サンゴ礁にすむいろとりどりの魚たちが泳ぐ様子を、テレビで見たことがあるかな?海の中には、いろいろな模様や色の生き物がいっぱい。ぼくたちの体の色のひみつをさぐっってみよう。
う〜む。魚の色は、大部分うろこの上にある 「色素胞」という細胞がつくり出しているものなんだよ。 中にはうろこの中に色のあるものも、あるがね。
じゃあ、その細胞が赤や青い色をしているから、 いろいろな模様が色ができるわけ?
まあ、おおざっぱに言えばそういうことになるかな。 色素胞の中には、「色素」という色のもとになる 小さな粒が含まれていて、それが魚の色になる。 赤い色素をたくさん含んでいれば、赤く見えるし、 黒っぽい色をたくさん含んでいれば、黒っぽく見える。
タイは赤い魚だけど、黒、紅、または黄色の色素を もっているんだよ。 他の魚も、こんなふうにいくつかの色のもとをもっている。 突然変異で、うまれつき黒い色素を持たない魚が 時々うまれることがある。 すると魚はぜんぜんちがう色になるんだ。 このオレンジ色のヒラメは、黒い色素をもっていないので、 こんな色になったんだよ。
太刀魚の銀色は、銀色の色素がつくるの? サンゴ礁にいるきれいな青い魚の青も、 あんなきれいな青の色の「もと」があるんだ?
それについては、また少し違う仕組みがある。 コバルトブルーの色を出す色素は、じつはないんじゃ。 あの青い色は、光を反射する結晶のようなものが細胞の中にあって、 それで光を反射して、それが青く見えている。 銀色に光るのも似たような仕組みで、白っぽく反射するから、銀色に見えるんじゃよ。
動植物の色をつくる物質は、おおむね同じ物質が多い。 たとえば、カロテンという物質がある。家庭科で聞いたことがあるかな? にんじんやかぼちゃの色をつくる物質じゃ。同じものが、 海のいきものの色もつくり出しているんじゃよ。
そういえば博士、よくお店で売っているエビって、 生のときは黒っぽいのに、ゆでたり焼いたりすると赤くなるよね。 どうして色が変わるの?
ブラックタイガーなどのえびは、もともと赤の色素をたくさん持っておる。 もっておるんじゃが、赤色を出す物質は体の中のたんぱく質と結びついて、 ちがう物質になっている。さっきの表の「カロテノプロテイン」の一種じゃな。 熱を加えると、たんぱく質とのつながりがとれて、本来の赤い色が出てくるんだね。
加熱前のエビと加熱後のエビ 写真提供/松野隆男
さてエビの話が出たところで、ちょっとクイズじゃ。 ザリガニを飼ったことはあるかね? そのときのことを思い出して、考えてくれたまえ!
写真提供/武田晋一
へえ〜、ザリガニって、自分で赤い色をつくれないの? 食べるえさで体の色が変わってしまうんだね。
これはザリガニに限ったことではないんじゃ。 色をつくる物質のうち、赤から黄色系の色をつくる「カロテノイド」は、 魚は自分でつくることができない。 だから、えさからとりこんでいるんじゃよ。
たとえば、どんなえさが色のもとになっているわけ?
色のもとになるえさは、ざっと次のようになっておる。
他の色は、えさからとりこんだものを、魚が体の中で変化させて違う物質にして、 いろいろな色にしているんんだ。
じゃあ、熱帯魚を飼っているときなんか、 色のもとになるえさをたくさんあげたら、とっても色が良くなるの?
あげればあげるほど良くなるとも限らない。ちょうどいい量というのがあるんじゃ。 しかしながら、えさは体の色に大きく影響するわけじゃから、 養殖で育てる魚や錦鯉などの観賞魚については、いい色を出すために どんなエサがいいのか、研究が進んでおる。 養殖で育てたものは、天然のものに比べるとどうしても色のあざやかさが足りない。 タイやハマチ、サケやアマゴなどについては いい色を出す技術がほぼできあがっているんじゃ。
色揚げをしていないもの
写真提供/岡田 茂 東京大学水産化学研究室
色揚げしたもの
これ、なあに?なにか黒い網がかぶせてあるけど。何か中に飼ってるの?
これは、タイの養殖をしているところだ。タイらしい赤い色を出すには、 エサに赤い色を出すカロテノイド、アスタキサンチンを加えればいいということはわかった。 ところが、養殖のタイはなぜか天然ものに比べて黒っぽい。 どうしてだと思うかな?
黒っぽいってことは…、え〜と、メラニンだっけ? 黒い色をつくるのは。それが増えないようにすればいいんじゃないの?
おお、さすがじゃ!大正解!メラニンは、われわれ人間も持っておる。 髪の毛や黒い瞳の色がそうじゃ。日焼けして肌が黒くなるのも、 メラニンが肌にできたせいだ。 養殖のタイは、自然で暮らすよりもずっと浅いところで飼われている。 そのため、日焼けしてしまうんじゃ。 そこで、タイが日焼けしないように、黒い網で水面をおおっておく。
お母さんが日焼けしないように、日傘をさすのと同じだね!なんだかおもしろいね。
日焼けしていないマダイ
日焼けしたマダイ
写真提供/松野隆男