1.はじめに |
日本水産学会は平成23年3月1日付で,「公益社団法人日本水産学会」として設立登記を行いました。本学会の社会的存在とその事業活動に公益性があることが公的に認定されたことの意義は極めて大きいものがあります。公益社団法人化に当たって,これまでの経緯と今後の展望について所感を述べます。 |
2.公益法人化までの経緯 |
日本水産学会は,「水産学に関する学理およびその応用の研究についての発表および連絡,知識の交換,情報の提供等を行う場となることにより,水産学に関する研究の進歩普及を図り,もって学術の発展に寄与することを目的とする」学術団体として1932年に任意団体として設立され,1970年に社団法人としての認定を受けました。 |
その後,平成20年12月1日に,新しい公益法人制度改革関連3法が施行されたことにより,既存のすべての公益法人は暫定処置である「特例民法法人」となり,5年間の移行期間内に新しい公益社団法人の認定を受けるか,あるいは一般社団法人に移行するかの判断が求められました。 |
当学会では,平成20年3月に開催された総会において「すみやかに公益社団法人へ移行する」方針が当時の會田会長から示され,理事会では公益法人化対応委員会1)を組織して,司法書士,公認会計士や(公財)公益法人協会による助言・指導を受けながら公益認定に向けた準備を開始しました。そして,平成21年1月発行の日本水産学会誌75巻1号の会告において「公益社団法人への移行認定に向けた定款と細則の変更案について」という題目で公益法人化対応委員会委員長東海 正氏より意見募集がなされ,同年3月の春季大会時には会員への説明会を,また秋季大会時には公聴会を主催しました。これらを受けて,平成21年12月12日には,公益法人化対応委員会から「(社)日本水産学会の新公益法人制度への対応に関する報告書」が提出され,本学会が公益社団法人への移行が相応しいとの答申を理事会で承認しました。 |
その後,平成22年3月の総会において,公益社団法人を目指すことが満場一致で可決承認され,次いで同日「定款変更の案」が可決されると同時に,軽微な定款の修正については理事会での承認により変更が可能であることの可決承認もなされました。さらに,数度にわたる内閣府の公益認定等委員会事務局への相談を経て,平成22年10月6日に内閣府公益認定等委員会に必要書類を添えて移行認定の電子申請を行いました。その後も,何度かにわたって内閣府大臣官房公益法人行政担当室より資料の修正と追加資料の提出が求められ,また,定款,諸規則,財務会計,および公益事業説明に対して種々の修正点が指摘されました。これを受け,理事会では必要事項の修正作業を進め,同行政担当室に提出し,今回の認定と新法人の登記の運びとなりました。 |
3.公益法人としての今後の展望 |
今回公益社団法人として新たに認定されました本学会は,その目的である「水産学に関する学理及びその応用の研究についての発表及び連絡,知識の交換,情報の提供等の事業を行い,水産学に関する研究の進歩普及を図り,もって学術の発展と科学技術の振興に寄与するとともに,人類福祉の向上に寄与すること」を一層推進するとともに,会員のみならず公益性を重んじて広く本邦および海外における学術振興を図るための努力を続ける所存です。その一歩として,すでに数回にわたる理事会主催のシンポジウムにより作成いたしました,「アクションプラン」に基づき,これに公益性を加味させながら着実に実行いたします。すなわち,1)研究発表会および学術講演会等の開催による水産学研究の推進,2)学会誌および学術図書の刊行による水産学研究の普及,3)関連学会等との連携および協力並びに社会連携の推進,4)研究業績の表彰による学術の発展と科学技術の振興,5)水産学に関連する教育の推進,6)水産学に関連する国際協力の推進,などです。 |
公益法人化は,日本水産学会に新たな社会的信用と責任を付与することになりますが,同時に会員の増大と学会活動の活性化に大きな契機をもたらすものであることを確信し,会員の皆様と共に,日本水産学会をさらに誇りある公益社団法人として築き上げていきたいと祈念しております。 |
最後に,公益社団法人認定に向け長期にわたりご尽力いただいた,會田勝美前会長,公益法人化対応委員会として奮闘頂いた東海 正委員長はじめ,同委員会委員の方々,日本水産学会事務局,原田正誉司法書士,中島統吾公認会計士に厚く御礼申し上げます。 |