のみであった。このような日周期性は,摂餌効率を最大化することと関連しているものと思われる。
67(6), 1030-1035 (2001)

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マイワシの感覚器の発達

松岡正信(瀬戸内水研)

 マイワシの感覚器の発達過程を調べた。ふ化直後の仔魚の嗅上皮には 2 種類の感覚細胞が認められた。体長 20 mm 前後に前・後鼻孔および嗅板が形成され始めた。嗅板数は成長に伴って増加した。味蕾は 11.2 mm の仔魚の下鰓弓や咽頭部に初めて認められ,その後口腔に拡がった。ふ化直後の仔魚の体側には 12 対の遊離感丘があり,次第にその数を増した。頭部の感丘は 20 mm 前後から埋没し始め,側線管を形成した。内耳は摂餌開始期までに 5 感覚細胞群と三半規管が分化した。20 mm 頃より小嚢の窪みや壺が形成され,内耳と鰾が細管で連絡した。感覚器の基本構造は体長 32 mm 頃までにほぼ確立し,60-70 mm には成魚と同等になると考えられた。
67(6), 1036-1045 (2001)

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熱帯太平洋におけるエルニーニョによる水温変動に関係したキハダとメバチの時空間分布

呂 學榮,李 國添(台湾海洋大),林 秀玲(桃園高級農工職業学校),廖 正信(台湾海洋大)

 1962〜1997 年に集計した延縄の漁獲量と努力量のデータを用いて,熱帯太平洋におけるキハダとメバチの時空間分布を,エルニーニョによる海水温の変動と関連づけて解析した。両種の釣獲率はエルニーニョまたはラニーニャの年に海面水温が上昇する海域で高かった。逆にラニーニャの年に海面水温が下降する海域,とりわけ東部で釣獲率が低かった。南方振動指数によると,釣獲率の変動はエルニーニョの開始と同時または 3 ヶ月後以内であった。釣獲率の変化の原因としてエルニーニョ期における好適な水塊の置換と漁具効率の変化の 2 つが考えられた。エルニーニョ期にメバチに好適な水塊は,東部の西部分に広がり東部分では圧縮された。これはメバチが東から西に移動したことを示す。ラニーニャ期にキハダは好適水域を北方に拡大した。
67(6), 1046-1052 (2001)

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マアナゴの卵黄形成期における GTH-Iβ, -IIβ サブユニット mRNA 量の変化

梶村真吾,吉浦康壽,鈴木美和(東大院農),宇藤朋子,堀江則行,岡 英夫(いらご研),会田勝美(東大院農)

 飼育環境下でニホンウナギは成熟しないが,マアナゴは第二次卵黄球期まで成熟する。そこで自然状態におけるウナギ目魚類の性成熟過程に関する基礎的知見を得るために,マアナゴの卵黄形成期における GTH-Iβ, -IIβ mRNA 量の変化を調べた。ノーザンブロット解析の結果,GTH-Iβ mRNA 量は周辺仁期で低値を示し,第一次卵黄球期に最高値を示したが,第二次卵黄球期には減少した。一方,GTH-IIβ mRNA は油球期に始めて検出され,その後,卵巣発達と共に急速に増加した。これはウナギ目魚類においても二種類の GTH が卵形成において異なる役割を持つことを示している。
67(6), 1053-1062 (2001)

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東部太平洋熱帯域における大型浮魚類に捕食された魚類の組成

茂木正人,新井真寸見,土屋光太郎(東水大),岡本浩明(遠水研)

 東部太平洋から得られた大型浮魚類 7 種に捕食された魚類の組成を明らかにした。胃内容魚類組成に基づく捕食者間の類似度は,メバチとメカジキ,キハダとメカジキ,キハダとシイラ,およびメバチとニタリの間で高かった。捕食された魚類の遊泳層から推定して,捕食魚の摂餌水深は大きく 3 つに分けられた:1)広水深:キハダ,マカジキ,2)表層:シイラ,3)中層:メバチ,メカジキ,ミズウオ,ニタリ。高度に利用されていた 10 科の魚類のうち,ムネエソ科とシマガツオ科は特に重要と考えられた。大型浮魚類は,異なる捕食水深を持つことや餌となる魚種を変えることで,餌利用における種間の競合を軽減しているものと推定される。
67(6), 1063-1074 (2001)

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フィターゼがヒラメのリン利用率に及ぼす影響

益本俊郎,田村文吾,示野貞夫(高知大農)

 微生物由来のフィターゼが,ヒラメにおける大豆中のリン利用率を向上させるか否かを調べた。フィターゼ添加あるいは前処理した大豆油粕のリンの消化吸収率を調べた結果,これらの値は無添加・無処理の対照区に比べ有意に優れていた。また,濃縮大豆油粕を主なタンパク源とする飼料でヒラメを 50 日間飼育した結果,無機リン無添加でフィターゼを添加した飼料区の成長,リン蓄積率および血漿リン濃度は,無機リン添加飼料区と同等だったが,フィターゼ無添加飼料給与区より有意に優れていた。以上の結果より,本実験で用いた微生物由来のフィターゼは,大豆油粕ならびに濃縮大豆油粕を給与したヒラメのリン利用率を向上させることがわかった。
67(6), 1075-1080 (2001)

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マアナゴ Conger myriaster におけるミトコンドリア DNA および核 DNA の遺伝的変異

石川智士,木村呼郎(東大海洋研),東海 正(東水大),塚本勝巳,西田 睦(東大海洋研)

 マアナゴは東アジアにおける重要な漁業対象種であるが,資源評価や資源管理に必要な集団構造に関する知見は乏しい。そこで,マアナゴの集団構造の解析に有用な遺伝的変異を探索する目的で,日本沿岸の 5 地域より採集した合計 73 個体について,ミトコンドリア(mt)DNA の調節領域を含む部分塩基配列(585 bp)を解析した。加えて,58 個体について,増幅断片長多型(AFLP)分析法によって核 DNA の変異を調べた。mtDNA には 99 箇所に変異が見られ,ほとんど全ての個体の mtDNA は相互に異なっていた。集団内の遺伝的変異率は集団間のそれとほぼ同じであり,地域間に明瞭な遺伝的差異はなかった。AMOVA 解析の結果,地域間に明瞭な遺伝的分化は認められなかった。AFLP 分析においても多数の変異バンドが観察されたが,有意な地理的構造は認められなかった。以上のように,今回分析した個体数レベルでは標本間に有意な差異は検出されなかったが,見出された変異は本種の詳細な集団解析を行う際の重要な遺伝的マーカーであると考えられた。
67(6), 1081-1087 (2001)

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マダイの濃縮大豆タンパク質飼料に対するリジンおよびメチオニンの補足効果

高木修作(愛媛水試),示野貞夫,細川秀毅(高知大農),宇川正治(丸紅飼料)

 濃縮大豆タンパク質(SPC)を主成分とするマダイ飼料へのリジン(Lys)およびメチオニン(Met)の補足効果を,稚魚(11.7 g)および幼魚(178 g)を用いて調べた。稚魚では,無補足区および Lys 補足区では成長や飼料効率は劣り,眼球水晶体白濁率も高かった。飼育成績は Met 補足により改善され,Met・Lys 補足によりさらに向上し,両区では眼球水晶体の白濁もみられなかった。幼魚では,Met・Lys 補足により飼料効率はやや改善したが,アミノ酸補足区の成長は無補足区のそれと同等であり,いずれの区にも眼球水晶体の異常はみられなかった。稚魚の SPC 利用性は Met 補足により改善し,Lys・Met 補足によりさらに向上し,マダイのアミノ酸要求量は魚体サイズや年齢により変化すると推察された。
67(6), 1088-1096 (2001)

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西部北太平洋の北赤道海流域におけるウナギ Anguilla japonica の産卵の時と場所

石川智士(東大海洋研),鈴木邦宏(静岡水試),稲垣 正,渡邊 俊,木村呼郎(東大海洋研),岡村明浩(いらご研),大竹二雄(三重大生資),望岡典隆(九大農),鈴木 譲(東大農),蓮本浩志,大矢真知子,Michael J. Miller(東大海洋研),Tae Won Lee(韓国忠南大),Hans Fricke(独・マックスプランク研),塚本勝巳(東大海洋研)

 1998 年の 6 月と 9 月,ウナギの産卵時期と場所を特定するために北太平洋北赤道海流域において研究船「白鳳丸」と「駿河丸」による調査航海が行われた。この 2 航海で合計 38 個体(全長 10.0-43.2 mm)のウナギ仔魚(レプトケファルス)が 3 つの異なる海域から採集された,24 個体はアラカネ海山とパスファインダー海山の周辺で,5 個体は北緯 13 度,東経 137 度の海域で,9 個体は北緯 17 度,東経 137 度の海域で採集された。採集されたレプトケファルスの体長は 3 つの海域で有意に異なっていた。また,東経 144 度の測線では 1 個体もレプトケファルスは採集されなかった。全体的に西へと流れる北赤道海流の流れとレプトケファルスの採集状況はウナギの産卵が西マリアナ海嶺の海山周辺で行われることを示唆するものである。さらに,採集されたレプトケファルスの産卵日を逆算したところ,新月にウナギが産卵することが支持された。また,耳石の日輪数と体長には高い相関(r=0.966)が認められ,ウナギのレプトケファルスの成長率は約 0.5 mm/日であることが示された。
67(6), 1097-1103 (2001)

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雑種チョウザメ(ベステル F2)の生殖腺の性分化過程

尾本直隆,前林 衛(北電総研),三橋絵吏,吉冨耕司,足立伸次,山内晧平(北大院水)

 チョウザメの生殖腺の性分化過程を組織学的に調べた。孵化後 6 ヵ月以降の個体では,2 型の生殖腺が観察された。将来の卵巣では生殖腺表面の一部に陥入部が見られ,僅かに観察される生殖細胞は陥入部付近に位置していた。一方,将来の精巣では陥入部は認められず,生殖細胞は生殖腺内部に僅かに点在していた。卵巣における生殖細胞の減数分裂への移行は,孵化後 16 ヵ月まで確認できないものの,この陥入部は卵巣薄板構造に発達することから,孵化後 6 ヵ月には生殖腺の卵巣への形態的分化が始まる個体が出現すると推定された。
67(6), 1104-1110 (2001)

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シロギスの産卵に及ぼす水温の影響

堀田公明(海生研),田村 勝(エコニクス),渡辺剛幸,中村幸雄(海生研),足立伸次,山内晧平(北大水)

 シロギスが正常に産卵を行う高温限界および産卵に及ぼす水温の影響を調べた。産卵期のシロギスの飼育水温を 25°C から 28〜33°C に上昇させたところ,28°C を越えると産卵数および正常孵化率が減少したことから,正常産卵の高温限界は28〜29°Cであると考えられた。また,22°C 一定水温区と 28°C 昇温区で産卵数,卵径,産卵時刻を比較したところ,後者は前者に比べ産卵数は多いが卵径は小さく産卵時刻は遅くなることが確認され,28°C では卵径がすでに減少傾向にあることが明らかとなった。
67(6), 1111-1124 (2001)

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水温を変えて飼育したホシガレイの変態期における甲状腺ホルモンの動態

堀田又治(京大院農),有瀧真人(日栽協),田川正朋,田中 克(京大院農)

 ホシガレイ仔稚魚を水温を変えて飼育し,甲状腺ホルモン(T3 および T4)の動態を調べた。各水温とも T4 のピークは変態最盛期に見られたが,ピーク時の T4 濃度は低水温ほど高くなる傾向が認められた。一方,T3 には水温との関係は見られなかった。甲状腺ろ胞の上皮細胞の高さ,およびコロイド中の空胞の数には水温による違いは見られなかった。これはむしろ水温間で甲状腺活性に差がないことを示唆し,低水温で観察された高濃度の T4 は,T4 の消費量が少ないために蓄積されたものである可能性がある。
67(6), 1119-1124 (2001)

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オニテナガエビにおける両眼柄切除の脱皮および卵巣発達に対する影響

奥村卓二,会田勝美(東大農)

 オニテナガエビの両眼柄を脱皮後 2 日目に切除し,脱皮と卵巣発達に及ぼす影響を調べた。眼柄を切除しなかった個体と比べて眼柄を切除した個体では,雌雄とも血中エクジステロイドが早く上昇して脱皮間隔が短くなった。また,眼柄を切除しなかった雌の 51% が卵巣を発達させて産卵したのに対して,切除した雌では 100% であった。これらの結果は,眼柄ホルモンが脱皮と卵巣発達を抑制的に調節していることを示す。しかし,眼柄切除後も脱皮を繰り返す個体がいたことから,眼柄ホルモンの調節がなくても脱皮周期を継続できることが示された。
67(6), 1125-1135 (2001)

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ゴンズイの触鬚における神経線維の分布

坂田陽子,塚原潤三,清原貞夫(鹿大理)

 ゴンズイの触鬚の味蕾は吻側に最も多く,ついで尾側に多く,中間部には少ない。触鬚神経は触鬚の基部から入り,先端にいくにつれ吻側と尾側に多くの神経束を送る。この神経束は表皮下で六角形の神経網を形成する。この神経網は吻側の方が尾側より小さく,先端にいくにつれ小さくなる。吻側と尾側の中間部では神経網は明確でない。神経網より垂直に一対の小束が生じ,それぞれ更に二分する。この二分した小束は各々同一の味蕾の基部両端の何れから味蕾に入り神経叢を形成する。一つの神経網より生じる小束は 20〜50 である。味蕾の周囲に終わる神経線維や上皮中に自由神経終末として終わるものも多数みられた。
67(6), 1136-1144 (2001)

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カツオ缶詰の褐変に対する筋タイプと冷却の影響

具延淑(釜慶大),亨殖(東遠 F & B (株) ),朴徳天,池清日,趙太庸,金明贊,劉乘栽(釜慶大),余奎(釜山情報大),金善奉(釜慶大)

 カツオ缶詰の液汁の褐変に対する筋タイプや冷却条件の影響を調べた。背肉の冷却条件は,非タンパク態窒素と糖によるアミノ―カルボニル反応が主に原因する液汁中の水溶性画分の褐変に影響を及ぼした。腹肉については,脂質の褐変は主に脂質の酸化に原因していた。予備加熱後,背肉と腹肉に分離すること,異なる適正な温度で冷却(背肉は 10°C 以下で 16 時間,腹肉は−15°C 以下で 3 時間)すること,そして腹肉を 20% 以下の低含量で肉詰することがカツオ缶詰の液汁の褐変を防止することになる。
67(6), 1145-1150 (2001)

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チロシナーゼインヒビターを生産する微生物の海洋からの分離と諸性状

今田千秋,杉本由有子,牧村朋子,小林武志,濱田奈保子,渡邉悦生(東水大)

 種々の海域から分離した微生物約 500 株についてチロシナーゼインヒビターの生産性を調べた。その結果,伊豆諸島と相模湾の海底堆積物から分離した 3 株に生産性が認められた。このうち最も高くしかも安定にインヒビターを生産する H1-7 株について分類学的性状を明らかにするとともにインヒビター生産のための培養条件の検討を行った。本菌のコロニーは白から緑色であり,生育が早く電顕で観察した結果,分生子は 1 細胞から成りその分生子形成細胞の形態がボーリングのピン状であることなどの理由から,Trichoderma 属のカビと同定された。本菌は Malt agar や Potato dextrose agar で良好な増殖を示し,また 25-50%(v/v)の海水存在下においてインヒビターを顕著に生産した。
67(6), 1151-1156 (2001)

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岩手県大槌湾における Alexandrium catenella によるホタテガイの毒化

関口勝司(岩手水技セ),緒方武比古(北里大水),加賀新之助(岩手水技セ),吉田 誠(長崎大水),福代康夫(東大アジアセ),児玉正昭(北里大水)

 三陸沿岸では Alexandrium tamarense および A. catenella の 2 種の麻ひ性貝毒原因種が発生するが,後者は本海域における貝の毒化には関与しないと考えられきた。本研究は岩手県大槌湾において冬季に毒化したホタテガイの毒化原因種が A. catenella であることを明らかにし,本海域においても発生時期によっては A. catenella が貝の毒化原因になりうることを示す。
67(6), 1157-1162 (2001)

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固相抽出と高速液体クロマトグラフィを用いたタイ産魚醤油のヒスタミンの定量

Supapun Brillantes, Wararat Samosorn(タイ水産省,魚類監査・品質管理局)

 タイ産魚醤油中のヒスタミンの定量を固相抽出法と HPLC を組合わせて行った。50-1,000 mg/L のヒスタミンを添加した魚醤油にこの方法を適用し,有効性を確認した。試料にメタノールを添加して 1 分間撹拌し,Bond Elut SCX に添加し,0.5 M KH2PO4(pH 6.5):メタノール(1:1)で溶出した。HPLC は o-フタルアルデヒドによるポストカラム法を用い,ヒスタミンを蛍光検出した。ヒスタミンの回収率は 90.5-95.5% で,検出限界は 5 ng であった。市販の 549 魚醤油試料中のヒスタミン含量には大きな幅があったが,200-600 mg/L が多かった。
67(6), 1163-1168 (2001)

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海藻中の水溶性および不溶性食物繊維の胆汁酸塩との結合

王  ,女川 恵,吉江由美子,鈴木 健(東水大)

 食物繊維のもつ各種生理作用の中で,胆汁酸との結合が知られているが,水溶性と不溶性食物繊維についての報告は見られない。乾燥粉砕したスサビノリ,ワカメ,マコンブ,ヒジキを各種胆汁酸塩の水溶液に入れ吸着させた。水溶性および不溶性食物繊維の分析法を応用し,それぞれに結合した胆汁酸量を酵素比色法で測定した。海藻中には不溶性食物繊維量が多かったことから,これらの胆汁酸結合量は水溶性食物繊維に比べ多かった。しかしながら水溶性食物繊維の結合力は不溶性より高いことが示された。コール酸塩の吸着はケノデオキシコール酸塩,デオキシコール酸塩より低かった。また海藻の種類によって結合量が異なることが分かった。
67(6), 1169-1174 (2001)

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霞ヶ浦水系産アユの起源(短報)

Krittikar Kaewsangk,林崎健一,朝日田卓(北里大水),根本隆夫(茨城内水試),井田 齊(北里大水)

 近年陸封集団の存在が確認された霞ヶ浦のアユの起源を明らかにする目的で,霞ヶ浦水系,那珂川,久慈川,琵琶湖,群馬水試孵化場からの計 889 標本を用い 12 遺伝子座のアロザイム分析を行った。多型を示した 5 遺伝子座を用いて他の海産集団のデータもあわせて遺伝的距離を計算し,クラスター分析により比較を行ったところ,霞ヶ浦水系のアユは海産集団に極めて近いことが明らかとなった。この結果は湖外から一時に大量に湖内へ添加された海産アユが陸封化され増殖したという仮説を支持した。
67(6), 1175-1177 (2001)

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鞭毛藻類シストの生存および発芽に及ぼす底生生物の摂食圧について(短報)

一見和彦,門谷 茂(香川大農)

 堆積物食性の底生生物が堆積物を摂食する際には堆積物中の鞭毛藻類シストも同時に摂食しているが,その糞粒中に含まれているシストを分離した結果,形態的な破損は認められず,発芽能力も維持していた。深層に埋没したシストについては,Conveyor belt 型の堆積物食者に摂食された場合,糞粒中に閉じ込められた形で表層に戻り得るが,糞粒の破壊されにくい性質から,再度発芽機会を得るシストは極めて稀であると考えられた。また,表層付近の堆積物を摂食する底生生物が多数生息する場合には,鞭毛藻類シストの発芽数が少なからず減じられている可能性も示唆された。
67(6), 1178-1180 (2001)

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ヨツハモガニの捕食に対するエゾバフンウニ稚仔の被覆行動の効果(短報)

吾妻行雄(東北大院農)

 エゾバフンウニ人工種苗が反口部へ海底物を被覆する行動の,外敵であるヨツハモガニ雄個体による捕食に対する効果を調べた。室内実験により,それぞれボタンとヤマトシジミの貝殻を被覆物として投入した 2 実験区と被覆物を投入しない対照区において,ヨツハモガニの人工種苗の捕食数を経時的に調べた。実験開始 2 時間後まで,種苗は被覆行動によりカニによる捕食を有意に回避した。この間,貝殻を被覆した種苗は 1 個体も捕食されなかった。種苗の被覆行動を応用することにより,野外において種苗の移植直後に蝟集するヨツハモガニの捕食を抑制できる可能性が示された。
67(6), 1181-1183 (2001)

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増殖手段としてのサクラマス稚魚放流の効果(短報)

宮腰靖之,永田光博,竹内勝巳,杉若圭一(道孵化場),北田修一(東水大)

 標識したサクラマスの稚魚を北海道の河川に放流し,翌々年の 1〜6 月,北海道西岸の魚市場において 2 段抽出の市場調査を行い沿岸漁業による回収率を推定した。回収率は 0.22〜0.54% と推定され,放流スモルトと比べて回収率は高くはないものの放流群間の変動は小さかった。種苗養成のコストを考慮すると,サクラマスの稚魚放流は効果的な増殖手段と成り得るものと考えられる。ただし,放流する河川での稚魚の生育環境が良好に保たれることと,遊漁が規制されることが不可欠であろう。
67(6), 1184-1186 (2001)

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魚類における肝システアミンジオキゲナーゼ活性の分布(短報)

後藤孝信,松本拓也(沼津高専),高木修作(愛媛水試)

 魚類肝臓中のタウリン生合成酵素の一つであるシステアミンジオキシゲナーゼ活性の分布を調べた。透析して内因性のタウリンを除いた魚類の肝臓ホモジネートを粗酵素液とし,これにシステアミンと硫化ナトリウムを加えて,35°C でインキュベートした。生成したヒポタウリンとタウリン量をプレラベル OPA-HPLC 法で測定して,アミノ酸の生成量の合計を酵素活性とした。本酵素の活性は,ブルーギルの活性が最も高く,そしてニジマスが最も低かった。しかし,システインスルフィン酸デカルボキシラーゼとは異なり,活性は低いものの広く魚類に分布していた。
67(6), 1187-1189 (2001)

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