震災に起因するカキ種苗供給不足と疾病侵入の危険性について

2011年3月30日
東京大学大学院農学生命科学研究科 良永知義

 東北・関東大震災により、東北太平洋沿岸で生産されていたカキ種苗は、一部を除いて、ほとんど消失してしまいました。従来この海域で生産されたカキ種苗は、全国に輸送され種ガキとして利用されていました。そのため、この春に予定されている養殖場への種ガキの収容に当たって、東北地方だけでなく全国的に種苗が不足しております。すでに、種ガキ確保のための動きが各地で始まっており、海外を含め、従来とは異なる海域からの種苗入手が検討されているようです。しかし、昨年来、ヨーロッパやオセアニアのカキ類(マガキを含む)では、カキヘルペスウイルス(OsHV-1)変異体による大量死亡が発生しております。この疾病に対する治療法はなく、また、天然海域にカキ類が自然に分布していることから封じ込めを行うことも非常に困難です。そのため、国内に侵入しますと、全国に蔓延し、国内のカキ養殖産業に回復不能な打撃を与えることが危惧されます。カキ養殖業界、水産系大学や研究機関の皆様におかれましては、本疾病の侵入防止のため、最大限の注意をお払いいただきたくお願いいたします。また、周囲の関係者に疾病侵入の危険性について周知いただければと思います。

 なお、本疾病の侵入防止等を目的として、注意喚起の文書ならびに本疾病についての解説が農林水産省水産庁増殖推進部ならびに消費・安全局畜水産安全管理課水産安全室長から都道府県等に発信されております。これらの文書を添付いたしますので、詳しくは、そちらをお読みください。

養殖用種苗(特にかき類)の移動に関する注意喚起について(PDF)